桜の勇者~異世界召喚されたら聖剣に選ばれ、可憐な少女が自分を頼ってくるので守ることにした~

和美 一

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第5章:新たな旅立ち

第55話:竜鳥との戦い

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 先頭のドラゴンバードから火炎が放たれる。それを一同は散開して避けた。

 火炎を放ったのは一匹だけではない、他の四匹も同様にして口を開き火炎を放つ。「くっ」と思わず声をもらしながら、ナハトは回避に専念した。

 ナハトたちに回避された業火が大地を、道路を焼き、蒸発させる。

 その焼け跡はまともに喰らっては大変なことになる、ということを教えてくれた。

 五匹のドラゴンバードは立て続けに火炎を吐き続け、近付くことも容易ではない。そこでナハトは叫んだ。



「グレース! アイネ! 風と吹雪を頼む!」



 相手は遠距離攻撃をしてきている。ならば、こちらも遠距離攻撃で挑むまでだ。

 グレースは「わかった」と頷き、アイネも「まっかせなさい!」と強気な言葉を返してくれる。

 グレースのヴェントハルバードから風刃が放たれ、アイネの氷雪剣ネーヴェから氷雪が放たれる。

 それらは先頭のドラゴンバードの放った火炎を掻き消し、ドラゴンバードに迫った。

 しかし、ドラゴンバードは空高く飛び上がることでそれを回避した……と思われた。

 その隙にナハトはドラゴンバードに接近していて、飛び上がったドラゴンバードを追って自分も飛ぶ。聖桜剣から引き出した想力を両足に集中させ、地面を蹴る。

 空中のドラゴンバードまで剣を届かせる。そこで聖桜剣の想力を解放した。

 黄金の光刃になった聖桜剣がドラゴンバードの肉体を斬り裂く。

 一匹のドラゴンバードは空中で悲鳴を上げ、地面に墜落した。

 ナハトの体も落ちる。そこを狙って他のドラゴンバードたちが炎を放つ。「ナハト!」とドラセナの声。ナハトは自分に迫り来る炎を黄金の光刃で斬り払った。

 そのまま地面に着地、したかと思うと再び地を蹴り、もう一匹のドラゴンバード目掛けて駆け出す。

 聖桜剣を一振り。ドラゴンバードはこれを高く飛び上がることで回避した。

 グレースとアイネの援護を受けてのナハトの突撃。これでドラゴンバードたちの連携は崩れつつあった。イーニッドも幻想具の具足で大地を蹴り、ドラゴンバードのもとまで突っ込んで来て、拳を振るう。

 ドラゴンバードは空高く飛び上がり、それを躱し、お返しとばかりに炎を吐く。が、それはイーニッドに命中する前にアイネの氷雪剣から放たれた氷雪の波動に掻き消された。

 ナハトが一匹斬り捨てたので残りのドラゴンバードは四匹。いずれも高く飛び上がり、炎を浴びせてくる。 飛行能力に加えて火炎による攻撃とは。たしかに、普通の想獣よりは厄介な敵だ、とナハトは思った。

 ナハトの突撃により一旦、乱れた連携を立て直そうとしているのが分かる。そうはさせぬとばかりにイーニッドは地を蹴り、空中のドラゴンバードを殴りつけようとし、ナハトも聖桜剣を振るう。

 イーニッド目掛けて四匹のドラゴンバードの内、一匹が炎を放つがそれは後方からのグレースのハルバードからの風刃が掻き消す。

 その瞬間を狙って、イーニッドは再び地面を蹴り、宙空に体を飛ばすとそのドラゴンバードに向けて拳を繰り出す。

 鉄拳命中。顔面をガントレットで殴りつけられたドラゴンバードは思わず、といった感じに空中に浮かぶ体をよろめかせる。そこにナハトも駆け出し、高度を落としたドラゴンバードを聖桜剣で斬り付ける。

 その肉体を黄金の光刃が斬り裂く。ドラゴンバードは絶叫を上げて、絶命し、後は三匹。

 こうなると後方から援護をしていたグレースとアイネも前に出て来た。

 三匹のドラゴンバード相手にナハト、グレース、アイネが一対一で相対。イーニッドも駆け出す。

 三匹が放った火炎はナハトの聖桜剣から放たれた黄金の波動、グレースのハルバードから放たれた風刃、アイネの氷雪剣から放たれた氷雪の波動で掻き消される。

 イーニッドは両足の具足から想力を解放し、地面を蹴り、空高くまで飛び上がると、ドラゴンバードの一匹に拳を叩き付ける。

 その一撃でひるんだドラゴンバードにグレースのハルバードから放たれた風刃が襲い掛かる。

 風刃はドラゴンバードの翼を斬り裂き、翼を斬られたドラゴンバードの高度が落ちる。そこにアイネが地面を蹴って駆け出し、氷雪剣を振るい、斬り付ける。

 華麗な軌跡を描いた青い刀身にドラゴンバードは斬り裂かれた。

 残りは二匹。こうなってしまえば、もう脅威でも何でもない。

 ナハトは黄金の光刃と化した聖桜剣を両手で握り、駆け出すと、飛び、ドラゴンバードに斬り掛かる。

 ドラゴンバードは火炎を放ち抵抗するも、真っ向から火炎の渦を聖桜剣で斬り裂き、その剣先から黄金の波動を飛ばし、ドラゴンバードに命中させる。

 この一撃を受け、よろめいたところにイーニッドが駆け出し、とどめの拳を食らわせる。最後の一匹にはグレースとアイネが連携して風刃と氷雪を放ち、翻弄し、高度を落としたところに二人がかりで斬り掛かりトドメをさした。



「はっ! 何がドラゴンバードよ! 楽勝ね!」



 アイネが声高に言い放つ。強気なアイネらしい発言だったが、口には出さずともナハトも同じようなことは思っていた。

 たしかに普通の想獣よりは強かった。口から放つ火炎放射もまとも喰らっていれば危険だっただろう。

 しかし、それに対処し、空高くに逃げる相手にも追いすがり、打ち倒すことができた。ナハトたち一行に大きな傷を負った者もいない。

 アイネの言うように、楽勝、とまではいかずとも快勝と言っていいだろう。

 そんなことをナハトが思っていると後方に控えていたイヴがやって来て念のため、みんなを治癒杖キュアで癒してくれる。



「これがドラゴン相手の戦闘というものか。うむ、いい経験になったぞ!」



 イーニッドが楽しげにそう言う。「もっと、戦いたいくらいだ!」とまで言ったのに対しては「いや、流石にそれは勘弁」とナハトは苦言を呈した。

 快勝は快勝だったが、ドラゴンバードが厄介な敵であったことには変わりはないのだ。



「しかし……何故、ドラゴンバードがこんなところに……」



 グレースは怪訝そうな顔をして地面に墜落したドラゴンバードたちの死体を見ている。

 そんな時、だった。「やりますね、流石は桜の勇者たち」と声がしたのは。

 ドラセナでも、イヴでも、イーニッドでも、グレースでも、アイネでも、無論、ナハトでもない。

 初めて聞く声にナハトはハッとし、声の方向を振り向く。そこには二十代半ばぐらいだろうか? 一人の女性が立っていた。

 茶色のロングヘアを伸ばし、質の良さそうな紫色のコートを身に纏い、同じく紫色のマントを羽織っている。

 両手両足は籠手と具足でかため、その右手には鞭のような武器が握られている。ナハトは警戒し、「誰だ! お前は!」と声をかける。

 その女性は「私の名前はリリアーヌ・ブラーヌ……想獣使いなどと呼ばれています」と名乗った。その瞳がドラセナを見る。ドラセナはビクリ、と体を震わせ、ナハトの影に隠れる。 「想獣使い……だと?」とナハトが声を返すも、リリアーヌは無言でドラセナを見ている。



「まさか、アンタがお父様の言っていた……!?」



 アイネがエメラルドの瞳でリリアーヌを睨みながら呟く。そう、エイブラム卿が言っていた。ヴァルチザン帝国には自由に想獣を操る女がいる、と。「このドラゴンバードたちをけしかけたのもお前か!」と強い語気でグレースが言う。リリアーヌは無言で頷いた。



「本来はこの地には生息しない生物ですが、私の幻想具の力で召喚させてもらいました」



 なんてことはないようにリリアーヌは言い切る。想獣を召喚、だと……? そんな真似が可能なのか?



「ペルトーセを襲った想獣たちも全てはお前が召喚したとでも言うのか!?」



 ナハトはそう言ってリリアーヌに問いかける。リリアーヌは「いいえ」と言った。



「流石の私もあれだけの数の想獣を召喚することはできません。あれは元々、生息していた想獣を操っただけです」



 元々いた想獣を操っただけ。大したことはないように言うが、それはとんでもないことだった。

 襲われたのがアインクラフト軍の兵士たちが大勢いるペルトーセだったから良かったが小さな村などにけしかけられていたら、大変なことになっていた。

 目の前のこの女は危険すぎる。それはナハトだけではない。他のみんなも共通して思ったことだった。「そんな女がわざわざ姿を現した理由はなんだ!」とイーニッドは叫ぶ。

 たしかに、その通りだ。そんな能力を持っているのなら後方に隠れて想獣たちをひたすらけしかければいいだけの話なのだから。リリアーヌはイーニッドを方をチラリ、と一瞥するとドラセナの方に視線を戻し、言った。



「それは勿論、この手でドラセナ・エリアスをさらうためです」



 鋭い瞳がドラセナを射抜くように見、再度、ドラセナは体を震わせた。

 グレースは険しい表情でハルバードをリリアーヌに向ける。イーニッドも構えを取り、アイネも氷雪剣を片手にリリアーヌを睨む。無論、ナハトも体の後ろにドラセナをかばいながら、両手で聖桜剣を握り締める。

 その刀身を纏う黄金の輝きはまだ解除していない。「お前一人で俺たちに勝てると思うのか?」とナハトが言うも、リリアーヌは顔色一つ変えなかった。それが、冷淡な女だ、との印象を強くする。



「言ったでしょう? 私は想獣使いです。貴方がたの相手は想獣にしてもらうことにします」

「想獣ごときにやられるアタシたちじゃないわよ!」



 淡々と呟くリリアーヌにアイネが強い口調で言い放つ。「それはどうでしょう?」と無表情のままリリアーヌは告げた。

 そして、手に持つ鞭を振るい、宙空を舞わせた。その軌跡が魔法陣を描き、徐々に魔法陣は大きくなって、空中に飛んでいく。そこから光が放たれる。

 ナハトたち一同は警戒した。あの鞭は幻想具? 想獣を召喚するというのはこういうことか? 皆が困惑しつつも宙空に浮かんだ巨大な魔法陣を眺める。



「貴方がたの相手をするのは先程の竜鳥ドラゴンバードの比などではない。最上級の想獣、竜ドラゴンなのですから……」



 魔法陣から放たれる光が強くなる。そして、その光の向こうに巨大な生物のシルエットが見え隠れする。

 傍目にも危険と分かる。その姿。最強の想獣、竜の君臨だった。



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