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第2話:私は皇女なのよ!
しおりを挟む信じられない。
アルカディア帝国第一皇女であったこの私が、下級も下級、最底辺貴族の令嬢と精神が入れ替わってしまったというのか!?
私は信じられない思いで侍女に詰め寄る。
「私はアルカディア帝国第一皇女エルミリアなのよ!」
「またそんなお戯れを……そのような事を仰っては不敬罪に問われますよ」
「私は皇女なんだから不敬罪なんてある訳がないじゃない!」
私は侍女に詰め寄るが、侍女は困ったように言葉を濁すばかり。
こうなっては居ても立ってもいられない。宮殿に戻り、元の立場に戻らねば。
「エリカ様、どちらへ?」
「宮殿よ! 私のあるべき場所に戻るの!」
「きゅ、宮殿には許可なく押し入る事は出来ません!」
慌てた様子で私を止める侍女。許可なく入れない? 第一皇女の私に何の許可が必要だと言うのだ。
そう思い、私は侍女の制止を押し切り、フォーン家とやらの屋敷を(貧相な屋敷だった)出て、宮殿に向かう。
そうして、宮殿の入り口まで行ったのだが。
「許可なくお通しする事は出来ません」
門番の兵士に阻まれ、中に入る事は出来なかった。私は苛立ち声を荒げる。
「無礼な! 私はアルカディア王国第一皇女よ! それをとどめると言うの!?」
「皇女様は既に宮殿内にいらしております」
「それは偽物よ! 私から体を奪った!」
そうやって押し問答をしていると宮殿内から見慣れた我が身が姿を見せた。
あれぞアルカディア王国第一皇女、エルミリア・アークライト・アルカディアだ。
隣にはランスロットの姿もある。私はそこに詰め寄った。
「貴方! 私から体を奪っておいてのけのけと何のつもり!」
私の言葉にエルミリア、になった者はすっとぼけて見せる。
「何を言っているのか、さっぱり分かりませんわね。下級貴族のお嬢さん」
「貴方!」
私がエルミリアに掴みかかろうとするとそれをランスロットが妨害した。
ランスロットに手を強く握られ、静止される。
「お嬢さん。私の婚約者に手を出すのは看過出来ないな」
「ランスロット! 私よ! エルミリアよ! そこのエルミリアとは体が入れ替わってしまったのよ!」
「また訳の分からない事を……」
ランスロットは困惑している様子であった。そこに私から体を奪ったエルミリアが囁く。
「ランスロット。このような下級貴族の娘の言う事に耳を貸す必要はないわ。それより二人でお買い物に行きましょう」
「ああ、そうだな。エルミリア」
「貴方は!」
私はエルミリアに殴りかかろうとしたが、その瞬間、衛兵の剣が私に突き付けられ、やむを得ず、手を引っ込める。
そうして、エルミリアになった者とランスロットは消えて行った。
失意の中、私はフォーン家の屋敷に戻る。
私がフォーン家の娘になってしまった……? フォーン家といえば戦場で武功を挙げて、平民から準男爵の地位を得て、男爵になった成り上がりの最下級貴族の家系だ。
そんな家の令嬢に私はなってしまったというのか。
「く、皇女であるこの私が……!」
悔しい思いを抱きつつもフォーン家の屋敷に戻る。すると侍女が心配していたという顔で私を出迎えた。
「ああ、エリカ様。ご無事だったのですね。自分を皇女などと仰るからどうしたものかと心配しておりました」
「私は皇女よ!」
強くそう言い切る。どうやら完全に私の皇女としての体はこの体の持ち主に奪われてしまったようだ。
今では宮廷に安々と入る事もままならない。
「そんな馬鹿な事を仰らずに。エリカ様の婚約者のルグベド様がそろそろ訪れますよ」
「私の……婚約者?」
それはランスロットであったはずだ。この国最大の大貴族カーレル家の。
しかし、このエリカ・ルク・フォーンの婚約者とはいかなる者か。
「私の婚約者、って誰?」
「傭兵隊長のルグベド・ガウマン様ですよ」
「傭兵……隊長……」
がっくり来る。
そんな平民が私の相手だと言うのか。
今の最下級貴族のフォーン家の令嬢にはその程度で釣り合いが取れるかもしれないが……。
大した期待はしない方がいいな、と私は思いながら、ルグベドとやらの訪問を待った。
帝国の第一皇女だったのに、なんでこんな羽目に。そう思い続けていたが。
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