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第23話:リリアの服
しおりを挟むナツヤスミとやらの最後の一週間をサナたちは鎧のこすぷれ作りに当てるつもりのようだった。
熱心に俺とリリアの鎧を見て、製作図を作り上げていく。
とはいえ、実物の俺たちの鎧と違って鋼で作る訳にはいかないだろう。ぷらすちっく、とやらで作るのだろうか。
「渚、デザインができたらあんたのトコに任せていいのね?」
「任せてください佐奈。我が伊集院グループの技術力で見事、全員分の鎧を作り上げてみせましょう」
「それは頼もしいわね」
サナがナギサに問い、ナギサは答え、フェイフーが笑みを浮かべる。
とりあえずここですることはこすぷれの設計図を作ることらしかった。
そのために全員がかりで作業に当たっている。俺とリリアは所在のなさを覚えた。
「あの、俺たちに手伝えることは……」
「ないわ」
「そうか……」
一言で協力申し出を断られ、俺は沈黙する。
確かにこすぷれ作りなんてやったことないし元の世界で剣や鎧を打ったりしたこともない身ではあるが、こんな少女たちがこすぷれ作りのために頑張っているのに大の男の俺がすることがないというのは……俺は気まずく、リリアと視線を合わせる。
「どうするのだ、アドニス殿」
「どうするもこうするもなぁ」
こうなっては見ているだけしかないのだが、それはそれでどうかと。念入りに鎧をチェックするサナたちを視界に捉えながら、俺はどうしたものかと考え込む。
「どうせここにいてもやることないし、リリア、服でも買いに行かないか?」
「服、か?」
「ああ。この世界の服。リリアはまだ持ってないだろう?」
そんな中、俺は提案する。リリアは鎧を脱いだ後の簡易な衣装しか持っていない。それでは何かと不便だろう。
俺はそう思いサナに確認を取ったが、
「いいわよ、別に、行ってきて。ここにいても邪魔なだけだし」
酷い言われようであった。ともあれ、リリアのために服を買いに出る。
この世界に来たばかりの俺では服屋に辿り着いて服を買うなど不可能なことだったが、もう慣れた身だ。
デンシャとやらも乗り方も行き先も分かっている。
「それじゃあ、ハラジュクまで出ていってくる」
一言述べ、いったん、自分の部屋に戻った俺は買っておいた私服に着替え、リリアと共に出発する。
「目的地は分かっているのか、アドニス殿」
「伊達に俺もこの世界に来て数週間を過ごしちゃいないよ。安心しろ」
「それならいいが……」
この世界に来たばかりのリリアには右も左も分からないだろう。
そんなリリアをエスコートし、エキまで連れて行く。アキハバラエキに到着し、デンシャを待つ。
「ふむ。デンシャという鉄の箱の群れに乗って行くのだな」
「そうなるな」
「それにしても凄い人だな」
「ハラジュクにつけばこんなもんじゃ済まなくなる。はぐれるなよ」
言い聞かせ、リリアを先導して、デンシャに乗りハラジュクへ。
そこでの人混みの多さにリリアは仰天したようだった。
「こんなに人がいたのか……」
「だからこんなもんじゃ済まないって言ったろ。ともあれ、服屋に行って適当に一、二着買うぞ」
「分かった」
とはいえ、俺もこの町にはサナやルリ程詳しい訳ではない。手近に服屋を見つければ迷うことなくそこに入り、リリアの服を見繕うのだが、女物の服の選び方は俺には分からなかった。
誰かに付いて来てもらった方がよかったかな、と後悔しつつも案内した以上、俺が選ぶのが筋だろうと思い、適当にチョイスしていく。
サナたちにダサいと言われないか不安だったが、そこは自分の美的センスを信じることにする。
リリアの服を見繕い、シチャクシツとやらで着てもらう。
シチャクシツから出て来たリリアの姿に思わず目を奪われる。
「どうだろう、アドニス殿。似合っているだろうか?」
「ああ、すげえよく似合っている。俺が選んだ服で俺がこんなこと言っても説得力はないだろうけど……」
「いや、アドニス殿が似合っていると言うからには似合っているのだろう。この服を買おう」
そんな調子でもう一着もシチャクしてもらいその服も買う。
それなりに高かったが、ヨーイチ殿から給料という形でこの世界のお金を貰っていたので払うことができた。
「お金を出してもらって悪いな」
「気にするな。俺もこの服はサナにお金を出してもらったものだしな」
「そうか」
異世界人同士、助け合っていかねば。帰還の目処が立っていない以上、ここでしばらく過ごすしかないのだ。
リリアの服も書い終わったし、さっさと帰路に就く。
サナやルリが一緒ならもっと買い物を見て回ったり、キッサテンに入ったりするのかもしれないが、俺はそういうことはしないタイプだった。
リリアも異世界人であるだけあり、サナやルリのようなこだわりは見せず、俺に続き素直に帰路に就くのであった。
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