『こすぷれ』とは一体、何なのだ? 異世界から現代日本に転移した騎士、鎧姿のためコスプレ屋の看板男になる

和美 一

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第41話:楽しい時間

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 俺とリリアの鎧姿はやはりこすぷれいやーたちの中でも抜群に出来が良く注目を集めてしまっていた。
 俺もリリアも「こすぷれではない」と一々言うのであるが、本気で聞いてくれる相手はいない。
 この場にいる以上、こすぷれだと思われるのは仕方がない話ではあるのだが。

「うわ、本当に鋼で出来てる……!」
「いくらかかったんですか?」

 そんなことを訊いてくるがこれはスナイバル王国の官給品である。
 いくらかかったかなど分からない。俺は曖昧に「いくらだろうな」と笑っておいた。そうしているとナギサがやって来る。

「人気ですわね、アドニス、リリア」
「まぁな。でも、ナギサも人気だろう?」

 大勢の人に捕まって談笑していたナギサの様子を遠目に見ている俺はそう返す。ナギサは微笑を浮かべた。

「私は伊集院家のご令嬢という立場もありますから」
「それだけとは思えんがな」

 ナギサの言葉にリリアが言う。ご令嬢というだけではあれだけ人が集まることはないだろう。やはり、こすぷれの出来がいいからに違いならない。

「ヒカルも人気みたいだな」

 女装こすぷれをしているヒカルも相当、人気を集めている。それを遠目に見ながら、俺はナギサとの会話に戻る。

「やはりアドニスとリリアの鎧は一段も二段も違うわね。鋼鉄製の鎧ってだけで凄いのに。本当にどこで作ったの?」

 それを訊いてくるか。答えれたものではないし、答えても信じてくれないだろうが。

「スナイバル王国の鍛冶屋が作ったものだ」
「スナイバル……聞いたことのない国ね」

 当たり前だ。スナイバル王国はこの世界にはない。
 鎧の出来栄えは実戦を前提とした騎士の重鎧なのだからよくて当たり前。こすぷれに劣るはずがなかった。

「まぁ、成り切りもいいのですけど」
「俺たちは成り切りじゃないぞ、ナギサ」
「その通り。アドニス殿の言う通りだ」

 俺もリリアも誇り高きスナイバル王国の騎士である。
 それを成り切りと言われてしまうのはプライドに触る。触れてはいけない所に触れたことを察してかナギサが謝る。

「ごめんなさい、悪かったわ」

 とはいえ、どこまで信じてくれたのか。
 まさか別世界から来たとは言えないし……もう俺たちとナギサくらいの仲なら言ってもいいかもとは思えるが、俺たちが別世界から来たと知っているのはサナとヨーイチ殿だけであった。
 あまり広めていい話でもないし、そうそう信じられる話でもない。
 それ故にあまり口には出さなかったが。
 そうしていると他のこすぷれいやーの集団から俺とリリアのシャシン撮影を求められる。
 俺たちは快諾し、すまほとやらのシャシンに写る。

「ふぅん、今回もアドニスもリリアさんも人気ね」
「アドニスさんとリリアさんの鎧は凄いですからね、当たり前です」

 そう思っているとサナとルリがやって来て、そんなことを言う。

「二人共、俺たちなんかに構っていいのか? 他のこすぷれいやーの人たちと話さなくても」
「それも勿論やりますよ」
「今はあんたたちと話そうってだけよ」

 それなら遠慮する必要はない、か。

「俺とリリアの鎧も高品質だが、みんなすごくよく出来たこすぷれだな。思わず目を奪われてしまう」
「そうね。流石は伊集院家主催のコスプレ披露会だわ」

 ここに来ているこすぷれいやーの面々のこすぷれはどれも上品質で作るのに苦労したんだろうな、と思わせてくれるものだった。
 あいにく、俺の鎧は俺が作った訳ではないので製作の苦労話を交わし合うことはできないのであるが。

「この中でもアドニスたちは一歩も二歩も先を行くコスプレね」

 フェイフーがそんなことを話しながらやって来る。それなりの巨乳がこすぷれで強調される。

「あー、アドニスがフェイフーさんの胸に見とれてるー!」

 サナがそんなことを言う。

「いや、そんな訳では……」
「アドニス殿……」
「あら、アドニス。硬派なふりして意外とスケベなのね」

 リリアに白眼視され、フェイフーは面白がって笑う。違うと言うのに。

「そんなことより……」
「そんなことじゃないと思いますけど……」
「ルリまで……」

 俺に当たりが弱いはずのルリにまでそう言われてしまっては俺は窮してしまう。

「とにかく! 俺は女性の胸に見とれたりはしない!」
「プールに行った時もわりとそうだったと思うけど?」
「あれはミズギという服装が悪い」

 そうだ。あんな胸を強調する服が悪い。俺は言い切った。

「ともあれ、このこすぷれ披露会。みんな楽しんでいるか?」

 俺の言葉に皆が一斉に頷く。なんだかんだで楽しんでいるのは間違いないようであった。
 イジューイン家主催のこすぷれ披露会はそうして、楽しい時間が過ぎ去っていくのであった。
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