41 / 47
第41話:楽しい時間
しおりを挟む俺とリリアの鎧姿はやはりこすぷれいやーたちの中でも抜群に出来が良く注目を集めてしまっていた。
俺もリリアも「こすぷれではない」と一々言うのであるが、本気で聞いてくれる相手はいない。
この場にいる以上、こすぷれだと思われるのは仕方がない話ではあるのだが。
「うわ、本当に鋼で出来てる……!」
「いくらかかったんですか?」
そんなことを訊いてくるがこれはスナイバル王国の官給品である。
いくらかかったかなど分からない。俺は曖昧に「いくらだろうな」と笑っておいた。そうしているとナギサがやって来る。
「人気ですわね、アドニス、リリア」
「まぁな。でも、ナギサも人気だろう?」
大勢の人に捕まって談笑していたナギサの様子を遠目に見ている俺はそう返す。ナギサは微笑を浮かべた。
「私は伊集院家のご令嬢という立場もありますから」
「それだけとは思えんがな」
ナギサの言葉にリリアが言う。ご令嬢というだけではあれだけ人が集まることはないだろう。やはり、こすぷれの出来がいいからに違いならない。
「ヒカルも人気みたいだな」
女装こすぷれをしているヒカルも相当、人気を集めている。それを遠目に見ながら、俺はナギサとの会話に戻る。
「やはりアドニスとリリアの鎧は一段も二段も違うわね。鋼鉄製の鎧ってだけで凄いのに。本当にどこで作ったの?」
それを訊いてくるか。答えれたものではないし、答えても信じてくれないだろうが。
「スナイバル王国の鍛冶屋が作ったものだ」
「スナイバル……聞いたことのない国ね」
当たり前だ。スナイバル王国はこの世界にはない。
鎧の出来栄えは実戦を前提とした騎士の重鎧なのだからよくて当たり前。こすぷれに劣るはずがなかった。
「まぁ、成り切りもいいのですけど」
「俺たちは成り切りじゃないぞ、ナギサ」
「その通り。アドニス殿の言う通りだ」
俺もリリアも誇り高きスナイバル王国の騎士である。
それを成り切りと言われてしまうのはプライドに触る。触れてはいけない所に触れたことを察してかナギサが謝る。
「ごめんなさい、悪かったわ」
とはいえ、どこまで信じてくれたのか。
まさか別世界から来たとは言えないし……もう俺たちとナギサくらいの仲なら言ってもいいかもとは思えるが、俺たちが別世界から来たと知っているのはサナとヨーイチ殿だけであった。
あまり広めていい話でもないし、そうそう信じられる話でもない。
それ故にあまり口には出さなかったが。
そうしていると他のこすぷれいやーの集団から俺とリリアのシャシン撮影を求められる。
俺たちは快諾し、すまほとやらのシャシンに写る。
「ふぅん、今回もアドニスもリリアさんも人気ね」
「アドニスさんとリリアさんの鎧は凄いですからね、当たり前です」
そう思っているとサナとルリがやって来て、そんなことを言う。
「二人共、俺たちなんかに構っていいのか? 他のこすぷれいやーの人たちと話さなくても」
「それも勿論やりますよ」
「今はあんたたちと話そうってだけよ」
それなら遠慮する必要はない、か。
「俺とリリアの鎧も高品質だが、みんなすごくよく出来たこすぷれだな。思わず目を奪われてしまう」
「そうね。流石は伊集院家主催のコスプレ披露会だわ」
ここに来ているこすぷれいやーの面々のこすぷれはどれも上品質で作るのに苦労したんだろうな、と思わせてくれるものだった。
あいにく、俺の鎧は俺が作った訳ではないので製作の苦労話を交わし合うことはできないのであるが。
「この中でもアドニスたちは一歩も二歩も先を行くコスプレね」
フェイフーがそんなことを話しながらやって来る。それなりの巨乳がこすぷれで強調される。
「あー、アドニスがフェイフーさんの胸に見とれてるー!」
サナがそんなことを言う。
「いや、そんな訳では……」
「アドニス殿……」
「あら、アドニス。硬派なふりして意外とスケベなのね」
リリアに白眼視され、フェイフーは面白がって笑う。違うと言うのに。
「そんなことより……」
「そんなことじゃないと思いますけど……」
「ルリまで……」
俺に当たりが弱いはずのルリにまでそう言われてしまっては俺は窮してしまう。
「とにかく! 俺は女性の胸に見とれたりはしない!」
「プールに行った時もわりとそうだったと思うけど?」
「あれはミズギという服装が悪い」
そうだ。あんな胸を強調する服が悪い。俺は言い切った。
「ともあれ、このこすぷれ披露会。みんな楽しんでいるか?」
俺の言葉に皆が一斉に頷く。なんだかんだで楽しんでいるのは間違いないようであった。
イジューイン家主催のこすぷれ披露会はそうして、楽しい時間が過ぎ去っていくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる