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第20話:守りの衣 その1
しおりを挟むレーンは身軽さが売りの軽戦士である。
鎧も盾も持たず、剣一本を武器として、魔物たちと戦ってきた。
防御力に不安が残るのは事実であるが、レーンはこれまでその身軽さで魔物たちの攻撃を回避し、反撃に剣を叩き込み、依頼をこなしてきた。
しかし、最近では防御力も補わないといけないと考えるようになっていた。
それは油断から魔物の攻撃をまともに受けてしまったことがあるからでその時はなんとか魔物を倒しほうほうの体で王都に戻り、治癒師の治療を受けて事なきを得たものの、次に同じようなことがあると命にに関わる。
防御力の強化は必要だった。さりとて鎧や盾を持てば売りの身軽さが殺されてしまう。
どうしたものかと悩んでいるレーンに知り合いの冒険者のカークスが助言を与えた。
「噂のアイテム屋に行くといい。きっとお前に相応しい物が見つかる」
なんでも揃うアイテム屋の噂はレーンとて聞いていた。
眉唾ものと思っていたがカークスがこう言うのであれば行ってみるか、と思い立ったレーンはコーラル王国の王都から少し外れ、森に少し踏み入った所にある噂の店を訪れた。
とりあえず、店は噂通りの場所にあった。後は噂通りの商品が揃っているか否かだ。
「いらっしゃい」
レーンが店の中に入ると赤髪を肩まで垂らした店主がレーンを出迎えてくれる。レーンはさっさと要件を言ってしまうことにした。
「防御力を上げられる装備はないか? 鎧や盾のようなもの以外で。私は身軽さを売りにしている冒険者だ。その身軽さを殺さないで防御力を高めたい」
無茶な注文をしているとの自覚はあったが、この店の噂ならそれにあった商品もあるはずだ。
「ふむ」と頷いた赤髪の店主は一旦、奥に引っ込んでいき、帰って来た時には一枚の服を手にしていた。
「守りの衣、だ」
机に置かれた服には魔術的なものだろう。
呪文の紋様があちこちに書き込まれ、ただの服ではないことを伺わせてくれる。
「魔術的な加護が施された服だ。並の鎧に匹敵するだけの防御力はあると保証しよう」
「そうか。それなら願ったり叶ったりの商品だな。値段はいくらだ?」
「金貨2枚に銀貨30枚という所だな」
それなら買える。レーンはこの服を買うことを既に決めていた。代金を取り出し、払う。
「毎度あり」
そうして守りの衣を手に入れたレーンは早速、王都の自分の家に戻ると着替える。
この服ならば鎧に匹敵する防御力があるはずだ。
それでいて重さも軽い。レーンのスピードを殺すこともないだろう。
そう思い、早速、実戦で試してみようと思ったレーンは冒険者ギルドに赴く。
下級のドラゴン、レッサー・ドラゴンが出たとの依頼があったのでそれを受ける。
ドラゴン種は強敵だが、下級のレッサー・ドラゴンやワイバーンならレーンでも戦えない相手ではない。
レーンは守りの衣を纏って剣を手に早速、討伐に乗り出した。
依頼の場所に行く。なるほど確かにレッサー・ドラゴンたちが湧いて出ている。
レーンは剣を振るい、レッサー・ドラゴンたちに斬り掛かった。
レーンとて並の戦士ではない。その剣はレッサー・ドラゴンたちを斬り捨てて行く。
そんな中、不意を突かれレッサー・ドラゴンの腕がレーンの体に振り下ろされる。
これまでの防御力に欠けたレーンには脅威だったが、
「ダメージは、なし、か」
守りの衣はその力を十全に発揮したようだ。
ほとんどダメージらしいダメージはない。お返しにそのレッサー・ドラゴンを斬り捨て、レーンは上機嫌に残りのレッサー・ドラゴンたちも一掃していく。
この守りの衣、効果は本物だ。その確信を懐きつつ。レッサー・ドラゴンの数も少なくなってきてレーンは慢心していた。
そんな時、レッサー・ドラゴンの一匹が炎を吐き、それはレーンに直撃した。
下級のドラゴンであるレッサー・ドラゴンは炎を吐けないものが多い。
だが、吐く個体もいる。そんなことも頭から抜け落ちていた我が身の不覚をレーンは実感したが、守りの衣は火炎を弾き飛ばし、寄せ付けなかった。
この衣は火炎攻撃も防ぐのか。驚きつつも剣を振るい、そのレッサー・ドラゴンを斬り捨てる。
守りの衣は伊達ではないと言うことか。
そのまま剣を振るい、レッサー・ドラゴンたちを残らず殲滅する。
速度が売りの軽戦士たる自分の長所を殺さず、防御力も高める。守りの衣にはそれだけの力があった。
「あの店主には感謝しないといけないな」
レーンはそう思い、守りの衣に包まれた我が身を見る。
これならどんな敵が相手でも大丈夫だ。そう思いつつ、レッサー・ドラゴン討伐の依頼を完遂し、王都に戻る。
守りの衣。予想以上だ。
あの店で買った服の予想を上回る防御力の高さに感心しながら、レーンは王都に戻った。
どんな依頼でもこなすことができるだろう。その自信があった。
「とりあえず今日の所は休むか、それにしてもいい買い物をしたものだ」
あの赤髪の店主に感謝の念を懐きつつ、レーンは自宅に帰るのであった。
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