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第50話:オリハルコンソード その1
しおりを挟むコーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にその店はある。
そこではどんな武器防具アイテムも揃い来客の注文に確実に応えると言う。
眉唾ものの話であったが、これまで多くの冒険者たちがこの店の世話になってきていた。
今回、訪れた客もこの店に求めるものがあって訪れた客だ。
「いらっしゃい。……お、あんたは」
赤髪を肩まで垂らした店主が思わず、目を見開く。今回の来客は全身を鎧に包んだ騎士。その中でも有名人であった。
「コーラル王国最強の剣士と名高いクルセイド殿がご来店とはね」
「よしてくれ。コーラル王国最強などと、私はまだまだ未熟だ」
目の前に現れたのはコーラル王国騎士団団長クルセイド。
その剣の腕はコーラル王国の中でも最強を誇ると謳われている。
そんな人物がこの店に何の用で来たのか。店主でなくとも気になってしまうものだろう。
「実はドラゴンの集団の出現が観測された」
「ほう」
「冒険者ギルドに依頼を出すには多すぎる数だ。ギルドでは手に余るだろう。そこで我々、コーラル王国騎士団はドラゴン討伐に赴くことにした」
「そいつは凄い」
「そこで、だ」
クルセイドは言葉を区切る。その末に店の壁に立てかけられている剣や槍を眺めて言った。
「最強の剣が欲しい。ドラゴンとて敵でないような最強の切れ味を誇る剣を」
「最強の剣士クルセイド殿と最強の剣が合わさればそれは凄まじいことだろうねぇ」
「頼む。店主。この店にある最強の剣を私に譲ってくれ」
真摯な瞳で店主を見るクルセイド。そんなクルセイドを相手に店主は考え込んだ。
「うーん、何をもって最強とするかだね。この店には色んな剣があるが、それぞれの剣に秘められた特殊能力は千差万別だ。装備するだけでスピードが上がる剣もあるし、剣の刀身から光を弾丸として飛ばせる剣もある。状態異常にかからないように加護が施された剣もあるし……」
「……そうか。なら切れ味だ。切れ味が一番いい剣をくれ」
「切れ味、か」
確かに切れ味の良い剣は良い剣と言っていいだろう。
それが最強かはまた別だろうと思いつつもクルセイドの注文を店主は聞く。
「ちょっと、待っておくれ」
そして店の奥に引っ込んでいく。しばらく後に店主が姿を見せた。鞘に収められた一本の剣を持っている。
「オリハルコンソード、だ。永久不滅の金属オリハルコンで作られた強度は最強。切れ味も最強の剣だ」
「おお、これが……」
剣を鞘から抜き放ってクルセイドは目を奪われた。
キラリと銀色に輝く刀身がただの剣とは一線を画することを証明してくれる。
見るからに名剣の誉れ高き剣を前にクルセイドは一目惚れしてしまった。
これは私の剣だ。この剣と共にあればドラゴン討伐も楽にこなすことができる。
「この剣を気に入った。いただこう。いくらだ?」
「オリハルコン製だからねぇ。かなり値は張るよ?」
「構わない。いくらでもそっちの言い値で買おう」
どうやらクルセイドはこの剣を相当気に入ったらしい。それを悟った店主は金額を口にする。
「金貨10枚。これでもオリハルコン製の品物としては安い方だけどね」
「金貨10枚か……」
決して安い金額ではない。クルセイドの一ヶ月分の給料がまるまる吹っ飛ぶ値段だ。
だが、それでこの剣が手に入るというのなら。
「それでいい。買おう」
クルセイドはアイテム袋から金貨を取り出すと机の上に並べる。金貨10枚。確かに店主に譲り渡した。
「毎度あり」
こうしてクルセイドはオリハルコンソードを手に入れることに成功した。
剣技に自信がある彼にとって、自分の剣を力のまま打ち込むことができる剣は喉から手が出るほど欲しかった。
それがオリハルコン製で最高の硬度を誇っているとあれば自分の剣術を存分に活かせるというものだ。
永久不滅の金属・オリハルコンの噂は聞いていた。
ドラゴンの炎を浴びても溶けないし、何があっても破壊は不可能という話だ。それが本当なら頼もしいことだ。
ズッシリとした重量にオリハルコンの刀身を感じ取り、クルセイドは上機嫌になる。
そして、店の外に出た後、この剣の試し斬りをしてみようと思った。
森の奥に入り、魔物たちの襲来を待つ。
ゴブリンが数匹、クルセイドに襲い掛かって来た。コーラル王国最強の剣士のクルセイドの敵ではない。それに今はオリハルコンソードという最強の剣も持っているのだ。
ゴブリンは混紡で襲い掛かって来たがそれらを捌き、オリハルコンソードの斬撃を叩き込む。
全てのゴブリンは一太刀で倒れ伏し、起き上がってくることはなかった。
「まずは上々、と言った所か」
このオリハルコンソードの真価はまだまだ発揮できていないだろうが、とりあえず最初の手応えとしては充分。
上機嫌で城に戻るクルセイドだった。
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