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第51話:オリハルコンソード その2
しおりを挟むコーラル王国騎士団が出撃していく。
楽隊の吹くラッパの音に合わせて騎乗した騎士たちが王都の中央通路を通って出撃していく。
その様子を民や冒険者たちは通路の脇から眺めた。
大量に出現したと言われるドラゴン討伐のためにコーラル王国騎士団が直々に出撃していくことになった次第だ。
その先頭で指揮を執る騎士団団長にしてコーラル王国最強の剣士の誉れ高いクルセイドは声を上げた。
「全軍! 我らはこれより国民の平和を守るため、ドラゴンを討伐する! 怖気づくな! 国民を守ることこそ我らの本懐!」
おお! とそれに応える声が上がる。騎士たちは皆、勇猛果敢。それに加えてクルセイドには秘策があった。
腰に挿した剣を見る。武器防具アイテムなんでも揃うという噂の店で赤髪の店主から買った永久不滅の金属、オルハルコンで作られた剣。
これがあればドラゴンとて恐くはない。
馬の手綱を引きながら、クルセイドは自信を見せる。
そんな態度が部下たちにも伝播し、士気は高かった。
騎士団は王都を出ると一直線にドラゴンが確認された地域に向かう。
クルセイドも乗馬の腕前は一流である。
馬を駆り、目標地点まで向かう。目指す先はサリバスト山脈。
これまでにもヒュドラやドラゴンが現れ、冒険者ギルドの冒険者たちに討伐されている場所だ。
今回も冒険者ギルドに依頼を出しても良かったのだが、今回現れたドラゴンは三匹。やや数が多い。
冒険者たちの手には余るのではないか。
そんな考えがクルセイドたち騎士団の出撃命令となって現れたのである。
コーラル王国騎士団は皆、精強。
ドラゴン相手にも遅れは取らないとクルセイドは自負している。
そうして騎兵隊がサリバスト山脈に到達し、山を登っていく。
最初のドラゴンと遭遇したのはその時であった。
「出て来たな、ドラゴンめ」
騎乗しながら、クルセイドは剣を抜く。永久不滅の金属、オリハルコンで作られた剣。これならドラゴンの強固な肌とて敵ではない。
ドラゴンはクルセイドたちを見ると火炎を吐いてきた。騎士団は散開して、それを回避する。
クルセイドは馬を走らせ、ドラゴンの元に接近する。そこに火炎が吐かれる。
「ああ!?」
「団長!」
部下たちの悲鳴が上がる。しかし、クルセイドは火炎をオリハルコンソードで受け止めていた。
流石のオリハルコンである。ドラゴンの火炎を受け止めても、まるで損傷することはない。
そのままドラゴンに近付き、オリハルコンソードを一閃。
ドラゴンを斬り付ける。これにドラゴンは絶叫を上げて、怒りのままに火炎を吹く。
その頃にはクルセイドは馬を引き、ドラゴンの側から離れていた。
団長に続け、とばかりに他の騎士たちも前に出て、ドラゴンに攻撃を仕掛ける。
が、ドラゴンの強固な肌を傷つけるのは難しいようであった。
クルセイドは再びドラゴンに近付き、オリハルコンソードで一太刀浴びせる。
オリハルコンの刃はドラゴンの鱗も斬り裂き、ドラゴンにダメージを与える。
「これでトドメだ」
クルセイドは呟き、オリハルコンソードを手にドラゴンに突っ込む。
その剣がドラゴンの胸ぐらを斬り裂き、ドラゴンは絶叫を上げて、絶命した。
歓声が上がる。一方でクルセイドは手にしたオリハルコンソードの強さに驚いていた。
凄い武器だとは思っていたが、これほどとは。
永久不滅の金属、オリハルコンは伊達ではないということか。
そんなものを扱っているあの店はどういう店なのか。気になったが、とりあえずはドラゴン一匹の撃破に満足する。
だが、まだ二匹いる。浮かれてばかりもいられない。言っている間にもう一匹。ドラゴンが現れた。
そのドラゴンが吐いた火炎を騎士の一人は盾で受け止める。クルセイド同様、赤髪の店主の店でヴァリアブルシールドを買った騎士であった。
その盾は存分に力を発揮し、ドラゴンの火炎とて防ぐ。
部下の意外な活躍にクルセイドは感心しつつ、自身もオリハルコンソードを手に二匹目のドラゴンに攻撃を仕掛ける。
騎士たちも勇猛果敢にドラゴンに立ち向かっていき、コーラル王国騎士団の誉れ高き姿を示す。
二匹目のドラゴンにも攻撃が集中し、倒れる。
これで後は一匹。そう思い、騎士団は馬を走らせサリバスト山脈を登っていく。
最後の一匹が現れたのはそう遠くない内であった。
火炎を吹き散らし、騎士団を牽制するドラゴン。
その程度でひるむ輩はコーラル王国騎士団には存在せず、皆、勇敢に立ち向かう。
クルセイドもオリハルコンソードを手にドラゴンに向かう。
オリハルコンソードの刃がドラゴンの鱗を斬り裂き、ドラゴンを傷つける。
「終わりだ!」
トドメをさすのはやはりクルセイドのオリハルコンソード。
ドラゴンを斬り裂き、ドラゴンの巨体を大地にひれ伏させる。歓声が上がる。騎士たちを見渡し、クルセイドは言った。
「国民を脅かすドラゴンたちは退治された。これも勇猛果敢なるコーラル王国騎士団のおかげである。皆、ご苦労であった。その戦いぶりは私から国王陛下に報告しておこう」
騎士団の士気は高い。その熱気を宿したまま馬を駆り、山を下りる。
クルセイドはもう一度、オリハルコンソードを見た。
刀身にはドラゴンの血が付いていたが、それでも切れ味を鈍らせない。
永久不滅の金属、オリハルコン、か。いい買い物をしたな。
そう思いながら馬を駆るクルセイドであった。
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