俺の唾液はエリクサー!?~座右の銘がスキルになる異世界で寝ぼけて婆ちゃんの口癖答えてしまった件~

鈴咲絢音

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8.え、なんか落ち込む……

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 右掌の光はすぐに収束した。そしてそこには何も残ってはいなかった。

 そう、傷もなくなっていたのである。

「せ、成功した……」

「すごい! 本当に傷が治ってる!」

 特異スキル【回復唾液】を手に入れたのはマジらしい。

 効果としてはとりあえず唾を付ければ傷が治る事は分かった。

 スキルを目の当たりにしたマナは目を真ん丸にして眼鏡クイしながらうんうんと感心している。

「なるほど……舐めると傷を治せるって感じか、これはまた……」

「これってスキルとしてどうなの?」

「…………うーん、なんというか……」

 謎の沈黙止めて! 怖いから!

 てかその反応で分かるよ、あんまり良くないんだね?

「…………地味」

「じ、み?」

「うん、なんかごめん……」

「いや、いいんだ、謝らないで。余計虚しくなる……。
 むしろ異世界人なのにしょうもないスキルで申し訳なくなってきた……」

「いやいや、召喚獣としてはすごいんだよ!
 回復系スキルを使える召喚獣は極少数だから、たしかにすごい、すごいんだけど」

 マナは必死にフォローしてくれるが、言葉の節々に落胆が見える気がする。

 そして一旦言葉を切った彼女は一瞬逡巡した後、黄金の目を泳がせて俺の方は見ずに早口に言い放った。

「回復系スキルなら聖職者の方が有利だし、聖魔法使えなくても回復薬使えばいいし、回復薬もエリクサーとかよっぽど効能の高いものじゃなきゃ簡単に手に入るし」

「も、もう止めて! これ以上は心折れちゃう!!」

 自分のスキルがボロクソ言われるのってこんなに辛いんだ……スキルあるだけいいじゃんって思ってた時期が俺にもありました……。

 なんか自分の才能を真正面から否定された気分だ。

 がっくりと肩を落とす俺に対し、マナはわたわたと励ましの言葉を探している。

「ご、ごめん、そんなに落ち込まないで。まだゴミスキルって決まった訳じゃないから!
 例えば、そうだ、【回復唾液】の回復効果に実はもっとすごい何かが隠されているのかも!
 そのあたり調べるにはこれから少しづつ検証を重ねる必要があるけど、その、まだ諦めるには早いと思うの」

 しれっとゴミとか言ってくるじゃん……勝手に喚び出された挙句自尊心ボロボロにされるこっちの身にもなってくれよ……。

 ただマナの最後の言葉に一筋の希望を見出す。

『まだ諦めるには早い』

 そうだ、そもそも大した理由もなくただ好奇心だけでこんな異世界に召喚されて、その上勝手にゴミスキルだなんて憐れまれて。

 でもそんなの俺にははなから関係ないじゃん。

 座右の銘とか、特異スキルだとか、俺の知ったこっちゃねぇ!

 なんでここまで来て思いつかなかったんだ、俺にはもっとすべき事があるだろ。

 元いた世界に帰るんだ!!!!
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