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episode.13 見知らぬお姉さん
しおりを挟む驚いて振り返ると警備員姿の細い目のおじさんが私に向かって歩いてきている。
何かしでかした事はないはずなのに、まさか警備員さんに話しかけられるとは思ってもみず、何故声をかけられたか分からず不安になる。
迫り来る仏頂面の警備員さんを警戒した眼差しで見上げた。彼は私の視線に怖気づく事はなかったが、少し困ったように太眉を寄せた。
「君、さっきから一人でうろついてるけど、どうしたの? 親御さんは?」
「親はいないです」
「という事は君一人? もしかして家出かな」
おじさんが零した家出という言葉に何となく嫌な予感がする。
もしかして不良少女と疑われているのかも。となると、もしかするとお母さんに通報されるかもしれない。
それはだめだ、ミベロとの約束を反故する事になってしまう。
「違います! えっと……」
慌てて勢いよく否定はしたものの続く言い訳が思いつかない。警備員のおじさんは細い目をさらに細めて訝しげに私を見ている。
「とりあえず、保護者の連絡先を教えてもらえるかな」
「それはっ……」
どうしよう。何の言い訳も思いつかない。
おじさんの追求から逃れるように床に視線を落とす。
どうしようどうしよう、頭の中で同じ言葉がぐるぐる回るだけで打開策は出てこない。
ここは素直に事情を話してみるべきか、と腹を括って唾を飲み込んだ時だ。
コン、と後頭部に軽い衝撃があった。驚いて後ろを振り返ると、目の前にはボトルが数本──所謂お風呂セットが一式揃ったプラケース。
それを掲げて立っていたのは20代くらいの女の人だった。
明るい赤茶のボブヘアーときりっとつり上がった目元に少し怖い印象を受ける。
少し湿り気の残る髪とほんのり上気した頬から彼女は風呂上がりのようだ。
突然割り込んできた見も知らぬ女性に私は目を白黒するしかない。
お姉さんは細い眉を寄せて狼狽える私を見下ろした。気の強そうな瞳は面倒くさそうに私を睨む。
「もう、また面倒なのに捕まっちゃって。大人しく待っててって言ったのに」
ため息混じりに早口で私を責め立て、ほら、と手に持つお風呂セットを私に押し付けた。
私は訳が分からないまま差し出されたプラケースを受け取る。底が少し濡れていて、ついさっきまで使われていた事が伺えた。
お姉さんは垂れ下がった横髪をばさりと払い除けるように顔を上げた。その視線は私の後ろで同じように状況を理解出来ていない警備員さんを射すくめる。
「で。おじさんは私の妹に何か用ですか?」
にこりと挑戦的な笑みでお姉さんは言った。
私はその発言にまた驚いて、目を見開きお姉さんを仰いだ。そんな私に気づかないのか、警備員のおじさんは的を得たようにはいはいと頷いた。
「あぁ、お姉さんと一緒でしたか。それなら大丈夫ですね」
警備員さんは身分確認もせずにあっさりと似ても似つかない私とお姉さんを姉妹と認定し、疑問符を浮かべるばかりの私に「あまり一人でうろつかないように」と念押ししてから持ち場に戻ってしまった。
恰幅の良い後ろ姿を呆然と見送る私の後ろから小さく声がかかる。
「とりあえずそのままシャワー室に向かって。私もすぐ行くから」
お姉さんはそう囁くと小さく手を振り、私が声をかける間も与えず颯爽と出口に向かっていく。
私は立ち尽くすしかなかったが、警備員のおじさんの視線にもいたたまれなくなり仕方なく歩き出した。
広い施設でもないわけで、シャワー室にはすぐ着いてしまった。
言われた通り来たもののここからどうしよう?
お風呂セットもある事だしシャワーを浴びてこいという事なのか、はたまた警備員さんの目から逃がす為の方便だったのか。
お姉さんの『すぐ行く』という台詞を考えると待つべきか。
どうしたものかと私は向かい合わせに6枚並んだシャワー室の扉の前で途方に暮れていた。
だから突然ぽんと肩を叩かれた時には飛び上がる程驚いた。
「ひゃっ!」
「っと、そんな驚かなくても」
すぐ後ろで可笑しそうに笑っていたのは先程の赤茶色の髪をしたお姉さんだった。
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