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episode2
しおりを挟むーーー週明けーーー
私は、都内にある大手企業の総合系コンサルティング会社に勤めている。二ヶ月前からBlumenblattブルーメンブラットと言うジュエリー会社の基幹システムの再構築の案件に携わっている。
発注システムや在庫管理等のデータの切り替え作業だ。
在庫の引き継ぎや業務プロセスの確認など様々な情報と処理、また各社に赴き改善点の提案をしたり…とやる事がいっぱいだか、プロジェクトメンバーはスケジュール管理されている。
多種多様な情報や技術を使って作り上げる為、役員や専門スタッフは最終まで関わるが、その他のスタッフは月単位で取り組む事が多い。
……あと一ヶ月……
………はぁ………溜息しか出てこない……身体も重い…
「玲奈お昼どうする?」
そう声を掛けたのはこの会社で同期の明智 鈴華あけち すずかだ。栗色のボブヘアーで身長は小さいがとても整った可愛い面持ちだ。
「もうこんな時間……じゃあ、いつものお蕎麦屋さんがイイッ!最近暑くて食欲が落ちてる~」
「何?急に先週までモリモリ食べてたじゃんっ!」
「あ~~……そうなんだけど…こればっかりはね~」
「ふーん…別にいいけど……結婚式で何かあった?」
鈴が訝しんだ目でコチラを見てくる……
「よしっ!!じゃぁ早く行こッ!時間がなくなる!ねっ?」
何か言いたげな鈴を華麗にスルーして蕎麦屋に向かう…
二人でざる蕎麦を頬張りながら不明な沈黙に耐え切れず、玲奈は鈴に問いかける。
「ねぇ、鈴……私…転職しようか考えてるの…どう思う?」
鈴は箸を止め目を見開く。
「はぁ?急に話し出したと思ったら転職ッ⁉︎なんでそうなるの?いつ?今あるプロジェクトもまだ期間あったよね?」
矢継ぎに飛んでくる質問に狼狽る……
「まだ詳しくは決めてないんだけど……プロジェクトはきちんと終わらせてから辞めるよ」
「なんで辞めるの?」
何で?………私が聞きたいわよ……どうして仕事辞めなきゃいけないの?一生懸命就活してやっと手に入れたこの環境。仕事はキツイが周りの人達との仲は良好で、同じ目標を成し遂げた時の達成感にやり甲斐を感じていた。
Ωだからと邪険にされる事なく平和だったのにッ‼︎
ホテルで過ごした日……あの後、明け方近くまで求められた。隅々まで愛撫され執拗に攻められた。身体中ドロドロで楓のの動き一つ一つに敏感に反応した……。初めは恥ずかしくて、塞ぎがちたった口も素直に言葉を零していた。
意識が飛びそうになる度、彼に刺激を与えられ覚醒させられた。蜜路を彼の楔で何度も………気持ち良過ぎてどうにかなりそうだった。最後にイッた後意識を完全に飛ばした……
セックスがあんなに気持ち良いものなんて知らなかった。
気持ちなんてお互いないのに……彼の愛撫や時折聞こえる擦れ合う音……そして甘い声…顔や仕草も壮絶なものだった。
余韻に浸ることもなく朝を迎え、寝起きに彼の顔が目の前に広がった時は呼吸すら忘れた…
彼はもう起きていて私を見つめて髪を撫でている。昨夜の出来事が一気に蘇りデュべで頭まで隠して悶絶した…
……が……その後、昨夜の余韻も吹き飛ぶような発言を彼はしてきた……あれは一種の祭りだった……な……
朝起きたて、悶絶タイムを味わった後、バスルームまで連れて行かれ、そこでも抱かれた……
バスルームから出るとオーナーズスウィートに私の荷物が全て揃っていた。………何故??⁉︎慌てる私を他所に獅堂 楓は落ち着き払った様子で《ウチ来い》と……
ウチに来いとは……?何を言ってるの?寝起きで襲われ、まだ理解が追いつかない……着替えを手にして固まった。
すると彼は『ウチに来い』と繰り返した。
ウチに…って家??知り合って間もないのに人を家に呼ぶ気?何考えてるの? ……さっぱりだ……もう訳がわからいので素直に聞いてみた…
『あのぅ~、家ですか?急に言われても…行けません。ましてや昨日初めて会った人間を家に呼ぶなんて…呼ばれる程親しくないですよね?』
『俺の家には呼んでない。ウチの会社に来いと言ったんだ』
会社という言葉に軽くテンパる…
えっ⁉︎会社ッ⁉︎何で⁉︎えぇぇぇっ⁉︎⁉︎
まさか…こんな事になってしまったから口外しないよう誓約書とか⁉︎会社に連行されるの?私……⁉︎⁉︎ウソ~ッ‼︎
まずい…なんとかこの場で収めなきゃ‼︎
『あのっ!今日の事は誰にも言いません。あっ、獅堂さんに迷惑がかかるような事もしません‼︎もし誓約書とかいるならここで一筆書きますっ‼︎』
『はぁ……ったく…誰も誓約書を書けとは言っていない…ウチに来いと言ったのは家ではなく、会社に就職しろと言っている……それに獅堂ではなく、楓だ…昨日から散々呼ばせたはずだか…忘れたか?』
口角を上げて悪そうな顔でコチラを見てる……
思わず素っ頓狂な声が漏れた…
『はぁぁ⁉︎⁉︎』
だから…何言ってるの?…理解出来ない……
就職しろっていう事は…今の会社を辞めて獅堂さんの会社で働く……私って無職扱い⁉︎…仕事してないように見えるの私……
『あのッ‼︎私ッ‼︎ちゃんと就職しています‼︎』
『では、退社してもらう』
脳内の思考が停止した。キャパオーバーだ……
この後…質疑応答が繰り返されたが相手は顔色ひとつ変えず、自分が述べる事が正しいと言わんばかりに言葉を被せてきた……
雲・上・人・サ・マ・は神かッ‼︎
彼は呪文を唱えるように私に言ってきた。
『今の職場を辞めてウチに来い』
今すぐ辞めてウチに来いと言うので、職業も伝え、携わっているプロジェクトがあると言えば、お前が居なくても仕事は進むと言われ…内容を聞かれて答えれば…その会社はウチの会社だ。問題ないと言われ…何もかも《問題ない》の一言で終わる…。
終いにはウチに来ないなら家には帰さないと脅される始末……雲上人だとゆう事も、敬語も忘れた……そりゃ忘れる案件だ……後が怖いが負けてはいられない‼︎
気を取り直して…仕事の事は一人では決められない、前向きに検討すると愚策で乗り切ってみたが検討する余地も与えられなかった。
……愚作だった……
それに連絡先を教えろと言われ、勢いで嫌だと答えたら、
『玲奈の口から聞くか、調査会社から聞くか俺はどちらでも良いが……玲奈はどちらがイイ?』
神に不可能はないのか……
『教えろ』
『……はぃ……』
結局、このままだと家に帰れない気がして渋々…会社を辞める事を前提に帰宅した。
「玲奈?」
呼びかけられて我にかえる。週末の惨劇を思い出すと苦虫を噛み潰したよう顔になる…。
「あっ!うん。ちょっと考え事してた。仕事の事はよく考えてからまた話す…急にごめん‼︎」
「何があったの?」
「何もないよ‼︎ほらお昼休憩なくなっちゃう!早く食べて戻ろっ‼︎」
まだ今週も始まったばかりだ。とにかく仕事しなきゃ。
仕事を辞めろなんて冗談かもしれない。それに本当かどうかも分からないのに、無闇に退職なんて出来ない。
面白がっていたのかも?獅堂 楓とも昨日帰宅した時にメッセージアプリで、事務的な連絡をしただけた。自分から連絡する気はない。
どうにかやり過ごそう…葵にも心配かけたし、落ち着いたら食事でも誘って話でも…葵にすら誰と一緒に居たか伝えてない……言えない…雲上人と居たなんて…
初めこそ驚いていたけど、最後まで話を聞いてくれた。
ずっと悩んでいた事だったから、良かったね、と言われたがちゃんと考えて行動しろって…これは、ただのキッカケでしかないんだから、のめり込まず、ちゃんと見極めろ…と
見極める前に職を失いそうです……
はぁ~ッ……溜息しか出ないなコレは…。
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