6 / 8
episode2(4)
しおりを挟む
………………………………………………………………
緩やかに覚醒する。
……んっ……朝…?ゆっくり瞼を開けると広いベッドに一人…そうだ…昨日…楓さんの家に泊まったんだ…大きめのTシャツを着せてくれてる。ベッドから降りようとした時、部屋の扉が開く。
「おはよう。いま起こしに来たんだが起きてたか…」
「おはようございます……すいません、遅くまで眠ってしまって。…ところで今何時ですか?」
楓は玲奈の隣に座り玲奈をふわりと抱きしめ、首筋に顔を埋め擦り付けている。ちゅ、ちゅっ、と音を立てて首筋に吸い付く。その姿に狼狽するも不思議な感覚に思わず笑い声が上がる。
「ふふっ…くすぐったい…楓さん…」
「ん…もう少し……」
楓は玲奈を抱きしめて離そうとしない……流石にこのままここに居る訳にはいかないので楓の背中に腕を伸ばしポンポンっと優しく叩く。
「楓さん…今何時ですか?」
先程の質問を投げかける。
「もうすぐ十時だ……はあ……もう少しこのまま居たい」
「ダメですよ。離してください…」
楓は大袈裟にため息を零し渋々玲奈を離す。
「そうだな…飯でも食おう…その前にシャワー浴びるか?」
「はい!そうさせてもらいます」
楓は玲奈の手を引きシャワールームに案内する。案内された玲奈は「うわ~っ‼︎大きなバスルーム‼︎」とご機嫌だ。
はしゃぐ玲奈を他所に楓は甲斐甲斐しくシャツに手を伸ばし脱がせてくる。いやいや…自分で出来るから‼︎その手を遮ろうとするも目で殺される……ゔっ…ダメだ…この目…何を言っても《却下だ…》と言わんばかりの目……もぅダメだ…彼の好きにさせておこう…。脳内審議をしている間に脱がされた。恥ずかしい…改まって裸を見られていると思うと死ねる…ホントに…
「あ、ありがとう、ございますッ!もう後は一人で大丈夫なんで……ちょ、ちょっと!楓さんっ‼︎何してるの⁉︎や、やだっ‼︎脱がないでっ‼︎‼︎まっ、待って‼︎あっ‼︎も、もぅっ‼︎ヤダ~~ッ‼︎‼︎‼︎」
「何が嫌だ。初めてでもあるまいし…それに玲奈の身体は隅々まで見た。昨日な……ふっ…全身真っ赤……さぁ、入るぞ…」
「ゔ……」
強引だな…でも…嫌じゃない……
案の定バスルームでも散々抱かれ足元がフラつく私を楓さんが介抱するように全身洗われた。隅々まで…あぁ…恥ずかしい…この辱めの刑はいつまで続くんだろ……はぁ…
お風呂から上がり身体を拭いているとバスタオルを奪い、じっとわたしの下腹部を見てる。
「も、もう!何するんですか‼︎タオル返してください‼︎」
「玲奈…さっき気づいたんだが、この付根の痕は何だ?痣か?」
痣と言われたら、楓が玲奈の身体中に付けたものではないのか…そう思いながら聞き返す。
「えっ?楓さんが付けた痕じゃなくて、痣?」
ちょうど、下腹部の腰骨の下辺りに五センチ角ほどの火傷のような、花びらの形のような跡があった。本当だ…初めて気が付いた。…が薄すぎてよく見えない。
楓がそっと左側の腰に触れる。
「あぁ、脚にも付けたが、これは違う。色は薄っすらだが、葉っぱか?花びらのような…形をしているのが五つ…ぶつけた感じはしないが…」
下着を着けたら見えない位置だから、今まで気づかなかった…まぁ、気にした事もなかったが…。
「…何かにぶつけた記憶は無いですね……身体が温まったから痣っぽく見えるだけじゃないですか?もぅ!それよりタオル返してくださいっ‼︎」
やっとお風呂から出た頃にはお昼になろうとしていた。
「がっつりブランチになってしまったな。大したものは無いが、取り敢えず食べよう」
サンドウィッチとサラダとコンソメスープ、オレンジジュースが並ぶ。
「いえ…充分です。ありがとうございます。これ、楓さんが作ったんですか?」
「いや、コンシェルジュに頼んだ。この家でご飯を食べる事がないから」
「えっ⁉︎ご飯作って食べないんですか?じゃぁ、いつも外食ばかり?」
「あぁ、そうだ。一人分を作るなんて時間の無駄だ」
そこはお金じゃなくて時間なのね……流石は御曹司……
そう言えば、キッチンも使っている感じしなかったなぁ…
次元が違うからしょうがないか…とりあえず食べよ…
「玲奈、食事が済んだら買い物に行こう」
「買い物?何を買いに?」
「玲奈のものを少し揃える。ここには何も無いからな」
「えっ⁉︎あのっ、無くても大丈夫ですよ!ごはん頂いたら今日は帰りますからっ‼︎」
「ダメだ…。月曜の朝までずっと一緒にいる。昨日約束したろ?家に籠る準備をしに行く。分かったな?」
「こもるって…本当にずっと一緒に居るんですか⁉︎で、でもっ!せっかくの休日なのに私といてもつまらないです…よ?」
「つまらなくない。ずっと一緒にいる。それで…何でつまらないんだ?玲奈と居る為に休みの調整をしたんだ。それに玲奈は俺の恋人だろう?恋人と一緒に居たいと思う事は普通だと思うが……とにかく食べたら出掛けるぞ」
恋人…本当に私、楓さんの彼女になったの?ほ、本当に⁉︎ちょっと現実味が全く無い…夢か……夢かも……だってこんな素敵な人が…私の恋人だなんて…やっぱりあり得ない‼︎
「あ、あのぅ、楓さん…本当に私で良いんですか?見た目も大した事ないし…何か持ってる訳でもない…なのにどうして私と付き合うんですか?」
「そんな事はどうでもいい。玲奈は俺が一緒に居たいと思った女だ。離したくない。それに普通に話せ。他人行儀な敬語なんて使わなくていい」
「……」
「玲奈」
楓はこういう時目を逸らさない……気まずい…
「……はぃ……」
少し…いや大分強引だけど…。それに…ハッキリと思いを伝えてくれている事が嬉しい。……よしっ!先のことは分からないけど、とりあえず食べよ!
私たちはご飯を食べた後、車で都心のショッピングモールにやって来た。色々なお店が並び、休日という事もあって人も多い。人混みを抜けて歩く手はしっかりと楓さんに握られている。は、恥ずかしいッ!通りすがりの人達は足を止め楓さんを見た途端、頬を紅く染め、黄色い声を上げている。しかも性別問わずに…歩く道が心なしか開けているのも気になる……こんな超絶イケメンと歩いているだけでも注目の的なのにッ‼︎
「あ、あのっ!楓さんっ!て、手を離して下さいっ‼︎皆が見てるっ!」
思わず下を向いてしまう。顔も真っ赤だ。
「皆が見ている事が手を離して良い理由にはならない。気にするな……それに…チッ…見られているのは俺だけじゃない……」
語尾を弱めながらボソボソと呟く。
えっ、舌打ちされた⁉︎何て言ったの?最後がよく聞こえなかった…
「ごめんなさい。何て言ったんですか?周りの音でよく聞こえなかっ……んっ⁉︎」
ちゅッ、…サラッと舌が口内に入り出ていった……
突然のキスに固まる…何してんの!こんな場所で‼︎
「もうっ!楓さん‼︎」
「キスをすると玲奈の匂いが強くなる…ほら……行くイ ぞ」
低い声で耳元で囁く……グズンッ……お腹が疼く…
やだ…声だけで…身体が熱くなる……熱い…
自然に目が潤む……深呼吸して落ち着けよう…
深呼吸をして隣の楓を睨む。
「もうこんな事しちゃダメですッ‼︎恥ずかしくて買い物どころじゃなくなりますっ‼︎」
「そうだな…そんな目をして煽るな…買い物もせずに帰りたくなる……分かったから睨むのはやめてくれ。必要な物を買おう」
結局繋いだ手は離してもらえず、そのまま買い物をした。
スリッパから基礎化粧品…日用品や部屋着に……いくら何でも買いすぎたわ…
「楓さんっ!そんなに沢山必要ありませんっ‼︎しかも全部出して貰うなんて…いる物は自分で買いますッ!ねっ?」
「却下だ。俺がしたくてそうしている。気にするな。あぁ、あと食器もいるな…」
「食器?」
「家には俺が使うグラスしかない。この際買い揃えておくか」
「あの…楓さん…今日のご飯や明日のご飯は?」
「飯?それはデリバリーでもしたら良いだろう?なんなら食べに行くか?でも…時間が勿体ないからやはり、家で食べたい」
やっぱり…キッチンを使わせてもらおう…
「あの…初期費用はかかりますけど、調理器具を買いませんか?楓さんが良ければ私が作ります。お口に合うかどうかは分かりませんけど…家で食べたいなら…あ、明日もずっと…う、家にいるんでしょ?」
玲奈の返しに僅かに目を見開きながら笑みを浮かべる。
「玲奈の手料理か…悪くない…よし。買いに行くぞ」
凄い…包丁も無いなんて…あっという間に色々な器具やお皿になど買い揃えていく……それにしても今日一日でどれだけお金を使ったのか……聞くのも怖い…
車に乗り切れない分は後でマンションまで運んでくれるそうだ。普通の人ならこんなサービス無いだろうな…なんて事を思いながらひとまず休憩する為カフェに足を運んだ。
楓さんはアイスコーヒー、私は甘めのカフェラテとガトーショコラを注文した。
「う~んっ‼︎このガトーショコラ美味しいっ‼︎沢山歩いたから甘いモノが染みますぅ~っ」
楓は目尻を下げ優しく微笑む。窓側の席で並んで座っている為、顔が近いッ‼︎
「か、楓さんも食べますか?お、美味しいですよっ!」
「いや、俺は…こっちをもらう」
ちゅっ、ペロッ、
「っ‼︎‼︎」
驚く私には気を留めず、口に付いていたケーキを舐めとる…
「んっ…甘くて美味い」
私を見つめながら赤い舌で下唇を舐める…それを潤んだ目で追いかける…
甘い声が出そうになった時、不意に後ろから声がした。
「楓…こんな所で会うなんて…お疲れ」
「眞尋……」
ニヤニヤしながら男性が近づいてきた。
「いや、用事で出ててコーヒーでも買って帰ろうとしたら、ニヤけ面の楓が見えて…楓がこんな所で女連れてるなんて面白いモンが見れるかなぁ~って…初めまして…ん?あっ!この子…ホテルの式場にいた子だ…何で楓と居るの?」
「…?」
誰?玲奈は初めて見る顔にキョトンとする。
「何で眞尋が玲奈を知っている?」
「前にラウンジに来てた時、話したじゃないか。綺麗でイロイロ、ダダ漏れな女の子…目の保養をしたって…何?楓、知り合いだったの?紹介してよ」
チッ…楓は眞尋に聞こえるように舌打ちをした。
「ぶっ!そんなあからさまに不機嫌になるなよ。紹介してくれないなら自分でするけど?」
明らかに苛つきを隠さない楓に玲奈は狼狽える。
「あ、あのっ、私はっ…」
喋ろうとした矢先、楓が遮った。
「冴島玲奈…俺の恋人だ。玲奈…コイツは津田眞尋まひろ…RISEリゾートホテルの総支配人で友人だ」
「は、初めまして冴島玲奈です」
軽く会釈をして顔を上げると津田さんが固まっている。
ど、どうしたの?なんで固まってるの?えっ⁉︎何⁉︎
「…………恋人?………楓の?……」
「そうだ。何なんだその間は」
「楓が…恋人なんて…どうした?」
「どうしたも無い…玲奈と付き合っている。だからお前には俺の恋人として玲奈を紹介している」
「まさか…あの日ホテルの部屋に入れたのはこの子か?」
「あぁ、そうだ」
「まさに青天の霹靂とはこの事だな…人に関心すらない奴が恋人を作るなんて…」
「そうだな…今のところ玲奈以外に興味は無い…玲奈…口にまだチョコレートが付いてるぞ…ほら」
眞尋に話しながらそう言うと、玲奈の口元についたチョコレートを指で拭い、自分の口元に運ぶ…
「あっ!ごめんなさぃ…」
楓さんの友達の前で恥ずかしい…
「お、おいっ、楓…大丈夫なのか…?指を…口に⁉︎……マジか……」
そんな事を言いながら口に手を当て固まっている。口元に付いた食べ物を取ってもらうなんて、お行儀が悪いわよね。そう思いしょんぼりしていると、楓に顎を持ち上げられて目が合う。すると突然顔が近づいてきた…
「んっ!ん~っ‼︎あっ、んっ!」
楓が津田さんの前でキスをしてきた。
しかも深く…ちゅっ、くちゅ、ぴちゃ…
「んっ、か、楓…さん、ダ、メ…ん、も、もうっ!」
やっと唇を離してもらえた。はぁ、はぁ、はぁ…
周りの人達をチラリとも見ず私の唇を親指で撫でる。…キスだけで本当に溶けそうになる……潤んだ目で楓をを見つめていたが、ここがカフェで友人の津田さんがいる事を思い出す。
やばい…そ~っと津田さんを見た。……彼は完全に固まってしまっている。申し訳ない気持ちでじぃ~っと見つめていると津田さんも我にかえったのかハッとした。
「楓がキス……した……マジ……か……」
「そうだ…キスしたな…マジだ…」
「そ…そうか…本気になったんだな。玲奈ちゃん俺のタイプだったけど、諦めるしか無いな……ふっ…」
「眞尋にはやらん。玲奈は俺の女だ」
何か怪しい発言はあったが、津田さんは何か嬉しそうだ。キスした事がそんなに嬉しかったのだろうか?よく分からない…
「何で楓が付き合う報告とキスした姿を見て驚いてんだろう?って思ってるでしょ?」
「えっ?はっ、はいっ!」
やばいっ‼︎心の声漏れてた?
「楓に恋人が出来たのも初めて、報告も初めて…そして…」
「眞尋」
楓が言葉を遮るが止まらない。
「キスも初めて…初めて尽くしで脳の処理が追いつかないよ全く…ふっ、ははっ…いゃ~、今日玲奈ちゃんに会えて良かったよ。本音で言えば、楓の恋人なのは残念だけどね。まぁ、良いモノ見せて貰ったし、そろそろ失礼するよ。楓、また会社で」
「あぁ」
「じゃぁね、玲奈ちゃん。今度はご飯でも一緒に食べよう」
「はい!喜んで!」
津田さんは颯爽と店から出て行った。…今度は玲奈が固まる…
えっ⁉︎楓さん…私とのキスが初めてなの?まともに付き合った事が無いのは何となく想像できるけど…うそ……私…楓さんの初めてを貰ったの?…う、嬉しい…
嬉しい事実に顔を緩ませながら楓を見た。ちょっとバツが悪そうな照れた表情に満面の笑みを見せる。
「あまり見るな…」
照れてる…可愛い…その仕草に絆され、玲奈は楓の腕を引っ張り耳元に顔を近づけ囁く…
……楓さんの初めてを貰えてすっごく嬉しいですッ!……
すると急に楓が席を立った。
「俺たちも出るぞ。もうすぐ夕方だ。食材を買って帰ろう」
楓さんの耳が赤い…ふふっ…
「はい!」
こうして、ショッピングデートは無事終わり帰宅した。
その頃……津田はというと……帰路につきながら考えていた。
マジか…楓が恋人を作るなんて…今までの人生で一度も見たこともないような優しい雰囲気を醸し出していた。
この上なく無関心で極度の潔癖性の楓が他人を部屋に入れ、俺ですら、まともに入った事はないのに…ましてや人前でキスしたなんて…考えられない…あの子は楓の運命の相手なんだろうか?【運命の番】なのか?…まさか…
楓はオメガが嫌いだし、あの子はきっと違う…アルファだろう。番じゃなくても運命ならそれでいいか…それにしても、独占欲剥き出しだったなアイツ…笑える…ふっ…
後は…綾香を上手くやり過ごさないと彼女が危ないな…
まぁ、綾香だけじゃない、楓を狙う奴は沢山いる。これは一波乱あるな…どうやり過ごすのか高見の見物といきますか…
緩やかに覚醒する。
……んっ……朝…?ゆっくり瞼を開けると広いベッドに一人…そうだ…昨日…楓さんの家に泊まったんだ…大きめのTシャツを着せてくれてる。ベッドから降りようとした時、部屋の扉が開く。
「おはよう。いま起こしに来たんだが起きてたか…」
「おはようございます……すいません、遅くまで眠ってしまって。…ところで今何時ですか?」
楓は玲奈の隣に座り玲奈をふわりと抱きしめ、首筋に顔を埋め擦り付けている。ちゅ、ちゅっ、と音を立てて首筋に吸い付く。その姿に狼狽するも不思議な感覚に思わず笑い声が上がる。
「ふふっ…くすぐったい…楓さん…」
「ん…もう少し……」
楓は玲奈を抱きしめて離そうとしない……流石にこのままここに居る訳にはいかないので楓の背中に腕を伸ばしポンポンっと優しく叩く。
「楓さん…今何時ですか?」
先程の質問を投げかける。
「もうすぐ十時だ……はあ……もう少しこのまま居たい」
「ダメですよ。離してください…」
楓は大袈裟にため息を零し渋々玲奈を離す。
「そうだな…飯でも食おう…その前にシャワー浴びるか?」
「はい!そうさせてもらいます」
楓は玲奈の手を引きシャワールームに案内する。案内された玲奈は「うわ~っ‼︎大きなバスルーム‼︎」とご機嫌だ。
はしゃぐ玲奈を他所に楓は甲斐甲斐しくシャツに手を伸ばし脱がせてくる。いやいや…自分で出来るから‼︎その手を遮ろうとするも目で殺される……ゔっ…ダメだ…この目…何を言っても《却下だ…》と言わんばかりの目……もぅダメだ…彼の好きにさせておこう…。脳内審議をしている間に脱がされた。恥ずかしい…改まって裸を見られていると思うと死ねる…ホントに…
「あ、ありがとう、ございますッ!もう後は一人で大丈夫なんで……ちょ、ちょっと!楓さんっ‼︎何してるの⁉︎や、やだっ‼︎脱がないでっ‼︎‼︎まっ、待って‼︎あっ‼︎も、もぅっ‼︎ヤダ~~ッ‼︎‼︎‼︎」
「何が嫌だ。初めてでもあるまいし…それに玲奈の身体は隅々まで見た。昨日な……ふっ…全身真っ赤……さぁ、入るぞ…」
「ゔ……」
強引だな…でも…嫌じゃない……
案の定バスルームでも散々抱かれ足元がフラつく私を楓さんが介抱するように全身洗われた。隅々まで…あぁ…恥ずかしい…この辱めの刑はいつまで続くんだろ……はぁ…
お風呂から上がり身体を拭いているとバスタオルを奪い、じっとわたしの下腹部を見てる。
「も、もう!何するんですか‼︎タオル返してください‼︎」
「玲奈…さっき気づいたんだが、この付根の痕は何だ?痣か?」
痣と言われたら、楓が玲奈の身体中に付けたものではないのか…そう思いながら聞き返す。
「えっ?楓さんが付けた痕じゃなくて、痣?」
ちょうど、下腹部の腰骨の下辺りに五センチ角ほどの火傷のような、花びらの形のような跡があった。本当だ…初めて気が付いた。…が薄すぎてよく見えない。
楓がそっと左側の腰に触れる。
「あぁ、脚にも付けたが、これは違う。色は薄っすらだが、葉っぱか?花びらのような…形をしているのが五つ…ぶつけた感じはしないが…」
下着を着けたら見えない位置だから、今まで気づかなかった…まぁ、気にした事もなかったが…。
「…何かにぶつけた記憶は無いですね……身体が温まったから痣っぽく見えるだけじゃないですか?もぅ!それよりタオル返してくださいっ‼︎」
やっとお風呂から出た頃にはお昼になろうとしていた。
「がっつりブランチになってしまったな。大したものは無いが、取り敢えず食べよう」
サンドウィッチとサラダとコンソメスープ、オレンジジュースが並ぶ。
「いえ…充分です。ありがとうございます。これ、楓さんが作ったんですか?」
「いや、コンシェルジュに頼んだ。この家でご飯を食べる事がないから」
「えっ⁉︎ご飯作って食べないんですか?じゃぁ、いつも外食ばかり?」
「あぁ、そうだ。一人分を作るなんて時間の無駄だ」
そこはお金じゃなくて時間なのね……流石は御曹司……
そう言えば、キッチンも使っている感じしなかったなぁ…
次元が違うからしょうがないか…とりあえず食べよ…
「玲奈、食事が済んだら買い物に行こう」
「買い物?何を買いに?」
「玲奈のものを少し揃える。ここには何も無いからな」
「えっ⁉︎あのっ、無くても大丈夫ですよ!ごはん頂いたら今日は帰りますからっ‼︎」
「ダメだ…。月曜の朝までずっと一緒にいる。昨日約束したろ?家に籠る準備をしに行く。分かったな?」
「こもるって…本当にずっと一緒に居るんですか⁉︎で、でもっ!せっかくの休日なのに私といてもつまらないです…よ?」
「つまらなくない。ずっと一緒にいる。それで…何でつまらないんだ?玲奈と居る為に休みの調整をしたんだ。それに玲奈は俺の恋人だろう?恋人と一緒に居たいと思う事は普通だと思うが……とにかく食べたら出掛けるぞ」
恋人…本当に私、楓さんの彼女になったの?ほ、本当に⁉︎ちょっと現実味が全く無い…夢か……夢かも……だってこんな素敵な人が…私の恋人だなんて…やっぱりあり得ない‼︎
「あ、あのぅ、楓さん…本当に私で良いんですか?見た目も大した事ないし…何か持ってる訳でもない…なのにどうして私と付き合うんですか?」
「そんな事はどうでもいい。玲奈は俺が一緒に居たいと思った女だ。離したくない。それに普通に話せ。他人行儀な敬語なんて使わなくていい」
「……」
「玲奈」
楓はこういう時目を逸らさない……気まずい…
「……はぃ……」
少し…いや大分強引だけど…。それに…ハッキリと思いを伝えてくれている事が嬉しい。……よしっ!先のことは分からないけど、とりあえず食べよ!
私たちはご飯を食べた後、車で都心のショッピングモールにやって来た。色々なお店が並び、休日という事もあって人も多い。人混みを抜けて歩く手はしっかりと楓さんに握られている。は、恥ずかしいッ!通りすがりの人達は足を止め楓さんを見た途端、頬を紅く染め、黄色い声を上げている。しかも性別問わずに…歩く道が心なしか開けているのも気になる……こんな超絶イケメンと歩いているだけでも注目の的なのにッ‼︎
「あ、あのっ!楓さんっ!て、手を離して下さいっ‼︎皆が見てるっ!」
思わず下を向いてしまう。顔も真っ赤だ。
「皆が見ている事が手を離して良い理由にはならない。気にするな……それに…チッ…見られているのは俺だけじゃない……」
語尾を弱めながらボソボソと呟く。
えっ、舌打ちされた⁉︎何て言ったの?最後がよく聞こえなかった…
「ごめんなさい。何て言ったんですか?周りの音でよく聞こえなかっ……んっ⁉︎」
ちゅッ、…サラッと舌が口内に入り出ていった……
突然のキスに固まる…何してんの!こんな場所で‼︎
「もうっ!楓さん‼︎」
「キスをすると玲奈の匂いが強くなる…ほら……行くイ ぞ」
低い声で耳元で囁く……グズンッ……お腹が疼く…
やだ…声だけで…身体が熱くなる……熱い…
自然に目が潤む……深呼吸して落ち着けよう…
深呼吸をして隣の楓を睨む。
「もうこんな事しちゃダメですッ‼︎恥ずかしくて買い物どころじゃなくなりますっ‼︎」
「そうだな…そんな目をして煽るな…買い物もせずに帰りたくなる……分かったから睨むのはやめてくれ。必要な物を買おう」
結局繋いだ手は離してもらえず、そのまま買い物をした。
スリッパから基礎化粧品…日用品や部屋着に……いくら何でも買いすぎたわ…
「楓さんっ!そんなに沢山必要ありませんっ‼︎しかも全部出して貰うなんて…いる物は自分で買いますッ!ねっ?」
「却下だ。俺がしたくてそうしている。気にするな。あぁ、あと食器もいるな…」
「食器?」
「家には俺が使うグラスしかない。この際買い揃えておくか」
「あの…楓さん…今日のご飯や明日のご飯は?」
「飯?それはデリバリーでもしたら良いだろう?なんなら食べに行くか?でも…時間が勿体ないからやはり、家で食べたい」
やっぱり…キッチンを使わせてもらおう…
「あの…初期費用はかかりますけど、調理器具を買いませんか?楓さんが良ければ私が作ります。お口に合うかどうかは分かりませんけど…家で食べたいなら…あ、明日もずっと…う、家にいるんでしょ?」
玲奈の返しに僅かに目を見開きながら笑みを浮かべる。
「玲奈の手料理か…悪くない…よし。買いに行くぞ」
凄い…包丁も無いなんて…あっという間に色々な器具やお皿になど買い揃えていく……それにしても今日一日でどれだけお金を使ったのか……聞くのも怖い…
車に乗り切れない分は後でマンションまで運んでくれるそうだ。普通の人ならこんなサービス無いだろうな…なんて事を思いながらひとまず休憩する為カフェに足を運んだ。
楓さんはアイスコーヒー、私は甘めのカフェラテとガトーショコラを注文した。
「う~んっ‼︎このガトーショコラ美味しいっ‼︎沢山歩いたから甘いモノが染みますぅ~っ」
楓は目尻を下げ優しく微笑む。窓側の席で並んで座っている為、顔が近いッ‼︎
「か、楓さんも食べますか?お、美味しいですよっ!」
「いや、俺は…こっちをもらう」
ちゅっ、ペロッ、
「っ‼︎‼︎」
驚く私には気を留めず、口に付いていたケーキを舐めとる…
「んっ…甘くて美味い」
私を見つめながら赤い舌で下唇を舐める…それを潤んだ目で追いかける…
甘い声が出そうになった時、不意に後ろから声がした。
「楓…こんな所で会うなんて…お疲れ」
「眞尋……」
ニヤニヤしながら男性が近づいてきた。
「いや、用事で出ててコーヒーでも買って帰ろうとしたら、ニヤけ面の楓が見えて…楓がこんな所で女連れてるなんて面白いモンが見れるかなぁ~って…初めまして…ん?あっ!この子…ホテルの式場にいた子だ…何で楓と居るの?」
「…?」
誰?玲奈は初めて見る顔にキョトンとする。
「何で眞尋が玲奈を知っている?」
「前にラウンジに来てた時、話したじゃないか。綺麗でイロイロ、ダダ漏れな女の子…目の保養をしたって…何?楓、知り合いだったの?紹介してよ」
チッ…楓は眞尋に聞こえるように舌打ちをした。
「ぶっ!そんなあからさまに不機嫌になるなよ。紹介してくれないなら自分でするけど?」
明らかに苛つきを隠さない楓に玲奈は狼狽える。
「あ、あのっ、私はっ…」
喋ろうとした矢先、楓が遮った。
「冴島玲奈…俺の恋人だ。玲奈…コイツは津田眞尋まひろ…RISEリゾートホテルの総支配人で友人だ」
「は、初めまして冴島玲奈です」
軽く会釈をして顔を上げると津田さんが固まっている。
ど、どうしたの?なんで固まってるの?えっ⁉︎何⁉︎
「…………恋人?………楓の?……」
「そうだ。何なんだその間は」
「楓が…恋人なんて…どうした?」
「どうしたも無い…玲奈と付き合っている。だからお前には俺の恋人として玲奈を紹介している」
「まさか…あの日ホテルの部屋に入れたのはこの子か?」
「あぁ、そうだ」
「まさに青天の霹靂とはこの事だな…人に関心すらない奴が恋人を作るなんて…」
「そうだな…今のところ玲奈以外に興味は無い…玲奈…口にまだチョコレートが付いてるぞ…ほら」
眞尋に話しながらそう言うと、玲奈の口元についたチョコレートを指で拭い、自分の口元に運ぶ…
「あっ!ごめんなさぃ…」
楓さんの友達の前で恥ずかしい…
「お、おいっ、楓…大丈夫なのか…?指を…口に⁉︎……マジか……」
そんな事を言いながら口に手を当て固まっている。口元に付いた食べ物を取ってもらうなんて、お行儀が悪いわよね。そう思いしょんぼりしていると、楓に顎を持ち上げられて目が合う。すると突然顔が近づいてきた…
「んっ!ん~っ‼︎あっ、んっ!」
楓が津田さんの前でキスをしてきた。
しかも深く…ちゅっ、くちゅ、ぴちゃ…
「んっ、か、楓…さん、ダ、メ…ん、も、もうっ!」
やっと唇を離してもらえた。はぁ、はぁ、はぁ…
周りの人達をチラリとも見ず私の唇を親指で撫でる。…キスだけで本当に溶けそうになる……潤んだ目で楓をを見つめていたが、ここがカフェで友人の津田さんがいる事を思い出す。
やばい…そ~っと津田さんを見た。……彼は完全に固まってしまっている。申し訳ない気持ちでじぃ~っと見つめていると津田さんも我にかえったのかハッとした。
「楓がキス……した……マジ……か……」
「そうだ…キスしたな…マジだ…」
「そ…そうか…本気になったんだな。玲奈ちゃん俺のタイプだったけど、諦めるしか無いな……ふっ…」
「眞尋にはやらん。玲奈は俺の女だ」
何か怪しい発言はあったが、津田さんは何か嬉しそうだ。キスした事がそんなに嬉しかったのだろうか?よく分からない…
「何で楓が付き合う報告とキスした姿を見て驚いてんだろう?って思ってるでしょ?」
「えっ?はっ、はいっ!」
やばいっ‼︎心の声漏れてた?
「楓に恋人が出来たのも初めて、報告も初めて…そして…」
「眞尋」
楓が言葉を遮るが止まらない。
「キスも初めて…初めて尽くしで脳の処理が追いつかないよ全く…ふっ、ははっ…いゃ~、今日玲奈ちゃんに会えて良かったよ。本音で言えば、楓の恋人なのは残念だけどね。まぁ、良いモノ見せて貰ったし、そろそろ失礼するよ。楓、また会社で」
「あぁ」
「じゃぁね、玲奈ちゃん。今度はご飯でも一緒に食べよう」
「はい!喜んで!」
津田さんは颯爽と店から出て行った。…今度は玲奈が固まる…
えっ⁉︎楓さん…私とのキスが初めてなの?まともに付き合った事が無いのは何となく想像できるけど…うそ……私…楓さんの初めてを貰ったの?…う、嬉しい…
嬉しい事実に顔を緩ませながら楓を見た。ちょっとバツが悪そうな照れた表情に満面の笑みを見せる。
「あまり見るな…」
照れてる…可愛い…その仕草に絆され、玲奈は楓の腕を引っ張り耳元に顔を近づけ囁く…
……楓さんの初めてを貰えてすっごく嬉しいですッ!……
すると急に楓が席を立った。
「俺たちも出るぞ。もうすぐ夕方だ。食材を買って帰ろう」
楓さんの耳が赤い…ふふっ…
「はい!」
こうして、ショッピングデートは無事終わり帰宅した。
その頃……津田はというと……帰路につきながら考えていた。
マジか…楓が恋人を作るなんて…今までの人生で一度も見たこともないような優しい雰囲気を醸し出していた。
この上なく無関心で極度の潔癖性の楓が他人を部屋に入れ、俺ですら、まともに入った事はないのに…ましてや人前でキスしたなんて…考えられない…あの子は楓の運命の相手なんだろうか?【運命の番】なのか?…まさか…
楓はオメガが嫌いだし、あの子はきっと違う…アルファだろう。番じゃなくても運命ならそれでいいか…それにしても、独占欲剥き出しだったなアイツ…笑える…ふっ…
後は…綾香を上手くやり過ごさないと彼女が危ないな…
まぁ、綾香だけじゃない、楓を狙う奴は沢山いる。これは一波乱あるな…どうやり過ごすのか高見の見物といきますか…
10
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる