告白

①

集まったのは、駅前のチェーン居酒屋。

個室のドアを開ければ、もう慣れた顔ぶれ4人。

隣に座ったマコトが、ジョッキを傾けて一気に生ビールを飲み干す。

その喉ごしの音が、もうBGMのドラムロールにしか聞こえなかった。

空になったジョッキをテーブルに置く音と同時に、私の大好きな人懐っこい笑顔。

あまり人に笑顔を見せることが無いマコトの
私たちにだけ見せる無防備な顔。

あぁ、久しぶりに隣で酒を飲める幸せって、こういうことなんだと全身で実感する。

気づけば私は、饒舌どころか“饒舌の化身”と化していた。

舌は軽快に回り、くだらない話を飾り立て、さらに余計なスパイスをまき散らす。

笑いが取れると、もっと笑わせたくなり、つい調子に乗ってしまう。

横でマコトが笑い声を上げるたびに、安心と高揚が胸に広がり、私は止まれなくなる。

まるで、一人で舞台に立ち続けるお笑い芸人のようだ。

話のネタは「ケンジの黒歴史」と「アヤカの天然エピソード」。

「ちょっと！人のこと勝手に暴露しないでよ！」

アヤカは頬を赤らめて抗議するが、口元には笑みがこぼれている。

「おまえが一番うるさいわ！」

ケンジは唐揚げを詰め込みながらムッとするが、その目もどこか楽しげだ。

笑いが広がり、グラスの氷が鳴る。テーブルの上には温かな空気が流れていた。

けれど――その笑い声の奥に、どこか虚ろな響きが混じっているのを、私はふと感じてしまう。

声を張り上げれば上げるほど、胸の奥にぽっかりとした穴が広がっていく。

笑いに隠れて、誰も触れられないものがそこにある気がした。

それでも私は話を続けた。止まらなかった。
止まれなかった。

笑い声とグラスの氷の音が交錯し、テーブルの上は温かな熱気と妙な違和感に包まれていた。

私はその空気を感じつつもさらに笑いを重ねた。

けれど、ふとした瞬間
横で笑うマコトの視線に気づく。

彼は確かに笑っている。

けれど、その奥に、どこか真剣な色が滲んでいた。

楽しさに浮かされるほど、なぜか胸の奥がざわめいた。