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短めな話
インタビュー
しおりを挟むあの子のことを知りたいと
*
医者に聞いてみた
「怪我を診る必要がないので助かります、あなたは」
「俺の怪我がないのはあいつのおかげです」
「ああ......そういえばあなたはシアンからしか血を貰っていないとか」
「駄目......ですかね」
「いや、はっきりとは言えないですが」
「......」
「依存症になって、しまうかも」
「依存......」
「(あ、赤くなった...美味しいんだな)まぁあなたが依存してるのは知ってますから。問題は」
「ほかに何か?」
「彼は悪魔だという点です」
「......」
「悪く言うつもりはありません、けれど人は悪魔の誘惑にかかってしまいますから」
「......俺も人間じゃないんで」
「元は人間でしょう」
「......」
「何も人間でなくともかかりますよ。あと、僕も」
「え」
「......嘘ですよ。シアンはただの医者にまでは誘惑をかけませんでした」
「僕もかかった」と言おうとしたとき、吸血鬼の青年が結構な眼力でこちらを凝視してきたので、ジェシカ医師は言葉を飲み込んだ。
医者業を継ぎたての頃、依頼人に死なれ落ち込んでいたシアンに、寂しいから側にいて欲しいと言われたことがある。シアンの涙に居た堪れなくなり一日見守ってあげていただけなのだが、本人は誘惑をかけられたと勘違いしている。
*
魔女に聞いてみた
「ポロロッカさん......あいつは、何なんですか」
「シアンのこと?そんなの、決まってるじゃない」
「決まってるんですか」
「うん。あの子は天使だもん」
「......」
シルフは、そういうことを言っているんじゃない、という顔をしてこちらを見た。
「確かに、そのくらい癒されますが...」
「あれー、デレてる?」
「ちがいます」
「違くないよねー、耳真っ赤だよー?」
「茶化さないでください」
「はいはい。まあね、あの子の種族がなんなのかは気にしなくていいわ。ただね」
「......」
「あの子はあれでいて、子供なの。純粋なのよ」
「よく分かりませんが」
「君の方が大人だよ。だから、ずっと見守ってあげていて」
「ますます分からな......」
「返事は?」
「はい......」
シアンは小さな頃の心のまま、その身体に経験を刻みつけられただけだ。あの子これまで、たくさんそういうのに怯えてきたけれど、ただただ恐れを膨らませるばかりで、心は成長できていないのだ。ポロロッカはシアンを一番長く見てきて、いつもそう思っていた。けれどぽっかり空いた穴を埋めてやることはついぞできなかった。
君にならできるかな?ポロロッカは、微妙な顔で頷いたり首を傾げたりしている横顔を見て、微笑んだ。
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