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286、真実に近付いていく
沢山の素材をゲットして、散々雄太たちの前で錬金して、その姿を長老様はニコニコと見ていて、錬金術師のジョブレベルが一気に3くらい上がった俺は、ひたすら満足してエルフの里を後にした。
帰りは、2人までならセッテの近くの湖まで転移魔法陣で跳べるので、三回に分けて森を通らずに帰ってきた俺たち。雄太はしれっと「死に戻ればすぐにでもセッテに戻れるんだけどな」なんてあほなことを言ってたから、じゃあそうしなよと置いていこうとしたら即「無理連れてって頼むお願いマック様」と拝まれたので、仕方なく雄太もセッテの近くの湖に転移で運んだ。
距離的には、もしかしたらトレの工房からだったら一人なら一回で跳べるかも、とホクホクしながらMPを回復していると、雄太が「なあ」と声をかけてきた。
「これ、渡しとく」
「え?」
雄太はインベントリから取り出したものを俺に差し出した。
なんでも、前に魔大陸の魔物が出た時にドロップしたアイテムの一つらしいんだけど。
「ごく稀にそれが出るんだよ。俺もだし、ガンツさんも出てた。でも何なのかわからなくてよ。勇者はそれは俺らには弄れないものだってそれだけ言って諦めろって笑ってたけどな。錬金素材じゃ確かに諦めるしかねえな。今回沢山錬金アイテム貰ったから代わりにもならねえかもしれねえけど、それやるよ」
「ありがとう。でもなんで錬金術師じゃない高橋とかガンツさんがこんなものをドロップするんだろう」
ころりと手に乗せられた石は、『穢れた魔物の核』という物だった。ガンツさんも同じものが出たらしい。とはいえ、鑑定しても『謎素材』だったらしいけど。
「このアイテムなんだか怖いな。『穢れた魔物の核』っていったい何に使うんだよ」
「さあ? でも碌なもんじゃない気がする」
「俺も。でもまあ、活用できるならしてみるよ。ありがとう」
どす黒い石をインベントリにしまうと、雄太がガンツさんからも受け取って送るからと約束してくれた。ありがたく貰うけど。でもやだなあ穢れた魔物の核とか。錬金したら同じようなのがむくむく出来上がってきそうで怖い。使うのは、何が出来るのかわかってからにしようそうしよう。
一緒にセッテの冒険者ギルドに向かい、辺境に向かう人の護衛クエストを受けながら辺境に戻るという雄太たちと冒険者ギルドで別れた俺とヴィデロさんは、せっかくだからとまた宿屋の食堂でご飯を食べてからトレに帰った。
ヴィデロさんは漆黒に戻った鎧を甲冑台に戻して、しっかりと工房に馴染んでいる鎧に満足しているようだった。腰に差していたティソナドスカラスもその鎧にそっと寄り添わせている。俺は自分の腰に差していた形見の剣をヴィデロさんに返して、少しだけ寂しくなった腰を無意識にさすった。
漆黒の鎧と黒い鞘の剣が寄り添うように、おれもヴィデロさんにくっついた。
エルフの里ではずっと一緒に錬金三昧だったけど、イチャイチャできなかったから。
「ヴィデロさん、一緒に行ってくれてありがとう」
「マック。俺こそ、連れて行ってくれてありがとう。長老様からはとてもいい話を聞けたし、マックの可愛い顔は堪能できたし、楽しかった」
腰にスッと手を回されて、俺もヴィデロさんの胸囲に腕を回す。鎖骨に頭をくっつけると、ヴィデロさんの小さな笑い声が聞こえた。
今日はまだ、時間があるんだ。
だから。
目の前の鎖骨にチュッとキスをして、俺はヴィデロさんの綺麗な顔を見上げた。
だから、今日は、奥の部屋で。
「愛し合いたい……」
身体中を愛されて、奥までヴィデロさんで包まれた俺は、心も体も満たされて服を羽織るヴィデロさんの背中をベッドに転がりながら見ていて。
細かい傷は、俺が作ったハイパーポーションを掛けたら綺麗さっぱりなくなっている。均整の取れた筋肉の盛り上がりが、目に楽しい。
俺の腕が回らないんじゃないかっていうほどの胸筋の下の方を目で辿っていくと、ウエストがくびれてきゅっと引き締まっていてすごくセクシー。下着から伸びる足の筋肉もまた、すごく理想的。
手を伸ばせば届く位置にあるヴィデロさんのお尻も、引き締まってきゅっとしていて、すごくかっこいい。
思わずそっとお尻に手を伸ばすと、触れた瞬間ヴィデロさんの笑い声が聞こえてきた。
「あ、ごめん。痴漢しちゃった」
「もっと凄いことを今俺がマックにしたばっかりだろ。触りたいなら遠慮なく触れよ」
「ほんと? 嬉しい」
ずりずりと身体を動かして、ヴィデロさんに近付いた俺は、痴漢のごとくヴィデロさんのお尻から脇の下に手のひらを滑らせて、綺麗に割れた腹筋まで到達した。
この感触が好き。さわさわと撫でると、ヴィデロさんが少し身動いだ。くすぐったいのかな。くすぐったがりなのも可愛い。
半身だけ身を起こして、ヴィデロさんのお尻に、下着越しにキスをする。もちろんその間腹筋を愛でるのは忘れない。
そこから腰骨の辺りに手を這わせ、今度は太腿の筋肉を手の平で堪能する俺。無駄な肉が全然ないのが凄い。肌もすべすべで気持ちいい。
太腿を撫で下ろした俺は、その手を足に絡めて太腿の内側を今度は下から上に撫で上げてみた。
はあ、ヴィデロさんの身体を堪能。最高。
ちらりと上を見上げたら、肩越しに俺を見下ろしていたヴィデロさんが、困ったような顔をしていた。
「マック……」
「あ、ごめん、いやだった? ほんとに遠慮なく触っちゃったから」
「違う……」
太腿にあった俺の手を掴むと、ヴィデロさんはそっと俺の手を、中心部に持って行った。
「あんまりにもやらしく触るから、こうなった……」
あ、うん。ヴィデロさんのヴィデロさんがまたしても元気になりました。
大丈夫、まだまだ元に戻るまで時間はあるよ。
俺はそんな意味を込めて、下着越しに触らされたそれを、今度は深い意味を込めて撫でるのだった。
昼休み。俺たちはいつも通り三人で集まって、屋上に向かった。
屋上には誰もいない。弁当を開いて、お茶のペットボトルの蓋を開けて一口口に含むと、雄太が「なあ健吾」と口を開いた。
「ADOって、おかしくね?」
「え、何が?」
真顔の雄太は、いつもと違って茶化す気はなさそうだった。
横にいる増田も、なんだか考え込んでる顔をしている。
「あれは、ゲームだよね。すっごく細部まで作りこんでる、ゲームなんだよね」
「昨日、エルフの長老に会って話を聞いただろ。なんか、すごく違和感があって」
「違和感?」
どこら辺が違和感だったんだろ、と頭を捻っていると、手に持ったサンドイッチを一口齧ってから増田もうん、と頷いた。
「あんまりにも、設定が細かすぎてさ。普通、メインの設定以外は容量が大きくなりすぎるとか細かくなりすぎて時間がいくらあっても足りなくなるとかそんなんでぼかすことが多いのに、魔王とか魔大陸とか、エルフとか獣人とか、すべてが細部にわたってちゃんとつじつまの合う歴史があるんだもん。あの隠し扉の獣人と恋に落ちた薬師にしたって、一人一人がちゃんと今まで生きてきた歴史があるんだ。おかしいよ」
「そういうの、普通じゃないの?」
「普通はな、単なる一街人の歴史なんて、一人一人に設定はしないんだよ。それだけでどれだけの容量を食うかわからねえだろ。そうなると、せっかく細かく決めた設定も全然生かせねえくらい使えねえ動けねえゲームになるだろ」
「あ、確かに」
そういう無駄な物を一切排除して、プレイヤーの動きの繊細さを重視したゲームが『UMS』っていう未だ人気が高いVRゲームなんだ。だからこそ、っていうのはおかしいけど、そのゲームのNPCは最低限の言葉しか言わないし、あんまり会話は成り立たない。そしていつも決まった動きしかしないっていう物なんだ。あれはたしかに、一昔前のテレビゲームのNPCの様な動きだから、かなりおかしいけど。
「まだ勇者とかメインのキャラだけならわかるんだよ。でもなあ。あの獣人の本もそうだし、騎士団の人たち一人一人にしても、ちゃんと今まで生きてきた記憶とか知識とかあって、俺らとなんも変わりねえんだもん。門番さんだってそうだろ。なんか過去とかあるんだろ。そういうのがなんか最近すげえ違和感あって」
「うん。なんか感情移入しちゃってね。この間言ってたクエストあるじゃん。多分重要クエスト。賢者と勇者と一緒に魔導士を助ける的なモノ。アレが失敗してあの世界が滅亡したりしたら、普通のゲームだったら次の日ログインしたら普通に戻ってそうじゃん。でも、あの世界ではそれを想像できないっていうか。滅亡したらその時点でADOも終わりになって、もう二度とログインできないんじゃないかって、そんな気がしてきちゃってさ。なんていうか、そんな気分になるゲームなんて今までなかったから」
「俺も同じことを思ってた。もしかしたら健吾もそう思ってるんじゃないかと思ってな」
思ってるんじゃなくて、そうなるって知ってるんだけど。
あそこがもし魔王に呑み込まれたら、あの世界自体が消えてしまうから、ログイン出来なくなるだろうし、人も全員生きてはいられないだろうし、雄太と増田の想像は、そのまま現実になるんだ。
「多分、多分だけどね」
弁当に箸をつけることもせずに、俺は雄太をまっすぐ見て、口を開いた。
「そういう考えを持てる人が、最終鬼クエストを受けるんだと思う」
そうでもないと、あの世界を助けようなんて本気にはならないから。ゲームはゲームだからなんて軽く遊んでるような人には、あの重要クエストは拾えないんだ。レガロさんも俺たちの行動次第って言ってたし。
じっと雄太を見ていると、俺と視線をぶつけ合ってた雄太の目がふっと細くなった。
「健吾が錬金術師になったのも、俺らより先にNPCにとって重要な位置についたのも、きっとそれなんだろうな。健吾に引き摺られるみてえに、俺も最近ADOがゲームだと思えなくなってきやがったし」
「実は俺も。その内ADOとこっちが生身で行き来できるようになって、郷野があっちにお嫁に行っちゃうんじゃないかなんて、たまに考えちゃうんだ」
あははと笑う増田の言葉に、ドキッとした。
多分、未来はそうなるよ。ヴィルさんの技術の進歩次第だけど。
あの世界と繋がったら、俺は生身でヴィデロさんを攫いに行って、工房で二人で暮らそうとか思ってるよ。
「健吾」
挙動不審に視線をせわしなく動かした俺に、雄太から声がかかった。
「なあ、健吾」
「なに」
「……とりあえず、どっかいくならちゃんと一言声かけてけよ」
ドキドキしながら雄太に返事をすると、雄太は溜め息を一つ吐いてから、そう呟いた。
もう何度でも思うけど、俺、雄太と親友やっててよかった。悔しいけど雄太はなんかすごく器が大きいと思う。
「って、あ、増田お前、俺のパン取ってんじゃねえよ!」
「だって甘いものが食べたくなったから。美味しいよありがとう」
「ありがとうじゃねえ! 元通りにして返しやがれ!」
「御馳走様。リーダーありがとう」
増田と雄太のやり取りを目の前で見て、俺は遠い目をしながら即座にさっきの心の声を取り消したのだった。
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手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。