これは報われない恋だ。

朝陽天満

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番外編5

魔大陸開墾編 9

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「『高橋と愉快な仲間たち』がトップランカーって言われてるのがどうしてかわかった気がするわ」

 上を見上げていたまんまるさんがしみじみと呟く。
 俺もつられるように上を見ながら、小さく笑い声を上げた。

「なんでもありですからね」
「ほんとに。大剣使いが空中戦とか普通は冗談としか思えないよね」
「最初はMP低すぎて苦労してたみたいですけどね」
「そりゃそうよ。バリバリの大剣使いがMP高いとかステ振り間違えてませんかって言っちゃいそう」

 ひらりひらりと時折落ちてくるのは、ボスの羽らしい。ここからも辛うじて見えるボスのHPバーはかなりガンガン減っている。そろそろ残り二本って感じだ。

「まんまるさんも投げナイフの腕すごいですよね。誰にも当たらないでちゃんとボスにだけ当たるんだもん」
「そりゃあれだけ的が大きかったらね。あの大きさだとこのフロアは狭すぎるんじゃないかな。これが外のフィールドだったらもっと苦労して……するかな? 海里ちゃんたちが皆飛ぶから苦労はないかも。私たちはなんもできないけどね」
「あーそうですね」

 いいな―私も飛びたいなーとぼやくまんまるさんの後ろから、トッポさんが膝カックンを仕掛ける。

「お前ら戦闘中」
「そういうトッポだってぼんやり突っ立ってるだけじゃん」
「仕方ないだろやることないんだし」
「うぜえ! 暇だからって私にちょっかい掛けないでよ! マック君と友情を育んでいたんだから!」
「俺も混ぜろクソ羨ましい!」

 やり取りがやっぱり平和過ぎる。上空ではボス戦の真っただ中なのに。
まんまるさんが怒るのを横で見ながら、ボス戦がこんなに長閑でいいのかな、なんて思った瞬間。

 空気が震えた。

 脳を揺さぶられるように超音波のような高音が身体を突き抜け、一瞬身動きが取れなくなる。
 がくんと膝をつき、立っていられず四つん這いになる。
 脳みそがいまだに揺れてる気がして、視線が定まらない。

「マック!」

 声を掛けられてのろのろと顔を上げると、目の前にまんまるさんがいて、鳥の足を剣で切り付けていた。
 ようやく視界が広がり、周りを確認すると、皆ちゃんと動けている。
 今の超音波的な威嚇はウサ耳ローブを通したことで、何倍にもなってしまったらしい。
 大打撃を受けたのは俺だけだった。

「マック君大丈夫⁉」
「だい、じょうぶです」
「呂律回ってなさそう。壁まで歩ける? こっちを標的にして来たみたいなの」
「俺を、標的……?」

 俺、タゲ取りしてないよ、なんて回らない頭で考える。
 でも実際魔物は俺を見つめていて、目が合った瞬間、やらないとやられる、という考えが浮かんだ。
 皆あの威嚇で一度下に降りたらしい。俺を狙うことで地上すれすれに降りて来た魔物を、総攻撃している。

「ああ、これならまきこまないかも」
「マック君?」
「気を付けて」

 ようやく立てるまで復活したヘロヘロの身体は、歩こうとすると足がもつれる。こんなに効く威嚇、初めてだよ。
 もしかしてこれでヘロヘロになった俺が一番弱そうに見えるってことかな。
 魔物正解。悔しいからやられる前にやってやる。一番弱くても反撃くらいは出来るんだよ。
 インベントリから感覚機能破壊薬センスブレイクドラッグと起爆剤を取り出して、片手に聖短剣を構える。
 投げれば届く位置なのがいい。取り囲まれてるから動けないのかも。

「最弱だって、やられたらやり返すんだよ」

 鳥のくちばしが俺を狙って襲い掛かってくるタイミングに合わせてポイっと感覚機能破壊薬を投げると、丁度鼻の辺りに当たって物凄い悲鳴があがった。

『ギャアアォオオオオオオオ!』

 思いっきり翼をバタバタして足掻く鳥に向かって今度は起爆剤を投げ、必死で舌を動かし詠唱する。

「至高の神よ、その気高き神気で魔を打ち倒し給え、『聖球ホーリーボム』」

 起爆剤を巻き込んだホーリーボムは、鳥全体を雁字搦めにするようにして、とても高い天井まで聖なる柱を構築した。

「一番弱くてもこれくらいは出来るんだよ」

 目の前にそびえたつ聖魔法の柱を見ながらフン、と鼻を鳴らすと、遠くで雄太が指さして笑っているのが目の端に映ったので、ハイパーポーションを構えて振りかぶった。

 今の一撃で、大きな鳥の魔物は消えていった。正直聖なる柱が邪魔でキラキラと消えていく所は全く見えなかった。魔法の発動が終わったら魔物もいなくなっていた状態だった。
 鳥がいた場所には、小さなメダルのようなエンブレムが落ちていた。
 誰か拾わないのかな、とあたりを見回したら、皆が俺を見ていた。

「……誰が最弱……」
「あの墓地無双の話は誇張でも何でもなかったのかも……」

 俺を守ってくれていたまんまるさんと、すぐ近くにいたトッポさんが、魂が抜けたような顔で呟く。
 違うんだよ。俺の場合攻撃力は全くないんだよ。
 アイテムがないと何も出来ないんだよ。
 誤魔化すように鳥のいた場所に走り、エンブレムを拾う。
 そこには『epi』と書かれていた。



 ユイの魔法陣でシークレットダンジョンから出てくる。
 皆無事だったことを喜ぶよりも、俺の攻撃を見たことを大騒ぎしていて、正直居たたまれなかった。
 それを見ていたサラさんは、笑いをこらえながら「マックはいつでもマックね」とわけのわからないことを言っていた。

「とりあえず、ルルーたちの誰かエンブレムいる? 俺たちもう『ソレイル』のエンブレム持ってるんだよな。これで所属国が決まるらしいから、集めるならこの国で集めるといいぞ」

 雄太がエンブレムをキラキラさせながら副業薬師の人たちにそう声を掛けると、ルルーさんたちは目を輝かせてそれを受け取った。

「マック君はどこかのエンブレム持ってるの?」

 まんまるさんに聞かれたので、俺は首を横に振った。

「持ってないです。まだどこの国所属にしようか決めかねてて、でもやっぱり俺はグランデが一番いいっていうか」
「ああー門番さん……もう門番さんじゃないんだっけ? 旦那さんがいるしねー。そうだよね。でも、エンブレムを持ってたら否応なしにその国所属になっちゃうってこと?」

 まんまるさんが首をかしげると、サラさんが「そうね」と口を開いた。
 
「私とルーもこのエンブレムを集めているんだけれど、今はまだ持っていても効力は発揮しないの。一定数以上集めると、その国を守る効力を発揮するらしいのよ。私たちはそれが見たくて、これを集めているのよ。『エピ』なら丁度三つ持っているわ。皆一緒にエピに籍を置きたいなら、喜んで売らせてもらうわ」

 流れの商人サラさんの言葉に、ルルーさんたちは頭をつきあわせて相談を始めた。
 ひそひそ話は皆には聞こえていないみたいだけれど、ウサ耳ローブの俺には丸聞こえ。こういうのってちょっと申し訳ない気がする。

「どうする。場所的に俺は中央がいいなって思ったんだけど」
「私は小さいところで重要人物になる的なことをやってみたいなって」
「でもさ、エピって前にセイレンと酒盛りした時に『故郷はエピというとても長閑なところだ』って言ってた気がしたから、復活させてセイレン連れてきたくない?」
「うわあ、そうだった。そんなことセイレンいってた気がする。エピって可愛い地名だなって思ってたのすっかり忘れてた」
「じゃあエピでいいか?」
「問題ない」
「あと三枚のエンブレムはどうする? このままダンジョンサーチャーの奥さんから買う?」
「値段による」
「少しくらい高くても逆にこんなチャンスなくね? あの噂の流しの商人だぞ」
「そうだね。誰が買うかも問題だ」
「全員で三個分の料金を払えばいいんじゃないか?」
「なるほど」

 なるほどって、もうルルーさんたちはシークレットダンジョンに自分たちで挑戦できるんだから自分たちでゲットすることもできるのに、と顔を背けながら思っていると、サラさんがにこやかに「安くするわよ」と畳みかけた。
 思わず吹き出しそうになって、慌てて口を押さえた。



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