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番外編5
魔大陸開墾編 8
サラさんはブレイブとまんまるさんを横に呼ぶと、「見ててね」とウインクして、手を宝箱に向けた。
「全能なる光の精霊よ、その尊き光で閉ざされた闇を払い我らの前にその姿を見せなさい。完璧解錠(パーフェクトリリース)」
サラさんの詠唱が終わると、宝箱がピカっと光ってカチリと音がした。
ゆっくりと宝箱の蓋が開く。
ブレイブとまんまるさんは二人そろってガッツポーズをした。
もしや、今の魔法を覚えたとか。
俺は見ていても新しいスキルとか魔法は憶えなかった。ちょっと羨ましい。せめて覚える条件が少しでも開示されてくれれば。まあ、宝箱の解錠魔法なんてレベルが上がる気はしないけど。
「リリーズが使える人は、この魔法を覚えるのも簡単なのよ。どう、二人とも覚えた?」
「はい!」
「バッチリ」
にっこりと笑うサラさんに、心の中で謝った。物理で壊して開けるんだと思ったよ……
早速中を覗き込むと、見たことのないアイテムが沢山入っていた。
俺たちが十人だから全部で十個らしい。宝箱ってそういうところも不思議だよね。
「『暴風の大剣』は高橋かな。『爆風の大盾』はトッポ、『疾風の突剣』はルルーさん貰う? 『突風の魔法杖』はユイか、フィット……サラさんは杖いる?」
「私はもっといい杖を持ってるからいらないわ。それよりもこっちが欲しいかも。『防風のペンダント』。『エセス国』の渓谷がたまに風で飛ばされるのよ」
「そこ行ってみたい……風で飛んでみたい」
フィットさんの一言に、思わず身震いする。俺は無理。渓谷を歩いているだけで風で飛ばされるとか、近寄り隊とも思えない。一番味わいたくない天然のトラップだよ。
「アクセ関係だと……『聖風のブローチ』欲しいやつ挙手。効果は闇属性魔法半減防御系の風魔法が発動するやつ」
「あ、それマックがいいんじゃないかな。聖魔法って闇魔法に弱いから」
ブレイブが掲げたブローチは、助言したユイを介して俺に渡った。誰も否やを唱えなかった。闇魔法が半減になるのはちょっと嬉しい。ユキヒラなんかは滅茶苦茶欲しがりそう。
「俺は『挟風の弓』が欲しい。他に弓やるやついる?」
「いないから貰っちゃえ。『突風の魔法杖』は私が貰ってもいい? ユイちゃん」
「もちろんいいよーフィットさん。私はこっちがいいな。『増風のイヤーカフ』。お花の形可愛いよね」
残り二つのうち、まんまるさんは『惑風の羅針盤』を手に入れ、海里は『躍風のマント』を手に入れた。
だいぶレアなアイテムだった。流石シークレットダンジョン。
皆思い思いに装備をしていると、雄太が「ってことはだ」と口を開いた。新しい大剣を背負って。
「この先にいるだろうダンジョンボスは、風の属性に強いか弱いかのどっちかだな」
「そうね、総て風属性のものだしね」
海里の言葉に皆が頷く。
もしかして風に強い方だったら、俺たち装備で弱体化したってこと?
「じゃあ装備しない方がいいんじゃないの?」
「そんなことないわよ」
俺の素人考えは、海里に一刀両断された。
「私のこのマントは跳躍時風の補助が付くマントなのよ。だから、双剣で攻撃するのにとても便利なの。ユイのもアクセも風魔法威力が上がるものでしょ、高橋の剣だって振り回すだけで周りに風を起こしたりできるのよ。便利じゃない。攻撃力が弱くなるわけじゃなくて、プラスの効果が得られる感じだと思えばいいわ」
「なるほど……そして風魔法に対する耐性も上がるのか」
納得すると、俺は胸元に着けたブローチに触れた。
ブルーテイルの羽と並べてもおかしくない薄い水色だから、違和感がない。飾り羽の宝石はヴィデロさんの目にそっくりの深緑だけど、それと並べるとまるで森と空みたいな感じになってとてもいい。
「じゃあいいもんゲットしたってことで、先に進むぞ」
ルルーさんの掛け声とともに、俺たちは下に向かう階段を下った。
そして、ダンジョンボスと対峙した。
ダンジョンボスは大きな鳥の魔物だった。
やけに長い階段だな、なんて思いながら降りていたけれど、このフロアの壁をぐるりと囲むように設置されていたらしい。下に着いて扉を開けたら吹き抜けのフロアに広い面積がなお狭く感じるような大きな鳥がいた。
「よっしゃあああ!」
雄太たちが雄叫びを上げて、飛翔で飛び出す。
ルルーさんはよくわからない動きをして壁を駆けあがり、まんまるさんはナイフを取り出して投げ始め、フィットさんは魔法攻撃を始めた。
サラさんはニコニコと上空で戦っている人たちを見て、当たらないように魔法を飛ばし始めた。
手を出していないのは俺とトッポさんだけ。
「普通だったら鳥関係の魔物って苦戦するものですよね」
「まあなあ。今回は皆が鳥を叩き落とすまで俺の出番はないな。それまでのんびり待とうか」
「俺魔法攻撃は出来るけど、皆に当たらないようにっていうのがまず無理です」
「それはまあ、連携とか慣れてないとな。皆楽しそうだから大人しく見とけばいいよ」
きっと起爆剤を投げて魔法を使えばすごい魔法の柱が出来そうではあるんだけど、ここ縦長のフロアだから皆を巻き込むこと必至。正直大人数での戦闘に慣れてない俺は足手まとい以外の何物でもない。
ただただ上を見ていたら、雄太が落ちるように飛んできた。
「マック! マジックハイパーポーション!」
「はい」
手を差し出されたので渡すと、雄太はその場で一気飲みしてまた飛んで行った。MPが切れかけていたらしい。
少しすると今度はルルーさんが叩きつけられるように落ちて来たので走り寄ってハイパーポーションを渡す。
「サンキュ! うめえ! 全快したけどもう一本飲みたい!」
「また叩き落されたら飲めるよルルー!」
ルルーさんの叫びに投げナイフを次々投げていたまんまるさんが笑いながらツッコむ。
「よっしゃまた落ちる! それまでは頑張る!」
よくわからない気合いを入れて、またルルーさんが壁を駆けあがっていく。
「人間の動きじゃない……」
「ルルーはね、パルクールをするのが夢だったらしいの。だから、軽戦士を選んでるのよ」
「すごい。パルクールかあ」
「動画出してるから、今度見てあげて。コメント残すと泣いて喜ぶわよ」
「マジかすごい」
「あ、ナイフ切れちゃった。また安く仕入れないと。私も休憩ねー」
まんまるさんの声に、上にいる皆が「おー」と返してくる。
全然苦戦していないのが怖い。
「俺何もしてないんですけど」
「してるしてる。回復薬出してくれたら皆喜んじゃうよ。ちなみに私も喜ぶ!」
「あはい」
そっと差し出せば、目を輝かせてお礼を言われた。大事に取っておくとしまったまんまるさんは、ゆったりと上を見上げている。
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