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25、アラン様が可愛い
しおりを挟む帰ってきてまず案内されたのは、アラン様の横の部屋だった。
引っ越しはすぐに終わると言われた俺は、その部屋を確認してから案内してくれたサウスさんと共に執務室に向かった。もともと自分の荷物はそんなにないし、おめかし用の服は館の人たちが管理してくれているから部屋にはなかったので、引っ越しはとても楽だとサウスさんがニコニコと説明してくれる。この人も俺たちの強行軍に付き合ってくれたのに、まだまだ元気そうでほっとする。
「あのお部屋は今まで誰一人使ったことがなかった部屋でございます。無事旦那様の伴侶となるマーレ様をお迎えすることが出来て、安心いたしました」
隣を並んで歩くサウスさんが、しみじみとそんなことを言う。
今まで何度か婚約者候補という人が王宮から送られて来たらしいけれど、この地の雪深さと住みにくさに、ゲスト部屋から伴侶の部屋に移動する前に皆帰って行ってしまったらしい。馴染むこともなかったとサウスさんは遠い目をした。ちなみに平均滞在日数は一日だそうだ。
「何より、旦那様がわざわざここまでいらっしゃったご令嬢様方を伴侶に迎えたい、とおっしゃったことは今まで一度もなく……それが、旦那様自らマーレ様を伴侶にしたいと……とても喜ばしく思います」
涙を拭く仕草をしながらも、足はしっかりと動いているサウスさんに、苦笑が漏れる。
でもその笑いの半分以上は照れ隠しだ。
伴侶の部屋に入るということは、そういうことで。
寝室は旦那様と一緒でよろしいでしょうかと執務室直前で訊かれた時にはそのまま倒れそうになった。
待って。話の展開が早すぎる。
気持ちを二人で確認したのは王都に行ったときだよ。そこからなんやかんやで移動して、今日帰って来たばっかりだから。
火照る顔を押さえながら執務室に入ると、そこにはアラン様ともう一人が話し込んでいた。
「来たかマーレ。疲れているだろうしゆっくりして欲しいところだが、傭兵団長の者がマーレと打ち合わせをしたいんだそうだ。テレンは今移動先の村に向かっているから」
「はーいわかりました。担当のマーレ・コル・ヴィーダと申します。移動までに間に合ってよかった。当日は俺が付き添いに入るので、詳しい日程と行程を確認しましょう」
「スラスト傭兵団団長ゴウドです。よろしくお願いします」
丁寧な物腰で俺に手を差し出したゴウドさんと握手すると、アラン様が示した応接テーブルにゴウドさんを案内した。
移動前のあれこれは全てテレン室長に丸投げしてしまったけれど、子フェンたちが頑張ってくれたおかげで、移動自体の日程には間に合ったことに改めてホッとする。
当日通る道、どこで休むか、女子供の数、移動先の場所、危険な場所、前日の魔物駆除などなど、打ち合わせ内容は多岐に渡った。けれどゴウドさんはしっかりと把握していて、スムーズに話がまとまる。
移動開始前日の魔物駆除で落ち合う約束すると、俺はゴウドさんを見送ってからアラン様の所に向かった。
俺が横に立つと、アラン様は手を止めて俺を見上げた。
「なかなかしっかりした傭兵団のようだな」
「はい。うちの伯父さんの所を活動拠点にしている、伯父さんお墨付きの傭兵団を貸して貰ったんですよ」
「そうか。安心した。下手な所に頼むとゴロツキと変わりないような集団だったりするからな」
「そうですね。伯父さんがいい所を紹介してくれて助かりました」
最後にアラン様の判を貰おうと書類を出しながら答えていると、アラン様が書類ではなく俺の手を取った。
「ダメだな。マーレが私の気持ちに応えてくれたと思ったら、他の者との握手ですら我慢がならなくなってしまった……」
ゴウドさんと握手した手を、アラン様が同じように握る。
その行動を見て、俺は天を仰いで顔を空いている手の平で覆った。
嫉妬、嬉しいデス。
心臓に悪いです。
「……アラン様が可愛らしすぎて無理……」
俺の呟きは、執務室内に響きわたり、他の者たちの耳にもしっかりと入っていたようだった。物凄い生暖かい目で見られてしまった……
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