平凡次男は平和主義に非ず

朝陽天満

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24、皆に報告

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 特に俺たちのお咎めはなく、それどころか大分大金を手にして俺たちは王宮を辞した。
 俺が言いたかったことは全部親方が言ってくれた。頼りになる。
 子フェンたちも何か言いたそうだったけれど、さすがに陛下に「ヘンターイ」とか言い出したらヤバいので黙らせておいた。アラン様が。子フェンたちはアラン様の眷属になってるからね。
 第一王子から、後ほど謝罪金……じゃなくて謝礼金も届くらしい。やったね。
 帰りの馬車の中で親方を賛辞していたら、親方はフンと鼻を鳴らした。

「言葉よりこれが欲しいの」

 そう言って親方は、くいっとコップを傾ける仕草をした。酒ですね。

「もしかしたら今年の我が領の状況を追及されるかと思ったが、親方が話を逸らしてくれたから何もなかったな」
「追及……って、もしかして減税の嘆願書を出さなかったからとか?」
「ああ。我が領が昨年よりも潤っているのは、陛下も気付いているからな。なんだかんだ理由を付けて税金を引き上げられると思っていたが……」
「もう大丈夫じゃろうな。あれだけ釘を刺したんじゃ。あれでまた北のを追い詰めるようなことをすれば、今度こそヴィーダ家がそっぽを向くのはわかるじゃろ」
「本当になんと言葉を尽くして礼を言えばいいか……」

 アラン様が親方に頭を下げる。
 親方はやっぱり鼻を鳴らしてじろりとアラン様を見上げた。

「北のは、うちの主を喜ばせればそれでいいんじゃよ。あ、それと酒蔵を作る場所はくれ。開拓した麦畑の裏じゃ。主が頑張って人を集めてくれたでの。そろそろ移動も始まるころじゃろ」
「あいわかった」

 親方がニヤリとしながら軽口を言うと、アラン様は真面目な顔で返事をした。
 陛下にアラン様とのことを邪魔されなかっただけで大分喜んでるんだけど。
 そう呟けば、外からまた『マーレサマニブーイ』という声が聞こえて来た。
 一泊だけ家に泊まって、俺たちはすぐに北に帰った。
 もう民の移動が始まっているから。
 頼んだ傭兵はどんなものか、移動に不都合はないか、きちんと移動した後のことを把握しているか。
 一度は顔を出して確認したかった。
 傭兵に関してはそこまで心配していなかったけれど、俺たちが顔を出すのと出さないのとでは安心感が違うと思うんだ。
 そんな俺の思いを汲んでか、子フェンたちは行き以上に気合いを入れて帰路を走破してくれた。
 
「おかえりなさいませ、領主様」

 領事館で働いている人たちが俺たちを出迎えてくれる。
 アラン様と並んで皆の前に立つと、アラン様が徐に俺の腰に腕を回した。

「ヴィーダ家からは許可を得た。今日からマーレは私の伴侶として扱う様に。届けは近日中に提出する。陛下からも許可の言葉を頂いたので、何の問題もない」

 アラン様の言葉に、皆は驚くどころか、一様にほっとした顔をした。

「とうとうですか」
「ホッとしました」
「おめでとうございます」
「安心しました」

 口々に何やらおかしな言葉が零れてくる。
 何でホッとするんだ。何で安心するんだ。
 腑に落ちない。
 複雑な表情をしていると、アラン様が耳元で笑いながら教えてくれた。

「皆、私の気持ちを知っていたのだよ。マーレに懸想していることを」
「うえっ⁉ 懸想って……そ、え、皆に気付かれるような、行動してませんよね……?」

 驚いてアラン様を見上げれば、想像以上にアラン様の顔が近くて、頬に血が上っていく。

「私とずっと苦楽を共にしていた者たちにとっては一目瞭然だったようだ。ずっと一緒に行動し、晩酌は必ず誘う。マーレが来てから、私はよく笑うようになったとサウスにまで言われる始末だ」

 今までは視察も御者と二人だったからな、と囁かれ、俺は耐えられずに顔を手で覆った。
 確かに今まで誰も誘わなかったのにずっと一緒に行動するようになった、そう思われてもおかしくないよ。
 
「領民の移動が無事住んだら、街を上げての祝いをしようか」
「規模大きすぎでしょ!」
「そんなことはない。領主の慶事だ。祭りでもするか」
「もうちょっと俺が見栄えするような見た目だったら全然問題ないんですけどね……」

 見目麗しいアラン様の隣にいるのが俺なんて、改めて考えると絵面的によくないんじゃ、なんて考えていたら、アラン様がクスリと笑った。

「マーレの顔は可愛い。確かにマーレの兄上殿も弟殿も見目麗しいが、マーレには可愛らしさと愛嬌がある。何より笑った顔がとても無邪気で無条件に可愛がりたくなるし、皆つられて笑顔になる。そこがいい、と私は思う」

 アラン様は柔らかい笑顔を浮かべて、そんな言葉を並べ始めた。
 だからアラン様は俺をよいしょしすぎですって!
 照れてしまってアウアウしていると、くるりと向きを変えられて、アラン様の正面に立たされた。勿論腕は腰のままなので、抱き締められる格好になる。

「陛下に疎まれる私を、このように好いてくれる者など現れないと思っていたけれど、マーレに無邪気に慕われて、とても嬉しかった。大事にしたかった。だからこそ、こんな過酷な土地に来ることを心苦しく思った。それでも、来てくれた時はとても嬉しかった。マーレ……」
「はい……」
「マーレが来るまでは腐っていたような、情けない私でもいいだろうか。マーレの伴侶になる資格はあるだろうか」

 まっすぐと俺を見るアラン様の瞳には、情けない顔つきの俺が映っていた。
 ダメなわけない。
 第一王子から助けてくれた時から、そして、穏やかな手紙のやり取りで、ここに来てからは温かい気遣いで、少しずつアラン様への想いは募っていったんだ。俺なんかでいいのかな、なんて思いながら。
 兄さんたちのような麗しい見目じゃなくていいのかって。
 でも兄さんたちとも交流しているのに、アラン様は俺を選んでくれた。
 特筆した何かがあるわけじゃないのに。

「嬉しい、です。大好きです」

 言葉にすれば、その言葉が気持ちに宿り、更に想いが溢れてくる気がする。
 俺の言葉に、アラン様はホッとしたような笑顔で俺の額にキスをした。
 
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