最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

朝陽天満

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御子誕生編

思わぬ人物の名前が出てきたぞ……

 見あげた兄様は、何やら目にハイライトがなくて、思いつめたような表情になっていた。
 ううう、闇落ち兄様も最高に素晴らしい……。でもなんで? 

「アルバは、本当にすごいことをやってのけたんだと自覚して……? 本当に、誰かに知られたら取られちゃうかもしれないからこの部屋にずっと閉じこめてただ僕だけを見ていて欲しいくらいだよ……」
「うえええ兄様……? 兄様の部屋にずっと閉じ込められて一緒にいるなんてどんなご褒美ですか……?」
「アルバ、オルシス、ちょっと冷静になろうか」

 闇落ちしそうな雰囲気の兄様にうっとりしていると、義父がストップをかけてくれた。

「幸いにして、アルバのその能力は私とオルシスとアルバ自身しかわからない。これは……フローロとルーナに伝えるのすら時期を考えないといけないかもしれないね……ブルーノには伝えよう。ただ、王宮には、たとえ陛下でもお伝え出来ない能力だね」

 ふ―……と重々しく溜息を吐いた義父は、けれど俺達を安心させるように微笑んだ。

「アルバ、君は、決してポンコツなんかじゃないよ。ただ、その類稀な能力を、私たちは絶対に私利私欲では使いはしないから」

 義父の言葉に、胸がじんわり温かくなる。
 むしろ俺が今まさに私利私欲のために使っちゃってるんだけどね!
 これは家族の私利私欲のためならためらいなく使うけれども。だってこれでもし悪いことが回避できるなら、それに越したことはないもん。

「……アルバがどんな光景を視ているのか、僕には知ることが出来ないのは辛いな」

 兄様の呟きに、俺は後ろめたくて視線を逸らした。
 私利私欲で、兄様のスチルを網羅したいと思っちゃったんだけど、あれを兄様と視覚共有しちゃったりしたらドン引き案件間違いなしだよね……気持ち悪いやつとか言われたら、流石に兄様のすべてを全肯定の俺でも立ち直れない。
 兄様のスチルを眺めてはえへへあははしてたりしたら本当に気持ち悪いと思うんだよ……

「視えない方がいいです。絶対に」

 あの笑わないオルシス様を兄様が視てしまったらいったいどう思うのか。あっちは俺が消えたいわば別世界だから、皆が皆全然違う状態なわけだ。それを言ったらミラ妃殿下だって、ゲームとは全く違う。最初から全く違っていた。本当にこの人が主人公? ってくらい。ゲームでの主人公は俺にとって好感度は地の底をいっていたからね。それなのにミラ妃殿下はカラッとしていて誰よりも男ま……げふんごふん、いい人で、好感度は爆上がり状態。
 レガーレはまだ見つかったばかりで、今まさに研究を始めようという状態。そこにブルーノ君はほぼ関わっていなかった気がする。だって宰相補佐してて、ヴァルト家の後継者だったし。
 そんな状態のオルシス様とブルーノ君の距離感を兄様が視てしまったら、どう思うのか。
 ああああやっぱり見せられない。あの義父の冷たいまなざしをずっと受け続けてきたオルシス様を見せるなんてどんな罰ゲーム……

「でも一番肝心な閣下に声をかけた人の姿は視えなかったですし、そこから先もわからないですし……」

 あのアルバムに新たなメモリーが追加されているのかも、発動してみないとわからないわけで。
 一人でアルバムを視ようと思ったら絶対にタップしてしまう自信があるので、魔力の減り具合からして発動もそんな簡単に出来るわけもない。

「せめて、黒幕だけでもわかればって思ったのに……」
「そうだね、でも、今日はもう終わり。魔力がちゃんと回復したら、また僕と一緒に試してみよう」
「はいい……」

 がっかりしながら口の中でレガーレ飴を転がした。



「……という感じでした」

 ブルーノ君を兄様の部屋に呼んで、さっきのことを三人でブルーノ君に伝えた。
 ステファノ殿下はただいまねんね。発作も起こさずにルーナの子守歌でご機嫌なまま寝ちゃったらしい。よかった。ルーナも立派なお姉ちゃんだね。その光景を見たかったなあ……
 母がその場で様子を見ていてくれるからブルーノ君もこっちに来ることが出来たんだけど。
 ブルーノ君は詳細を聞き、目元を指でぐりぐりしながら疲れの滲ませた表情になった。
 俺をじっと見て、指を指す。

「規格外」

 そんなことないよね、と兄様と義父を交互に見ると、二人ともうんうん頷いていた。

「ところでアルバ、その茶葉の袋ってどんなんだったか憶えてるか?」
「茶葉の袋……? ええと、確か白い紙の袋に入っていた気がします。横側に茶色のラインが入っていて……どこの茶葉だったかは言ってなかったような……」

 ブルーノ君はスッと目を細めた。

「それ、多分俺が『青の結晶』を間違えて飲んじまった時に淹れた茶葉の袋だ。まあそれに毒が入っていたわけじゃなかったし、ツヴァイト閣下の差し入れっていわれたから淹れたんだが……実は側近の差し入れで、しかも閣下が持ってきたわけじゃなく……? 身体が温まる茶……? いや、あれはそんな効能のある茶葉じゃなかったぞ。たしか東側のラングル伯爵領産の胸がすっきりするハーブを混ぜた茶葉だったはず」

 義父がブルーノ君の言葉に反応する。

「ラングル伯爵領か……あそこにはかなり珍しい薬草を特産としている街があったはず……そこを治めているのが」

 うむむと考えてから、顔を上げた。

「「アルトモント子爵家」」

 義父とブルーノ君の声が重なる。

「アルトモントとは……? どこかで聞いたことのあるような……」

 俺が首を捻っていると、兄様とブルーノ君がそっと教えてくれた。

「ほら、リコル先生の代わりに養護教諭になった先生がいるだろ。あの先生の実家だよ。前に話題に出ただろ。な、オルシス」
「そうだね。嫡男が病弱で、次男が後継になる予定だったのが、嫡男の体調がよくなり、すんなり兄が後継に決まって、実は地魔法が得意だった次男が兄に毒を盛っていたのではという話が出て、一時期揉めた家だよ」

 あー、そうだった。俺の記憶力が一番の問題だった。

「あれ、でもあれは冤罪だったんですよね? だからこそロッソ先生は学園にいるんでしょうし」

 そうじゃなかったら学園に入れるなんて絶対にしないよね。
 そう呟いたら、義父がうんうん頷いた。

「そうだね。でも、あの家はそのロッソ氏が家を出てから薬草の質が下がってしまって、もううちでは取引をしていないんだよ。ロッソ氏が後継だと言われていた時は、とてもいい薬草を育てていて、うちでもよく取引をしていたんだけれど。あの薬草は東の気候でしか育たないから」
「この温室で育てようと思って失敗しましたからね。でもあの薬草が切れたら解毒薬の約四分の一種類くらいは作れなくなるので、国としては痛手ですよね」
「ブルーノの言うとおりだ。いっそのことロッソ氏がそのまま継げばよかったんだが……子爵夫妻は病弱の兄を可愛がっていたというからね」

 なるほど……

「って、今回の王宮の事件とは全く関係ない話でしたね……」

 やっぱり俺は視るメモリーを間違えたってことかな。
 もう一回って言われても、兄様の魔力まで使い果たさせているし、俺の魔力もすっからかんだし今日は無理だよね……むしろそのピンポイントで視たいものを視れるって思うこと自体がダメなのかもしれない。今までだって意図してみたいものを視れたためしはなかったんだし。
 溜息を吐いた途端、兄様が「そうでもないんだよ」と首を横に振った。
 
 
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