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3章 猛花薫風事件
9. コラボのちお悩み相談
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ヨミからコラボ配信の誘いを受けたペリ。
悩んだものの、結局コラボすることになった。レヴリッツやリオートとのコラボはできないが、ヨミだけなら可能。基本的にソロ配信のスタイルを貫くペリにしては珍しいことであった。
今回ヨミがペリを誘ったのは、単純に先輩のことをもっと知りたいという理由から。同じ空間でゲームや雑談をすることにより、ペリの本質をもっと理解できるのではないかと思ったのだ。
「んー! 楽しかったー!」
ヨミも初のコラボ配信で不安だったが、問題なく終えることができた。
彼女が最も驚いたのは、ペリのプロ意識の高さ。ペリは限りなく変人なのに、一定のラインは超えずに視聴者のヘイトを巧みに管理している。
ただの変人であるヨミも見習わないといけない。二人は配信機材を片づけながら雑談をしていた。
「シュッシュセンパイ、ありがとうございました! 色々と勉強になることが多かったです!」
「え、私なんか教えましたっけ……ひたすら雑談してた覚えしかないですけど。そもそも配信で話したこととか、ほとんど記憶にないんすよね。
いやーそれにしてもコラボなんて久々にしました。私、アマチュア界じゃぼっち系パフォーマーで有名なんで」
「センパイはどうして孤高なんですか?」
「別に嫌われる立ち回りはしてないんですけどね。何というか……私の才能が高すぎて周りがついて来れないんでしょうねーフハッハハ……スー、最近ヨミさんの同接はどう? 伸びた? 伸びない? 」
「んぇー……理由はわからないですけど、なんか伸びてる気がします。不思議ですねー」
87期生の中で、ヨミは順調な伸びを見せている。早々に引退していく者もいる中、彼女は安定を見せているのだが……レヴリッツのように突出した強さがあるわけでも、リオートのように高貴な身分を持っているわけでもない。
「単純に萌えっすよ萌え。今は順当に人を集めて、最終的には自分のスタイルを確立すべしでし。
私は基本ソロで男性パフォーマーと絡まずに視聴者囲ってますけど、ヨミさんなら歌や雑談とか、他の方面で伸びるポテンシャルがあると思います。ワイトもそう思っています」
「なるほど……? 歌は好きです! 配信スタイルは……レヴと話せなくなるのは嫌なので、男性と共演NGにはしたくないですね」
「そうですね。プロ級には異性の視聴者を囲ってる人が多いんですけど、マスター級になると万人に受け入れられる配信をしている傾向にあるんですよねえ。
まあ、大衆を引き寄せる才能があってこそですけど」
「ふーん……」
ヨミは未だに自分の道を考えていない。
とりあえずバトルパフォーマーになっただけ。なんか成功してるし、なんか面白くなってきた。万年レヴリッツのストーカー紛いの彼女だが、今なおその想いは変わっていない。レヴリッツがバトルパフォーマーになるから彼女もなったのだ。
「ねえシュッシュセンパイ、センパイは何を望んでいるんですか?」
唐突に、されど熟慮の末にヨミは尋ねた。今なら聞ける気がする。
なんとなくペリのことがわかってきたのだ。
ペリシュッシュ・メフリオンが望んでいるのは『救い』かもしれない。他人に悩みの種は話さないが、いつか『その機会』が訪れるのを待っている。
ヨミの問いに対して、ペリは不意を突かれて静止。抽象的な問いを頭の中で咀嚼し、「何のためにバトルパフォーマーをやっているのか」と問われたと理解した。
「私のスタイルを見ていたら、パフォーマーではなくストリーマーをやればいいんじゃないかって……そう思いますよね。碌に大会にも参加せず、パフォーマーの頂点も目指さず、王にもなれず何も得ず。
……たぶんヨミさんと同じですよ。最終的に目指す場所が見えていないんです」
「センパイはデビューした当時、やる気に満ちていたってトシュアセンパイが言ってましたよね。上を目指すのは諦めたんですか?」
「ああそれですペリ。That's right.
昇格できない理由があるからパフォーマーを諦めなきゃいけないのに、ちょっと未練が残っている。だって私、プロ級に推薦されるくらい素質があったんですよ? なのにやむを得ない理由で昇格できなくなって……引退に踏み切れずにいるんです。それにしても不思議ですね……ヨミさんには私の苦悩をすらすらと吐き出せます」
ヨミの会話は尋問誘導に近かった。
いつ、どこでヨミの会話の技能が培われたのか……人の苦悩を曝け出させることには自信がある。
「──センパイには打算的な行動原理があります。パース定規のようにしっかりしてて、イーゼルのようにきっちりしてます。
アマチュア級に留まっていればプロ級で挫折しないのは当然です。シュッシュセンパイが自分をかわいいと思っているのも正解です。自分のかわいさを利用してお金を稼げるのも才能です。私はそんな人間性あふれる打算が大好きです」
──ヨミの目には、ペリの全てが視えていた。見透かしていた。
それを知っていてなお、彼女はペリの内面が好きだと言う。ペリからすれば、それはおかしい。
自分の内面など知られれば絶交ものだと、ペリは自覚していた。この内面を知ってなお、彼女を好く者がいるとすれば、それは。
「……狂人、ですよ。私を好きだなんて」
「よく言われますよ、レヴに『君は頭のおかしいやつだ』って。
レヴの方がおかしいと思いますけど。私は、常に真実を見たいんです」
「……真実?」
「なんて言えばいいのかわかんないんですけど。
例えばほら、芸術品の価値って誰が決めてるんでしょう? 俗に名作と呼ばれる絵画を見ていても、どこに価値があるのかわからない時ありませんか?」
ヨミの目は美しい真紅。まるでルビーの宝石のようだ。
彼女の双眸はたしかに光を捉えている。されど、見ているものと、視えているものは違う。
「まあ……そうですね。正直、権威のある宗教の絵とかよりもラノベの萌絵の方が好きです。あと私、結構ふざけながらお話してますけどこれ真面目モードになった方がいいですかね? 真剣な芸術談義ですかね?」
ペリの言葉が聞こえていないかのように、ヨミは語りを続ける。
「ある日、レヴが教えてくれました。そして知ったんです、現実を。
世界の色はこんなに美しくて、鮮やかで。光は眩しくて、闇は暗くて。
空気に色はなくて、足元は思ったよりオウトツがなくて。
人間はこんなに気持ち悪い容姿で。私もまたその中の一人でした。
……ふと思ったんです。私は何もわかっていない時の方が、ただしく物事を理解していたんじゃないかって。まるで未完成の絵です、この世界は。不完全な世界に取り残されたみたい……」
彼女は二つの世界を持っていた。
真実は、どちらに在るのか。あるいは、どちらにも在るのか。
「はえーすっごい……え、どゆこと?」
「シュッシュセンパイの心も、なんだか芸術品みたいだって思ったんですよ。
乖離したテーマを持っていて、なかなか俗人には見通せないので」
「……つまり、こういうことですか。私の心はとっくにヨミさんに見透かされている、と。そういえば、レヴリッツくんがヨミさんは人の心の流れを読めると言っていましたね」
「そうです、心は嘘を吐きません。表面上の嘘は吐けても、真実は変わりません。
シュッシュセンパイは、本当に自分を諦めたいですか? バトルパフォーマーとして大成したくないですか? センパイの心は……渇望を抱えていると思うのです。
ねえ、センパイのお悩み……私に聞かせてもらえませんか?」
ペリは俯いていた。
ヨミの言葉の意を完全に汲み取れたわけではない。普段はアホのヨミが、急にここまで哲学的な話をすると混乱する。
だが、彼女ならば。ヨミならば自分の懊悩を解消してくれるのではないか。今まで誰に相談しても、誰に頼っても解決できなかった悩みが。
彼女は意を決して口を開いた。
「私は──お金がほs、じゃない。私には、寝たきりの妹がいるのです。たった一人の大切な家族です。
妹は原因不明の呪いに侵されているらしく、生命を維持するためには莫大なお金が必要でした。だから私は安定的な収入を手放すわけにもいかず、リスクのある昇格を行うことができないのです。
あらゆる方法で妹を目覚めさせようとしてきましたが……駄目でした。何をやっても、無駄だったのです」
「……なるほど。きっと話すのもつらかったと思います。でも、話してくれてありがとうございます」
「いえ、私もヨミさんに話せて少し楽になりました。これで解決するわけじゃないですけど……話せてよかったペリ。最近は金欠極まってストレス溜まってたんで……私はこれで失礼します。一方的に悩みをぶちまけても先輩としてアレなんで、今度はヨミさんの悩みを聞きますよ。またコラボしましょう」
「はい! ぜひまたコラボしましょう!
……あ、夜ご飯一緒に食べませんか? 金欠らしいので私が奢りますよ!!」
「そ、そんな申し訳ない……あーありがとうございます!!
明日からより一層仕事を頑張って、成果を上げられるよう精進いたしますヨミ様へのご恩を仕事でお返しできるよう、頑張ります!!!!!」
「……ふふっ、じゃあ行きましょう!」
ヨミはペリの手を取って、寮の外へ駆け出して行った。
ー----
「…………」
レヴリッツはイヤホンを外し、ため息をつく。
「悪いねヨミ。女の子の部屋に盗聴器を仕掛けるなんて悪いけど……ありがとう」
ヨミとペリの会話を彼は盗聴していた。盗聴器を仕掛けたのは、二人のコラボ配信が告知された直後。きっとヨミはペリの悩みを聞き出すだろうと……そのような確信があったのだ。
ペリはもちろん、ヨミも盗聴されていることを知らない。
レヴリッツは着物を脱ぎ捨て、立てかけてあった黒い外套を羽織った。彼が祖国で竜殺しではなく、人殺しをしていた時の衣服。
ここからは彼の仕事だ。
悩んだものの、結局コラボすることになった。レヴリッツやリオートとのコラボはできないが、ヨミだけなら可能。基本的にソロ配信のスタイルを貫くペリにしては珍しいことであった。
今回ヨミがペリを誘ったのは、単純に先輩のことをもっと知りたいという理由から。同じ空間でゲームや雑談をすることにより、ペリの本質をもっと理解できるのではないかと思ったのだ。
「んー! 楽しかったー!」
ヨミも初のコラボ配信で不安だったが、問題なく終えることができた。
彼女が最も驚いたのは、ペリのプロ意識の高さ。ペリは限りなく変人なのに、一定のラインは超えずに視聴者のヘイトを巧みに管理している。
ただの変人であるヨミも見習わないといけない。二人は配信機材を片づけながら雑談をしていた。
「シュッシュセンパイ、ありがとうございました! 色々と勉強になることが多かったです!」
「え、私なんか教えましたっけ……ひたすら雑談してた覚えしかないですけど。そもそも配信で話したこととか、ほとんど記憶にないんすよね。
いやーそれにしてもコラボなんて久々にしました。私、アマチュア界じゃぼっち系パフォーマーで有名なんで」
「センパイはどうして孤高なんですか?」
「別に嫌われる立ち回りはしてないんですけどね。何というか……私の才能が高すぎて周りがついて来れないんでしょうねーフハッハハ……スー、最近ヨミさんの同接はどう? 伸びた? 伸びない? 」
「んぇー……理由はわからないですけど、なんか伸びてる気がします。不思議ですねー」
87期生の中で、ヨミは順調な伸びを見せている。早々に引退していく者もいる中、彼女は安定を見せているのだが……レヴリッツのように突出した強さがあるわけでも、リオートのように高貴な身分を持っているわけでもない。
「単純に萌えっすよ萌え。今は順当に人を集めて、最終的には自分のスタイルを確立すべしでし。
私は基本ソロで男性パフォーマーと絡まずに視聴者囲ってますけど、ヨミさんなら歌や雑談とか、他の方面で伸びるポテンシャルがあると思います。ワイトもそう思っています」
「なるほど……? 歌は好きです! 配信スタイルは……レヴと話せなくなるのは嫌なので、男性と共演NGにはしたくないですね」
「そうですね。プロ級には異性の視聴者を囲ってる人が多いんですけど、マスター級になると万人に受け入れられる配信をしている傾向にあるんですよねえ。
まあ、大衆を引き寄せる才能があってこそですけど」
「ふーん……」
ヨミは未だに自分の道を考えていない。
とりあえずバトルパフォーマーになっただけ。なんか成功してるし、なんか面白くなってきた。万年レヴリッツのストーカー紛いの彼女だが、今なおその想いは変わっていない。レヴリッツがバトルパフォーマーになるから彼女もなったのだ。
「ねえシュッシュセンパイ、センパイは何を望んでいるんですか?」
唐突に、されど熟慮の末にヨミは尋ねた。今なら聞ける気がする。
なんとなくペリのことがわかってきたのだ。
ペリシュッシュ・メフリオンが望んでいるのは『救い』かもしれない。他人に悩みの種は話さないが、いつか『その機会』が訪れるのを待っている。
ヨミの問いに対して、ペリは不意を突かれて静止。抽象的な問いを頭の中で咀嚼し、「何のためにバトルパフォーマーをやっているのか」と問われたと理解した。
「私のスタイルを見ていたら、パフォーマーではなくストリーマーをやればいいんじゃないかって……そう思いますよね。碌に大会にも参加せず、パフォーマーの頂点も目指さず、王にもなれず何も得ず。
……たぶんヨミさんと同じですよ。最終的に目指す場所が見えていないんです」
「センパイはデビューした当時、やる気に満ちていたってトシュアセンパイが言ってましたよね。上を目指すのは諦めたんですか?」
「ああそれですペリ。That's right.
昇格できない理由があるからパフォーマーを諦めなきゃいけないのに、ちょっと未練が残っている。だって私、プロ級に推薦されるくらい素質があったんですよ? なのにやむを得ない理由で昇格できなくなって……引退に踏み切れずにいるんです。それにしても不思議ですね……ヨミさんには私の苦悩をすらすらと吐き出せます」
ヨミの会話は尋問誘導に近かった。
いつ、どこでヨミの会話の技能が培われたのか……人の苦悩を曝け出させることには自信がある。
「──センパイには打算的な行動原理があります。パース定規のようにしっかりしてて、イーゼルのようにきっちりしてます。
アマチュア級に留まっていればプロ級で挫折しないのは当然です。シュッシュセンパイが自分をかわいいと思っているのも正解です。自分のかわいさを利用してお金を稼げるのも才能です。私はそんな人間性あふれる打算が大好きです」
──ヨミの目には、ペリの全てが視えていた。見透かしていた。
それを知っていてなお、彼女はペリの内面が好きだと言う。ペリからすれば、それはおかしい。
自分の内面など知られれば絶交ものだと、ペリは自覚していた。この内面を知ってなお、彼女を好く者がいるとすれば、それは。
「……狂人、ですよ。私を好きだなんて」
「よく言われますよ、レヴに『君は頭のおかしいやつだ』って。
レヴの方がおかしいと思いますけど。私は、常に真実を見たいんです」
「……真実?」
「なんて言えばいいのかわかんないんですけど。
例えばほら、芸術品の価値って誰が決めてるんでしょう? 俗に名作と呼ばれる絵画を見ていても、どこに価値があるのかわからない時ありませんか?」
ヨミの目は美しい真紅。まるでルビーの宝石のようだ。
彼女の双眸はたしかに光を捉えている。されど、見ているものと、視えているものは違う。
「まあ……そうですね。正直、権威のある宗教の絵とかよりもラノベの萌絵の方が好きです。あと私、結構ふざけながらお話してますけどこれ真面目モードになった方がいいですかね? 真剣な芸術談義ですかね?」
ペリの言葉が聞こえていないかのように、ヨミは語りを続ける。
「ある日、レヴが教えてくれました。そして知ったんです、現実を。
世界の色はこんなに美しくて、鮮やかで。光は眩しくて、闇は暗くて。
空気に色はなくて、足元は思ったよりオウトツがなくて。
人間はこんなに気持ち悪い容姿で。私もまたその中の一人でした。
……ふと思ったんです。私は何もわかっていない時の方が、ただしく物事を理解していたんじゃないかって。まるで未完成の絵です、この世界は。不完全な世界に取り残されたみたい……」
彼女は二つの世界を持っていた。
真実は、どちらに在るのか。あるいは、どちらにも在るのか。
「はえーすっごい……え、どゆこと?」
「シュッシュセンパイの心も、なんだか芸術品みたいだって思ったんですよ。
乖離したテーマを持っていて、なかなか俗人には見通せないので」
「……つまり、こういうことですか。私の心はとっくにヨミさんに見透かされている、と。そういえば、レヴリッツくんがヨミさんは人の心の流れを読めると言っていましたね」
「そうです、心は嘘を吐きません。表面上の嘘は吐けても、真実は変わりません。
シュッシュセンパイは、本当に自分を諦めたいですか? バトルパフォーマーとして大成したくないですか? センパイの心は……渇望を抱えていると思うのです。
ねえ、センパイのお悩み……私に聞かせてもらえませんか?」
ペリは俯いていた。
ヨミの言葉の意を完全に汲み取れたわけではない。普段はアホのヨミが、急にここまで哲学的な話をすると混乱する。
だが、彼女ならば。ヨミならば自分の懊悩を解消してくれるのではないか。今まで誰に相談しても、誰に頼っても解決できなかった悩みが。
彼女は意を決して口を開いた。
「私は──お金がほs、じゃない。私には、寝たきりの妹がいるのです。たった一人の大切な家族です。
妹は原因不明の呪いに侵されているらしく、生命を維持するためには莫大なお金が必要でした。だから私は安定的な収入を手放すわけにもいかず、リスクのある昇格を行うことができないのです。
あらゆる方法で妹を目覚めさせようとしてきましたが……駄目でした。何をやっても、無駄だったのです」
「……なるほど。きっと話すのもつらかったと思います。でも、話してくれてありがとうございます」
「いえ、私もヨミさんに話せて少し楽になりました。これで解決するわけじゃないですけど……話せてよかったペリ。最近は金欠極まってストレス溜まってたんで……私はこれで失礼します。一方的に悩みをぶちまけても先輩としてアレなんで、今度はヨミさんの悩みを聞きますよ。またコラボしましょう」
「はい! ぜひまたコラボしましょう!
……あ、夜ご飯一緒に食べませんか? 金欠らしいので私が奢りますよ!!」
「そ、そんな申し訳ない……あーありがとうございます!!
明日からより一層仕事を頑張って、成果を上げられるよう精進いたしますヨミ様へのご恩を仕事でお返しできるよう、頑張ります!!!!!」
「……ふふっ、じゃあ行きましょう!」
ヨミはペリの手を取って、寮の外へ駆け出して行った。
ー----
「…………」
レヴリッツはイヤホンを外し、ため息をつく。
「悪いねヨミ。女の子の部屋に盗聴器を仕掛けるなんて悪いけど……ありがとう」
ヨミとペリの会話を彼は盗聴していた。盗聴器を仕掛けたのは、二人のコラボ配信が告知された直後。きっとヨミはペリの悩みを聞き出すだろうと……そのような確信があったのだ。
ペリはもちろん、ヨミも盗聴されていることを知らない。
レヴリッツは着物を脱ぎ捨て、立てかけてあった黒い外套を羽織った。彼が祖国で竜殺しではなく、人殺しをしていた時の衣服。
ここからは彼の仕事だ。
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