忘れじの契約~祖国に見捨てられた最強剣士、追放されたので外国でバトル系配信者を始めます~

朝露ココア

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4章 咎人綾錦杯

1. Oathのガチ

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『【Intense Flash】絶対ふざけずにガチ攻略!!ガチ!!【Oath】』


 じめじめとした暗澹あんたんの地下遺跡。
 仮想空間の異世界に怒号が響く。

 「前方、2スペースに牙狼! 左方、3スペースに大鬼!」

 「レヴリッツ、前は任せる! 一片氷心──『氷縛』!」

 リオートの氷の枷が、左方から迫る魔物を縛る。

 「二人とも、下がって!」

 即座にリオートが飛び退き、弱点をあらわにした大鬼を穿つ。
 同時、レヴリッツが陽動した牙狼をヨミの銀矢が穿った。

 「オーケー」

 〔ないすー!〕
 〔順調だな〕
 〔やっぱOathは安定感あるね!〕
 〔これはガチ攻略〕

 先頭を歩くレヴリッツが合図を出し、Oathの四人は戦闘態勢を解く。
 今、彼らは『Intense Flash』に挑戦していた。このVRゲームは、以前ペリを除いた三人で挑戦したのだが……何の成果も得られずに終わってしまった。

 今度はペリや視聴者からガチガチなアドバイスを受け、装備を整え、知識を蓄え、こうしてリベンジに臨んでいた。

 現在、彼らは第2階層に居る。アマチュア級ならば第5階層を攻略できればかなり優秀な部類。しかしレヴリッツはこのメンバーならば第8階層までは難なく攻略できると考えていた。

 「いける、いけるね! われらOathに敗北はないのだ!」

 「おいヨミ! 声がでけえ……敵が来るぞ!」

 「リオートくんもうるせぇですよ」

 〔草〕
 〔うるせぇ!〕
 〔いつもうるさいよねこの人達w〕
 〔草〕
 〔ガチ攻略~?〕

 地下洞窟にヨミとリオートの大声が響き渡る。
 ペリは混沌としたチームの中で、どうにか統率を取ろうと奮闘していた。個人配信ならばネタキャラのペリが、ここまで常識人と化すとは……Oathは恐ろしい。

 交流関係を一気に広げたペリは、これまでのソロ配信では得られなかった見地を数多く得た。

 「はは……2階層のうちは油断しても大丈夫だけど、4階層以降は気をつけろよ。
 しかし僕の役割が多いな……」

 例えば、意外とレヴリッツが真面目だとか。
 今までペリは、彼を戦闘狂だと思い込んでいた。しかし彼は人気を獲得しようとしているだけで、根は普通(?)の感性を持った人間なのである。

 レヴリッツは愚痴をこぼす。
 彼の役割は先頭で罠をチェックすること、敵の気配を察知すること、そしてカメラを回すこと。
 彼の瞳から透明な円環が浮き上がり、それが四人の攻略をリアルタイムで映して配信している。

 アマチュアパフォーマーでトップ層の三人と、プロ級のペリ。
 注目度はそれなりに高く、視聴者数は15000人程度。ほとんどがペリのファンだが、ここから他三人に流れる可能性もある。

 これが第10階層以降の攻略となれば、かなり注目度は高まることだろう。10階層から15階層がプロ級レベル、16階層から30階層がマスター級レベルの階層。三人がアマチュア級のOathがプロ向けの階層に挑めば、話題になること間違いなし。

 「あ、敵が寄って来た。前方3スペースに小鬼。これは僕がやるよ」

 レヴリッツの刀から伸びた雷糸が、猪突猛進してくる小鬼の前に張られる。
 小鬼は糸に気づかず、そのまま突っ込んで身体を両断された。

 〔ひえー〕
 〔グロw〕
 〔このゲームリアルすぎよな〕
 〔エビいいぞ!〕

 「おぉー、やりますね。レヴリッツくんは魔物の相手にかなり慣れている感じがします」

 「ええ、まあ……竜殺しの経験が生きてるんですかね?」

 事実、彼の竜殺しの剣術は巨躯が多い魔物相手に有利。
 その剣術で、人間であるバトルパフォーマーを相手しているのが異常なのだが。

 「そろそろ突き当りだよ。あの大扉の向こうに広大な空間を感じるから……たぶんフロアボスだね」

 ヨミが目の前の大扉を見つめて呟いた。
 彼女は空間認識能力が極めて高く、ダンジョン内で迷うことはまずあり得ない。また、暗闇内でも自由に動けるという特性を持っていた。
 次階層へつながる扉の前には、フロアボスと呼ばれる強力な敵が存在する。

 「じゃあ突入するよ。リオート、氷盾はまだ温存しておいてくれ。魔力は使いすぎないように」

 「おう」

 変わらず先頭はレヴリッツ。
 彼は冷たい扉に手を当て、一呼吸。そして合図を出して一気に開け放った。

 「ファーストストライク!
 龍狩たつがり──《紫電閃風》ッ!」

 フロアボスは下級妖魔。
 認識したと同時に、レヴリッツは刀を鞘から抜く。敵が反応する暇もなく、すさまじい電撃が駆け抜ける。
 雷閃、妖魔の半身を裂く。しかし妖魔は再生を試み……

 「『ムキダシノシンリ』──分かたれたのね、【俎上そじょうのいのち】」

 ……失敗。
 ヨミの能力が敵の傷を固定化し、再生を不可能にした。レヴリッツは彼女の挙動をわかっていたかのように、残る妖魔の半身を斬り刻んだ。

 「撃破っ!」

 〔¥ 10,000
 ナイスー!!〕
 〔つえええええww〕
 〔低層の攻略は余裕だな〕
 〔ヨミの能力相変わらず意味不明で草〕
 〔うまいぞ連携〕

 フロアボスの下級妖魔は霧散し、塵と消える。
 リオートとペリは彼らの動きに合わせるまでもなく、攻略は完了した。

 「まったく……俺らの見せ場も用意しろよ」

 「でも、魔力を温存できるのはありがたいですね。深層になれば私たちも活躍の場が出てくるでしょうし」

 「そうそう。ただ……リオートもペリ先輩も、罠にだけは注意してね。次層から罠が激増するから」

 次はアマチュア殺しとして名高い第3層。
 罠が急増、敵が急激に強化。おまけに探索領域が数倍に広がり、攻略は一気に難しくなる。

 「よし、次に行こー!」

 フロアボスを倒したことで開いた扉にヨミが入る。
 続いてレヴリッツ、ペリ、リオートと続いて行った。
 中間エリアで休息を取り、一行は次なる階層へ。

 ー----

 「うわ、海岸か」

 次階層は海岸。
 VRにおけるランダム生成のダンジョンは、時によって気分を変える。
 挑戦者に優しい異世界もあれば、厳しい異世界も。
 今回レヴリッツたちが挑戦する海岸は、かなり厳しい部類に入る。次階層に入るや否や、ペリが真っ先にレヴリッツに尋ねた。

 「レヴリッツくん! 海岸での注意事項を述べるのです!」

 「はい! まず、海中からの奇襲攻撃に注意! 罠が砂に隠れていて見つけづらいので注意! 熱中症に注意! 毒を持つ魔物が多いので注意!
 あと、水着はいらない!」

 「正解です!」

 〔毒消し持った?〕
 〔水着はいるだろ怒〕
 〔ペリち熱中症ってゆっくり言って〕
 〔水着不要、納得できません不正解〕
 〔水着の霊圧が消えた……〕

 こうしたマップの種類毎の注意事項の確認は必須である。
 お互いが忘れていた注意事項を思い出すこともできるのだ。それぞれ頷き合い、歩みを進める。
 ……と同時に、レヴリッツは砂に隠れた黒い床を発見。

 「あ、ちょっと待った。さっそく1スペース前に罠がある。これは……強制転移の罠だね」

 四人全員がエリア内のどこかに転移する罠。
 最悪単身で敵に囲まれる上に、大体は出口から遠い場所に飛ばされるクソ罠。

 「わざと踏んでみようぜ」

 「やめろアホ。遊びじゃねえんだぞ」

 罠を踏み抜こうとしたレヴリッツの首根っこをリオートが掴んで引き戻す。

 「ゲームなんだから遊びみたいなもんだろ。リオートには遊び心が足りないね」

 「いや、eスポーツにもなってるインフラを遊びと考えられるのはお前くらいなもんだろ。いいから進め」

 「はいはい。アズユーセイ、王子様」

 レヴリッツは渋々と言った感じで、本来の役割を果たすのだった。

 〔ゲームは遊びじゃない!?〕
 〔eスポーツガチ勢の王族w〕
 〔レヴリオてえてえ〕
 〔草〕
 〔踏んでこそのパフォーマーだろ?〕
 〔(三・¥・三)(三・¥・三)(三・¥・三)
 (三・¥・三)(三・¥・三)(三・¥・三)レヴ影分身〕
 〔エビ信コラボは荒らすなw〕

 ー----

 およそ四時間後。
 リオートの一閃により屠られた怪魚が絶命する。
 第10階層のフロアボス撃破であった。
 出る幕もなく戦闘を傍観していたヨミがぼそりと呟く。

 〔10階層撃破!〕
 〔ここまで来たのは素直にすごい〕
 〔¥ 2,000
 おめでとう!!〕
 〔このチーム安定感あり過ぎるな〕

 「ねえ、このゲームって簡単じゃない?」

 「ヨミ、ダメだ! 薄々みんな感じてたけど、言っちゃダメだ! 僕らがアマチュアのレベルなんてとっくに凌駕してて、第10階層の攻略余裕でしたなんて言っちゃダメだ!」

 「お前が一番本音を言ってるじゃねえか……」

 事実、Oathは全員が実力だけならプロ級でも通用するのだ。
 ペリ以外の三人は実力ではなくファン数が足りておらず昇格できていないだけ。

 ここまでの攻略はかなり容易なのである。
 一方でペリは後方の三馬鹿を隠すように、早々に配信を切る。

 「……こほん。
 それでは皆さん! 攻略の続きはまた明日! ぜひ見てくださいねー!
 おやすみなさい、チュッ」

 〔かわいい〕
 〔おつー〕
 〔俺にキスした!〕
 〔ちゅたすかる〕
 〔液晶の味がした〕
 〔明日も楽しみ!〕
 〔チャンネル登録しましたー〕
 〔おつ!〕

 そんな彼らの様子を観て、視聴者はざわついていた。
 まさかアマチュア三人編成のチームがこれほど軽々と第10層を攻略するとは。
 期待が高まるとともに、徐々に視聴者数が増加し始めるのであった。
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