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4章 咎人綾錦杯
9. 2位じゃダメなんでしょうか
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バトルターミナル、最終拠点。
マスター級のパフォーマーが生活する領域である。
なにゆえバトルターミナルの区画が『拠点』と称されているのか……理由はほんの一部の人間しか知らない。
最終拠点を端的に言い表せば、魔境だ。年に一度の玉座争奪が行われる際も、この区画だけは全容が明かされない。
誰にも、マスター級パフォーマーの人々にも、最終拠点の性質を完全に把握している者はいないのだ。
最終拠点には巨大な城が聳え立つ。
今年もこの城の一部エリアを舞台に、マスター級パフォーマーたちが玉座争奪の大会を繰り広げることになる。
さて、拠点の中に異質な領域が存在した。
城の屋上にひっそりと広がる星空。この星空こそ、『天上麗華』ソラフィアートが住まう領域へつながるゲートだった。
星空をくぐると、そこは美しき世界。
眩い燐光が支配する草原。風に揺れる光のカーテン。
「やっほー、フィア!」
桃色の髪の少女が、外部の領域より踏み入った。
彼女の名はユニ・キュロイ。『幻狼』の二つ名を冠するマスター級パフォーマーである。
「ああ……おはよう、ユニ」
草原の只中で、ソラフィアートは寝ころんでいた。
美しい金色の髪を無造作に広げ、死んだ目で携帯を見ている。
「フィア……な、何してるの?」
「さっき起きてアンスレ見てた。ユニさぁ……動画編集めんどいからやっといてくんない?」
「やだよ、自分でやりなよ。ぼくも暇じゃないし」
これがバトルパフォーマーの頂点の現実である。
彼女は本当にやる気がない。とにかくやる気がないのだ。
すべてを実現する天賦の才を持ちながらも、彼女は中々に動くことはなかった。
「そんなことよりさ、あと数日で『綾錦杯』だよ。いつもの玉座争奪。
もちろんフィアも参加するでしょ?」
「……私が参加してもさ、一昨年と去年みたいに無双するだけでしょ? クソゲーになるから不参加でよくない?」
「そんなことないって! 視聴者は何よりもフィアの無双を望んでるんだから」
昨年、ソラフィアートが参戦した玉座争奪は阿鼻叫喚となった。
他のマスター級パフォーマー八名が、みな手も足も出ずに負けてしまったのだ。
仕方ないと、勝てるわけがないと……視聴者たちは負けたマスターたちを責めることすらない。それほどまでにソラフィアートの実力は他と乖離していた。
「ユニが私と同じくらい強かったらやる気出るんだけどね」
「ぐぬぬ……い、今のところは無理……」
「そーだよね。みんなそう言うよね。うんうん、わかってる。
実際、私より強い人なんて……見たことないし」
退屈だ。
ソラフィアートは、あまりにも己の人生に暇を感じていた。
乗り超えられない物が存在しない。
誰もが人生で何らかのハードルに引っかかる中、自分だけが平坦な道を歩き続けている。彼女はそんな人生に鬱屈を感じていた。
「大会の参加は……考えておく。ユニもがんばって」
「もっちろん! 今年こそアレをぼっこぼこにしてやるんだから!」
ユニが狙うは堂々の二位。
ソラフィアートが一位は当然のこと。
彼女は来たるべき大会に向け、準備を整え始めた。
ー----
一方その頃。
第一拠点の街中では、どこか浮ついた雰囲気が広がっていた。まもなくこのバトルターミナル全体を戦場とする大会が開催されるのだ。
もちろん店などの建築物も戦場となる。
予め商品棚からは商品を避難させておき、壊されると困る物も全てターミナル外に搬出しておく。
非常に大規模な玉座争奪の闘いは、外国からの注目度もかなり高い。この国の名物ともなりつつある大会を前に、バトルターミナルの住人たちは興奮を隠せずにいる。
「本当に祭りみたいだな。まあ、どれだけ騒いでも僕が優勝するんだけど」
「あれ? ねえレヴ、あっちは何があるの?」
「あっちは……えっと、電波塔だ。電波塔ぶっ壊したらさすがに怒られるのかな」
レヴリッツとヨミは賑わう街中を練り歩く。
第一拠点を戦場とする大会を前に、全体的な地形を把握しておこうという流れになったのだ。有利な地形を把握しておけば、それだけ優勝の可能性も高まる。
「僕は理事長への嫌がらせに、理事長室に陣を取ることにするよ。ヨミはどこで闘う?」
「んー……じゃあレヴの部屋で」
「パフォーマーの部屋だけは立ち入り禁止だ。機材とか壊されたらどうするんだよ。本当に君はルールを理解してないな……」
アマチュア級のパフォーマーは全部で167人。
ほとんどのパフォーマーが参加すると思われる。チーミングは禁止で、不正が発覚次第失格となる。また、パフォーマーの部屋だけは唯一立ち入り禁止。
この大会は奇襲も許されるし、度が過ぎない器物損壊も許される。これが主なルールだ。
しかしルールを順守しても、モラルがない行いを見せたパフォーマーは炎上するので注意。
「余程のことがない限り、レヴの優勝になるよね」
「フラグ立てないでくれる?」
アマチュア級の中では、客観的に見ても最強なのはレヴリッツだろう。
最近は自他ともに実力が認められつつある。FランVIPと蔑まれることはなくなったが、残念なことにエビ呼びは定着してしまった。
賑わう雑踏の中にも、知名度を上げているレヴリッツへの視線が突き刺さる。
好奇、憧憬、軽蔑、憎悪──ポジティブな感情からネガティブな感情まで、視線に籠められた想いは様々だ。人気になるだけではなく、憎まれることもバトルパフォーマーの性なのだから。
「……」
多くの視線の中で、ひとつ異質な感情が向けられていた。
レヴリッツは奇妙な視線を感じた方角に振り返るが、そこに人の影はない。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。行こうか」
面倒なことになった。
向けられていた視線に籠った感情、それは……殺意。
素人が向ける憎しみではなく、達人が向ける殺気。
あの殺気には覚えがある。嫌というほどに。
心中で嘆息してレヴリッツは人ごみに進んだ。
*****
【バトルパフォーマー】BPアマチュア総合スレ Part573【綾錦杯】
114:名無しさん ID:x4RFxvNqR
綾錦杯まであと3日!
みんなはどの視点見る?
俺はぅーちゃん🤟🤟
118:名無しさん ID:WQo62hweV
とりあえず優勝者みたいならアマはエビ見とけ
プロは予想つかんが消火器か白菜が安牌
マスは天井以外あり得ないな
(*消火器……プロ級『烈機の吸血鬼』イルクリス・サウラ
*白菜……プロ級『紅蓮獅子』オデュノート・サン)
121:名無しさん ID:4hTZrqCh3
ゴミみたいなアマチュアのバトロワなんて見るわけないんだ 🤗
122:名無しさん ID:9broRYXxJ
>>118
マスはどうせ天井優勝
プロは早すぎて何してるのかわかんない
普通アマ見るよね?😅
125:名無しさん ID:YgG95wyY6
エビなんて原人が虫食わせればワンパンよ👊
137:名無しさん ID:2MmpsP9EQ
>>125
原人「レヴリッツ君はね、貴重なタンパク源なので食べます。エビは栄養が豊富ですからねー」
141:名無しさん ID:pDFYMn3Dy
優勝が当確じゃないプロ級が一番見てておもろいだろ
144:名無しさん ID:YYuT3sUVG
バトロワは意外と混戦になるから強いPでも事故る
天井くらい圧倒的なら無双できるけどな
159:名無しさん ID:DpuCZLE7J
あの
マスはどうせ天井無双です…
174:名無しさん ID:J6an9nMCY
>>159
黙れ🐷
177:名無しさん ID:cfWuMz5yS
もちろん「真」の視聴者なら全階級三窓するよな😎
180:名無しさん ID:hbwS2jRUz
年一のバトロワで優勝すれば昇格確約みたいなもんだし
Oathあたりは全員年内に昇格しそう
288:名無しさん ID:WkgUagZY6
【悲報】天井、不参加です…
────
ソラフィアート・クラーラクト@soraks_battlep
綾錦杯は不参加の予定です🙌
色々考えたけどバランス的に私いない方がいいかなって😤
他の人応援してねー‼️👊👊👊
────
292:名無しさん ID:eYTi8yBbH
>>288
あっこりゃ
293:名無しさん ID:pETj3tvZH
>>288
天井あかんか、、、
295:名無しさん ID:W3m9wFq9i
>>288
バランスとか考えなくていいから無双してどうぞ
296:名無しさん ID:qrr6udG3X
天井、やる気ありません
298:名無しさん ID:yB5A3yYPK
>>296
(まともな相手がいないんだから)そりゃそうよ
301:名無しさん ID:YRHBVi6qC
天井不参加でマスター板地獄みたいになってて草
302:名無しさん ID:2SZpAzce7
マスターとか雲の上の話なんてするなよ
ここは「地底」だぞ?😎
306:名無しさん ID:2SZpAzce7
でもバランス考えたのは偉いよな🤗
自分の実力をよく客観視出来てる🤗
マスは見ない予定だったけど見るか🤗🤗🤗
309:名無しさん ID:QFjM4BGMV
マスターの優勝誰か分からなくなってきたな
例アレか芸人だろうけど
エビ、お前も不参加キメていけ
マスター級のパフォーマーが生活する領域である。
なにゆえバトルターミナルの区画が『拠点』と称されているのか……理由はほんの一部の人間しか知らない。
最終拠点を端的に言い表せば、魔境だ。年に一度の玉座争奪が行われる際も、この区画だけは全容が明かされない。
誰にも、マスター級パフォーマーの人々にも、最終拠点の性質を完全に把握している者はいないのだ。
最終拠点には巨大な城が聳え立つ。
今年もこの城の一部エリアを舞台に、マスター級パフォーマーたちが玉座争奪の大会を繰り広げることになる。
さて、拠点の中に異質な領域が存在した。
城の屋上にひっそりと広がる星空。この星空こそ、『天上麗華』ソラフィアートが住まう領域へつながるゲートだった。
星空をくぐると、そこは美しき世界。
眩い燐光が支配する草原。風に揺れる光のカーテン。
「やっほー、フィア!」
桃色の髪の少女が、外部の領域より踏み入った。
彼女の名はユニ・キュロイ。『幻狼』の二つ名を冠するマスター級パフォーマーである。
「ああ……おはよう、ユニ」
草原の只中で、ソラフィアートは寝ころんでいた。
美しい金色の髪を無造作に広げ、死んだ目で携帯を見ている。
「フィア……な、何してるの?」
「さっき起きてアンスレ見てた。ユニさぁ……動画編集めんどいからやっといてくんない?」
「やだよ、自分でやりなよ。ぼくも暇じゃないし」
これがバトルパフォーマーの頂点の現実である。
彼女は本当にやる気がない。とにかくやる気がないのだ。
すべてを実現する天賦の才を持ちながらも、彼女は中々に動くことはなかった。
「そんなことよりさ、あと数日で『綾錦杯』だよ。いつもの玉座争奪。
もちろんフィアも参加するでしょ?」
「……私が参加してもさ、一昨年と去年みたいに無双するだけでしょ? クソゲーになるから不参加でよくない?」
「そんなことないって! 視聴者は何よりもフィアの無双を望んでるんだから」
昨年、ソラフィアートが参戦した玉座争奪は阿鼻叫喚となった。
他のマスター級パフォーマー八名が、みな手も足も出ずに負けてしまったのだ。
仕方ないと、勝てるわけがないと……視聴者たちは負けたマスターたちを責めることすらない。それほどまでにソラフィアートの実力は他と乖離していた。
「ユニが私と同じくらい強かったらやる気出るんだけどね」
「ぐぬぬ……い、今のところは無理……」
「そーだよね。みんなそう言うよね。うんうん、わかってる。
実際、私より強い人なんて……見たことないし」
退屈だ。
ソラフィアートは、あまりにも己の人生に暇を感じていた。
乗り超えられない物が存在しない。
誰もが人生で何らかのハードルに引っかかる中、自分だけが平坦な道を歩き続けている。彼女はそんな人生に鬱屈を感じていた。
「大会の参加は……考えておく。ユニもがんばって」
「もっちろん! 今年こそアレをぼっこぼこにしてやるんだから!」
ユニが狙うは堂々の二位。
ソラフィアートが一位は当然のこと。
彼女は来たるべき大会に向け、準備を整え始めた。
ー----
一方その頃。
第一拠点の街中では、どこか浮ついた雰囲気が広がっていた。まもなくこのバトルターミナル全体を戦場とする大会が開催されるのだ。
もちろん店などの建築物も戦場となる。
予め商品棚からは商品を避難させておき、壊されると困る物も全てターミナル外に搬出しておく。
非常に大規模な玉座争奪の闘いは、外国からの注目度もかなり高い。この国の名物ともなりつつある大会を前に、バトルターミナルの住人たちは興奮を隠せずにいる。
「本当に祭りみたいだな。まあ、どれだけ騒いでも僕が優勝するんだけど」
「あれ? ねえレヴ、あっちは何があるの?」
「あっちは……えっと、電波塔だ。電波塔ぶっ壊したらさすがに怒られるのかな」
レヴリッツとヨミは賑わう街中を練り歩く。
第一拠点を戦場とする大会を前に、全体的な地形を把握しておこうという流れになったのだ。有利な地形を把握しておけば、それだけ優勝の可能性も高まる。
「僕は理事長への嫌がらせに、理事長室に陣を取ることにするよ。ヨミはどこで闘う?」
「んー……じゃあレヴの部屋で」
「パフォーマーの部屋だけは立ち入り禁止だ。機材とか壊されたらどうするんだよ。本当に君はルールを理解してないな……」
アマチュア級のパフォーマーは全部で167人。
ほとんどのパフォーマーが参加すると思われる。チーミングは禁止で、不正が発覚次第失格となる。また、パフォーマーの部屋だけは唯一立ち入り禁止。
この大会は奇襲も許されるし、度が過ぎない器物損壊も許される。これが主なルールだ。
しかしルールを順守しても、モラルがない行いを見せたパフォーマーは炎上するので注意。
「余程のことがない限り、レヴの優勝になるよね」
「フラグ立てないでくれる?」
アマチュア級の中では、客観的に見ても最強なのはレヴリッツだろう。
最近は自他ともに実力が認められつつある。FランVIPと蔑まれることはなくなったが、残念なことにエビ呼びは定着してしまった。
賑わう雑踏の中にも、知名度を上げているレヴリッツへの視線が突き刺さる。
好奇、憧憬、軽蔑、憎悪──ポジティブな感情からネガティブな感情まで、視線に籠められた想いは様々だ。人気になるだけではなく、憎まれることもバトルパフォーマーの性なのだから。
「……」
多くの視線の中で、ひとつ異質な感情が向けられていた。
レヴリッツは奇妙な視線を感じた方角に振り返るが、そこに人の影はない。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。行こうか」
面倒なことになった。
向けられていた視線に籠った感情、それは……殺意。
素人が向ける憎しみではなく、達人が向ける殺気。
あの殺気には覚えがある。嫌というほどに。
心中で嘆息してレヴリッツは人ごみに進んだ。
*****
【バトルパフォーマー】BPアマチュア総合スレ Part573【綾錦杯】
114:名無しさん ID:x4RFxvNqR
綾錦杯まであと3日!
みんなはどの視点見る?
俺はぅーちゃん🤟🤟
118:名無しさん ID:WQo62hweV
とりあえず優勝者みたいならアマはエビ見とけ
プロは予想つかんが消火器か白菜が安牌
マスは天井以外あり得ないな
(*消火器……プロ級『烈機の吸血鬼』イルクリス・サウラ
*白菜……プロ級『紅蓮獅子』オデュノート・サン)
121:名無しさん ID:4hTZrqCh3
ゴミみたいなアマチュアのバトロワなんて見るわけないんだ 🤗
122:名無しさん ID:9broRYXxJ
>>118
マスはどうせ天井優勝
プロは早すぎて何してるのかわかんない
普通アマ見るよね?😅
125:名無しさん ID:YgG95wyY6
エビなんて原人が虫食わせればワンパンよ👊
137:名無しさん ID:2MmpsP9EQ
>>125
原人「レヴリッツ君はね、貴重なタンパク源なので食べます。エビは栄養が豊富ですからねー」
141:名無しさん ID:pDFYMn3Dy
優勝が当確じゃないプロ級が一番見てておもろいだろ
144:名無しさん ID:YYuT3sUVG
バトロワは意外と混戦になるから強いPでも事故る
天井くらい圧倒的なら無双できるけどな
159:名無しさん ID:DpuCZLE7J
あの
マスはどうせ天井無双です…
174:名無しさん ID:J6an9nMCY
>>159
黙れ🐷
177:名無しさん ID:cfWuMz5yS
もちろん「真」の視聴者なら全階級三窓するよな😎
180:名無しさん ID:hbwS2jRUz
年一のバトロワで優勝すれば昇格確約みたいなもんだし
Oathあたりは全員年内に昇格しそう
288:名無しさん ID:WkgUagZY6
【悲報】天井、不参加です…
────
ソラフィアート・クラーラクト@soraks_battlep
綾錦杯は不参加の予定です🙌
色々考えたけどバランス的に私いない方がいいかなって😤
他の人応援してねー‼️👊👊👊
────
292:名無しさん ID:eYTi8yBbH
>>288
あっこりゃ
293:名無しさん ID:pETj3tvZH
>>288
天井あかんか、、、
295:名無しさん ID:W3m9wFq9i
>>288
バランスとか考えなくていいから無双してどうぞ
296:名無しさん ID:qrr6udG3X
天井、やる気ありません
298:名無しさん ID:yB5A3yYPK
>>296
(まともな相手がいないんだから)そりゃそうよ
301:名無しさん ID:YRHBVi6qC
天井不参加でマスター板地獄みたいになってて草
302:名無しさん ID:2SZpAzce7
マスターとか雲の上の話なんてするなよ
ここは「地底」だぞ?😎
306:名無しさん ID:2SZpAzce7
でもバランス考えたのは偉いよな🤗
自分の実力をよく客観視出来てる🤗
マスは見ない予定だったけど見るか🤗🤗🤗
309:名無しさん ID:QFjM4BGMV
マスターの優勝誰か分からなくなってきたな
例アレか芸人だろうけど
エビ、お前も不参加キメていけ
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