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5章 晩冬堕天戦
7. 記念ライブ#2
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突然七色に染まったステージに、観客は息を呑む。
「七色。この色を見た瞬間、次に歌う曲がわかった人もいると思う」
〔あーアレね〕
〔あれだな〕
〔アレって言うと皇帝思い出すからやめろw〕
〔最初の曲だ〕
「この曲は、Oathを組んだ後に初めて作られた曲だ。作曲はペリ先輩とヨミが担当してくれて……僕らにとっては大切な思い出。もちろん、応援してくれたファンの人たちにとっても思い出だよね」
〔青葉杯優勝した後に出たやつやね〕
〔この曲聞くとテンション上がる〕
〔あの頃からの古参です!〕
「それじゃあ三曲目──『Rise of seven』!」
イントロは緩やかに、中盤に盛り上がり、終盤に爆発する。
次第にリズムが激しくなる、スタイリッシュな曲だ。
『──♪』
最初にリオートが歌い出す。
続いてレヴリッツ、ヨミ、ペリと歌声が連なり──個性的な調和が目を覚ます。
〔やっぱりいい曲だ!〕
〔かっけぇ〕
〔この曲はリオートの印象が強いなあ〕
〔青葉杯めっちゃアツかったからな〕
リオートは全力の歌声を響き渡らせる。
自分の声はこの広大なドームに届けられているだろうか……と不安になりながらも、わずかな興奮を織り交ぜて。
(最初、バトルパフォーマーになりたい理由は漠然としたものだった。
だけどレヴリッツたちに出会って、ケビンに邪魔されて……青葉杯で覚悟を決めた。俺は……頂点を目指す。
だから歌える、闘える。このステージを……最高のものにしてみせる!)
秘めたる熱情が彼を突き動かす。
他メンバーのリズムと声を乱さないように、されど自分が個性を出せるように。彼は音の波に熱意を乗せて歌い続けた。
「……というわけで、『Rise of seven』だ。
盛り上がってくれたか?」
〔最高だった!!〕
〔レヴリッツが上手くなって全体のクオリティが上がってる〕
〔リオート王子かっこいい!〕
「よーし、順調だね! まだまだ熱を上げていくぞー!」
レヴリッツの声に会場が沸く。
ようやく折り返しといったところだ。メンバーの喉を気遣いながら、ここからは交代制で歌っていくことになる。
彼は一切の疲労を感じずに次の曲へ移った。
-----
いよいよ最後の演目となる。
レヴリッツはステージから離れていく三人を目で見送り、心中で労いの言葉をかけた。
最後は彼の新曲。
新曲はソロで歌うが、Oathの仲間たちも今回は見届けてほしい。
そう、彼ら三人もまたレヴリッツのファンなのだから。
「はぁ……こ、ここまですごい勢いで歌ってきたけど、いよいよ最後の曲だ。
控え目に言って……これは超ビッグイベントになったね! ここまで盛り上がるとは僕も思ってなかったよ」
歌詞を間違えたり、照明が落ちたりなど……目立った失敗は一つもなかった。
これもOathの皆と、準備してくれたスタッフの努力の賜物に違いない。
成功を積み重ねるにつれ会場の熱気は高まり……最高潮の雰囲気が出来上がっている。
〔ラストかー〕
〔もう終わり!?〕
〔楽しすぎて時間忘れてた・・・〕
〔このライブ質が高すぎるww〕
「最後は僕のソロ曲だ。
これから歌うのは新曲なんだけど……うん、なんと言えばいいかな。
言葉では言い表せない想いを歌に乗せた。これまでの僕の集大成……ではない。
知ってる人もいると思うけど、僕は無敗だ。まだデビューしてから負けたことがない。だけど僕と闘ってくれたパフォーマーたち。
彼らは素敵な矜持と情熱を持つ人ばかりだ」
〔そうだね〕
〔無敗はすごいよ〕
〔綾錦杯は事故だしな〕
〔パフォーマーってみんな素敵な人たちだよなあ〕
「無数の闘い、歩みへと捧げる歌。
そして……レヴリッツ・シルヴァという人間が形になったことを宣言する歌だ」
指を天へ指す。
俯いて、覚悟を決めた。
「独壇場──」
独壇場とは本来、戦闘パフォーマンスにおいて用いられるものだ。
応用的に歌唱ライブに使われることがあっても、それは背景に留めたものがほとんど。
しかし、レヴリッツは違った。
「──《虚心舞台》」
ドーム会場全体が眩い光に包まれる。
パチン、天へ示した指を鳴らすと光が晴れた。
〔うあおおおおおおおお〕
〔は!?〕
〔独壇場だああああああ!!〕
〔やべええええええええええ〕
ドームそのものが別の領域へと変貌していた。
荘厳な摩天楼……塔の内部だ。空中に無数の音叉が浮かび、窓から射し込む青光が幻想的な雰囲気を醸し出している。
これまで開放的なドームにいた観客たちは、一転して閉ざされた空間に出たことに驚きを隠せない。
彼は二つの独壇場を持っていた。
一つはレヴリッツ・シルヴァとしての《虚心舞台》
一つはレヴハルト・シルバミネとしての独壇場。
今回披露したステージは、歌唱パフォーマンスと非常にマッチしたもの。
パフォーマーの頂点を目指す意志力を基に形成した舞台。
〔すげええええ〕
〔綺麗だ…〕
〔現地民うらやましすぎる〕
「最後の曲を心で聴いてくれ。
──『レクイズム』」
まず、観客と視聴者に視覚的な変化が起こった。
レヴリッツが曲名を告げると同時に、彼の姿が目の前にいるように映ったのだ。
そして二つ目に聴覚的な変化。
刻み出したイントロが耳元に……まるでイヤホンをしているように流れ込む。
これが独壇場の権能。
領域の作成者であるレヴリッツを視界に収めた者に対し、感覚的な幻惑を齎すことができる。対象はドーム内の観客だけではなく、配信を見ている視聴者も含む。
『──♪』
聴き手の誰もが魅入られた。
すさまじい独唱だ。
ダークな雰囲気と、ノイズが編み込まれた疾走感のあるメロディ。
息を継ぐたびに音叉が揺れ動く。
目の前でレヴリッツが歌唱しているように、観客たちは美麗な幻影を見る。
今までに誰も経験したことのない、唯一のステージライブ。
これこそがレヴリッツの個性だと彼は高らかに歌う。
『──』
歌詞の内容は小難しく、瞬時に理解できるものではない。しかし視聴者の心にはすんなりと歌詞に籠められた想いが入り込んできた。
──これは葬送の歌だ。
表面上はパフォーマンスで闘った敗者への手向け、ということになるだろう。
だが違う。レヴリッツにしかわからない歌詞の真意。
それは……ここに至るまで、彼の人生で築き上げられた屍への鎮魂歌。殺しの依頼で命を奪った人々、同業者へ。
殺めたことを悔いるつもりはない。必要な行為だったから。
だが、魂の安寧を祈るくらいはさせてもらいたい。
影の世界の屍を踏み越え、彼は陽のあたる世界──バトルパフォーマーの舞台へと飛び込んだのだから。
『──!』
全霊を籠めて歌いきる。
独りよがりな歌唱、まさしく独唱を。
会場の誰もがサイリウムを振ることを忘れ、配信視聴者の誰もがコメントを打ち込むことを忘れ。
独壇場の中に響く声の虜となっていた。
(ハド……君はどうして俺を……俺なんかに意味を求めたんだろう。
今こうして歌うことで、君を慰めようとする愚かな人間なのに。たった一つの契約を果たすために、全てを棒に振って逃げ出した罪人だ。
それでも君は……俺の幸福を望むのだろうな)
今は亡き人への想い。
この曲は懺悔を意味するものではなく、ただ彼らの死に意味を与えるものだった。
『──! ……』
歌い終えた瞬間、万雷の喝采が巻き起こる。
独壇場が罅割れんばかりの歓声。燃え上がらんばかりの熱気。
その日、レヴリッツは一つの伝説をバトルパフォーマンス史に刻んだ。
「七色。この色を見た瞬間、次に歌う曲がわかった人もいると思う」
〔あーアレね〕
〔あれだな〕
〔アレって言うと皇帝思い出すからやめろw〕
〔最初の曲だ〕
「この曲は、Oathを組んだ後に初めて作られた曲だ。作曲はペリ先輩とヨミが担当してくれて……僕らにとっては大切な思い出。もちろん、応援してくれたファンの人たちにとっても思い出だよね」
〔青葉杯優勝した後に出たやつやね〕
〔この曲聞くとテンション上がる〕
〔あの頃からの古参です!〕
「それじゃあ三曲目──『Rise of seven』!」
イントロは緩やかに、中盤に盛り上がり、終盤に爆発する。
次第にリズムが激しくなる、スタイリッシュな曲だ。
『──♪』
最初にリオートが歌い出す。
続いてレヴリッツ、ヨミ、ペリと歌声が連なり──個性的な調和が目を覚ます。
〔やっぱりいい曲だ!〕
〔かっけぇ〕
〔この曲はリオートの印象が強いなあ〕
〔青葉杯めっちゃアツかったからな〕
リオートは全力の歌声を響き渡らせる。
自分の声はこの広大なドームに届けられているだろうか……と不安になりながらも、わずかな興奮を織り交ぜて。
(最初、バトルパフォーマーになりたい理由は漠然としたものだった。
だけどレヴリッツたちに出会って、ケビンに邪魔されて……青葉杯で覚悟を決めた。俺は……頂点を目指す。
だから歌える、闘える。このステージを……最高のものにしてみせる!)
秘めたる熱情が彼を突き動かす。
他メンバーのリズムと声を乱さないように、されど自分が個性を出せるように。彼は音の波に熱意を乗せて歌い続けた。
「……というわけで、『Rise of seven』だ。
盛り上がってくれたか?」
〔最高だった!!〕
〔レヴリッツが上手くなって全体のクオリティが上がってる〕
〔リオート王子かっこいい!〕
「よーし、順調だね! まだまだ熱を上げていくぞー!」
レヴリッツの声に会場が沸く。
ようやく折り返しといったところだ。メンバーの喉を気遣いながら、ここからは交代制で歌っていくことになる。
彼は一切の疲労を感じずに次の曲へ移った。
-----
いよいよ最後の演目となる。
レヴリッツはステージから離れていく三人を目で見送り、心中で労いの言葉をかけた。
最後は彼の新曲。
新曲はソロで歌うが、Oathの仲間たちも今回は見届けてほしい。
そう、彼ら三人もまたレヴリッツのファンなのだから。
「はぁ……こ、ここまですごい勢いで歌ってきたけど、いよいよ最後の曲だ。
控え目に言って……これは超ビッグイベントになったね! ここまで盛り上がるとは僕も思ってなかったよ」
歌詞を間違えたり、照明が落ちたりなど……目立った失敗は一つもなかった。
これもOathの皆と、準備してくれたスタッフの努力の賜物に違いない。
成功を積み重ねるにつれ会場の熱気は高まり……最高潮の雰囲気が出来上がっている。
〔ラストかー〕
〔もう終わり!?〕
〔楽しすぎて時間忘れてた・・・〕
〔このライブ質が高すぎるww〕
「最後は僕のソロ曲だ。
これから歌うのは新曲なんだけど……うん、なんと言えばいいかな。
言葉では言い表せない想いを歌に乗せた。これまでの僕の集大成……ではない。
知ってる人もいると思うけど、僕は無敗だ。まだデビューしてから負けたことがない。だけど僕と闘ってくれたパフォーマーたち。
彼らは素敵な矜持と情熱を持つ人ばかりだ」
〔そうだね〕
〔無敗はすごいよ〕
〔綾錦杯は事故だしな〕
〔パフォーマーってみんな素敵な人たちだよなあ〕
「無数の闘い、歩みへと捧げる歌。
そして……レヴリッツ・シルヴァという人間が形になったことを宣言する歌だ」
指を天へ指す。
俯いて、覚悟を決めた。
「独壇場──」
独壇場とは本来、戦闘パフォーマンスにおいて用いられるものだ。
応用的に歌唱ライブに使われることがあっても、それは背景に留めたものがほとんど。
しかし、レヴリッツは違った。
「──《虚心舞台》」
ドーム会場全体が眩い光に包まれる。
パチン、天へ示した指を鳴らすと光が晴れた。
〔うあおおおおおおおお〕
〔は!?〕
〔独壇場だああああああ!!〕
〔やべええええええええええ〕
ドームそのものが別の領域へと変貌していた。
荘厳な摩天楼……塔の内部だ。空中に無数の音叉が浮かび、窓から射し込む青光が幻想的な雰囲気を醸し出している。
これまで開放的なドームにいた観客たちは、一転して閉ざされた空間に出たことに驚きを隠せない。
彼は二つの独壇場を持っていた。
一つはレヴリッツ・シルヴァとしての《虚心舞台》
一つはレヴハルト・シルバミネとしての独壇場。
今回披露したステージは、歌唱パフォーマンスと非常にマッチしたもの。
パフォーマーの頂点を目指す意志力を基に形成した舞台。
〔すげええええ〕
〔綺麗だ…〕
〔現地民うらやましすぎる〕
「最後の曲を心で聴いてくれ。
──『レクイズム』」
まず、観客と視聴者に視覚的な変化が起こった。
レヴリッツが曲名を告げると同時に、彼の姿が目の前にいるように映ったのだ。
そして二つ目に聴覚的な変化。
刻み出したイントロが耳元に……まるでイヤホンをしているように流れ込む。
これが独壇場の権能。
領域の作成者であるレヴリッツを視界に収めた者に対し、感覚的な幻惑を齎すことができる。対象はドーム内の観客だけではなく、配信を見ている視聴者も含む。
『──♪』
聴き手の誰もが魅入られた。
すさまじい独唱だ。
ダークな雰囲気と、ノイズが編み込まれた疾走感のあるメロディ。
息を継ぐたびに音叉が揺れ動く。
目の前でレヴリッツが歌唱しているように、観客たちは美麗な幻影を見る。
今までに誰も経験したことのない、唯一のステージライブ。
これこそがレヴリッツの個性だと彼は高らかに歌う。
『──』
歌詞の内容は小難しく、瞬時に理解できるものではない。しかし視聴者の心にはすんなりと歌詞に籠められた想いが入り込んできた。
──これは葬送の歌だ。
表面上はパフォーマンスで闘った敗者への手向け、ということになるだろう。
だが違う。レヴリッツにしかわからない歌詞の真意。
それは……ここに至るまで、彼の人生で築き上げられた屍への鎮魂歌。殺しの依頼で命を奪った人々、同業者へ。
殺めたことを悔いるつもりはない。必要な行為だったから。
だが、魂の安寧を祈るくらいはさせてもらいたい。
影の世界の屍を踏み越え、彼は陽のあたる世界──バトルパフォーマーの舞台へと飛び込んだのだから。
『──!』
全霊を籠めて歌いきる。
独りよがりな歌唱、まさしく独唱を。
会場の誰もがサイリウムを振ることを忘れ、配信視聴者の誰もがコメントを打ち込むことを忘れ。
独壇場の中に響く声の虜となっていた。
(ハド……君はどうして俺を……俺なんかに意味を求めたんだろう。
今こうして歌うことで、君を慰めようとする愚かな人間なのに。たった一つの契約を果たすために、全てを棒に振って逃げ出した罪人だ。
それでも君は……俺の幸福を望むのだろうな)
今は亡き人への想い。
この曲は懺悔を意味するものではなく、ただ彼らの死に意味を与えるものだった。
『──! ……』
歌い終えた瞬間、万雷の喝采が巻き起こる。
独壇場が罅割れんばかりの歓声。燃え上がらんばかりの熱気。
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