忘れじの契約~祖国に見捨てられた最強剣士、追放されたので外国でバトル系配信者を始めます~

朝露ココア

文字の大きさ
89 / 105
5章 晩冬堕天戦

7. 記念ライブ#2

しおりを挟む
 突然七色に染まったステージに、観客は息を呑む。

 「七色。この色を見た瞬間、次に歌う曲がわかった人もいると思う」

 〔あーアレね〕
 〔あれだな〕
 〔アレって言うと皇帝思い出すからやめろw〕
 〔最初の曲だ〕

 「この曲は、Oathを組んだ後に初めて作られた曲だ。作曲はペリ先輩とヨミが担当してくれて……僕らにとっては大切な思い出。もちろん、応援してくれたファンの人たちにとっても思い出だよね」

 〔青葉杯優勝した後に出たやつやね〕
 〔この曲聞くとテンション上がる〕
 〔あの頃からの古参です!〕

 「それじゃあ三曲目──『Rise of seven』!」

 イントロは緩やかに、中盤に盛り上がり、終盤に爆発する。
 次第にリズムが激しくなる、スタイリッシュな曲だ。

 『──♪』

 最初にリオートが歌い出す。
 続いてレヴリッツ、ヨミ、ペリと歌声が連なり──個性的な調和が目を覚ます。

 〔やっぱりいい曲だ!〕
 〔かっけぇ〕
 〔この曲はリオートの印象が強いなあ〕
 〔青葉杯めっちゃアツかったからな〕

 リオートは全力の歌声を響き渡らせる。
 自分の声はこの広大なドームに届けられているだろうか……と不安になりながらも、わずかな興奮を織り交ぜて。

 (最初、バトルパフォーマーになりたい理由は漠然としたものだった。
 だけどレヴリッツたちに出会って、ケビンに邪魔されて……青葉杯で覚悟を決めた。俺は……頂点を目指す。
 だから歌える、闘える。このステージを……最高のものにしてみせる!)

 秘めたる熱情が彼を突き動かす。
 他メンバーのリズムと声を乱さないように、されど自分が個性を出せるように。彼は音の波に熱意を乗せて歌い続けた。

 「……というわけで、『Rise of seven』だ。
 盛り上がってくれたか?」

 〔最高だった!!〕
 〔レヴリッツが上手くなって全体のクオリティが上がってる〕
 〔リオート王子かっこいい!〕

 「よーし、順調だね! まだまだ熱を上げていくぞー!」

 レヴリッツの声に会場が沸く。
 ようやく折り返しといったところだ。メンバーの喉を気遣いながら、ここからは交代制で歌っていくことになる。

 彼は一切の疲労を感じずに次の曲へ移った。

 -----

 いよいよ最後の演目となる。
 レヴリッツはステージから離れていく三人を目で見送り、心中で労いの言葉をかけた。

 最後は彼の新曲。
 新曲はソロで歌うが、Oathの仲間たちも今回は見届けてほしい。
 そう、彼ら三人もまたレヴリッツのファンなのだから。

 「はぁ……こ、ここまですごい勢いで歌ってきたけど、いよいよ最後の曲だ。
 控え目に言って……これは超ビッグイベントになったね! ここまで盛り上がるとは僕も思ってなかったよ」

 歌詞を間違えたり、照明が落ちたりなど……目立った失敗は一つもなかった。
 これもOathの皆と、準備してくれたスタッフの努力の賜物に違いない。

 成功を積み重ねるにつれ会場の熱気は高まり……最高潮の雰囲気が出来上がっている。

 〔ラストかー〕
 〔もう終わり!?〕
 〔楽しすぎて時間忘れてた・・・〕
 〔このライブ質が高すぎるww〕

 「最後は僕のソロ曲だ。
 これから歌うのは新曲なんだけど……うん、なんと言えばいいかな。
 言葉では言い表せない想いを歌に乗せた。これまでの僕の集大成……ではない。

 知ってる人もいると思うけど、僕は無敗だ。まだデビューしてから負けたことがない。だけど僕と闘ってくれたパフォーマーたち。
 彼らは素敵な矜持プライド情熱パッションを持つ人ばかりだ」

 〔そうだね〕
 〔無敗はすごいよ〕
 〔綾錦杯は事故だしな〕
 〔パフォーマーってみんな素敵な人たちだよなあ〕

 「無数の闘い、歩みへと捧げる歌。
 そして……レヴリッツ・シルヴァという人間が形になったことを宣言する歌だ」

 指を天へ指す。
 俯いて、覚悟を決めた。

 「独壇場スターステージ──」

 独壇場スターステージとは本来、戦闘パフォーマンスにおいて用いられるものだ。
 応用的に歌唱ライブに使われることがあっても、それは背景に留めたものがほとんど。

 しかし、レヴリッツは違った。

 「──《虚心舞台フェルスラ・ステージ》」

 ドーム会場全体が眩い光に包まれる。
 パチン、天へ示した指を鳴らすと光が晴れた。

 〔うあおおおおおおおお〕
 〔は!?〕
 〔独壇場だああああああ!!〕
 〔やべええええええええええ〕

 ドームそのものが別の領域へと変貌していた。
 荘厳な摩天楼……塔の内部だ。空中に無数の音叉が浮かび、窓から射し込む青光が幻想的な雰囲気を醸し出している。
 これまで開放的なドームにいた観客たちは、一転して閉ざされた空間に出たことに驚きを隠せない。

 彼は二つの独壇場スターステージを持っていた。

 一つはレヴリッツ・シルヴァとしての《虚心舞台フェルスラ・ステージ
 一つはレヴハルト・シルバミネとしての独壇場。 

 今回披露したステージは、歌唱パフォーマンスと非常にマッチしたもの。
 パフォーマーの頂点を目指す意志力を基に形成した舞台。

 〔すげええええ〕
 〔綺麗だ…〕
 〔現地民うらやましすぎる〕

 「最後の曲を心で聴いてくれ。
 ──『レクイズム』」

 まず、観客と視聴者に視覚的な変化が起こった。
 レヴリッツが曲名を告げると同時に、彼の姿が目の前にいるように映ったのだ。

 そして二つ目に聴覚的な変化。
 刻み出したイントロが耳元に……まるでイヤホンをしているように流れ込む。

 これが独壇場スターステージの権能。
 領域の作成者であるレヴリッツを視界に収めた者に対し、感覚的な幻惑を齎すことができる。対象はドーム内の観客だけではなく、配信を見ている視聴者も含む。

 『──♪』

 聴き手の誰もが魅入られた。
 すさまじい独唱だ。
 ダークな雰囲気と、ノイズが編み込まれた疾走感のあるメロディ。

 息を継ぐたびに音叉が揺れ動く。
 目の前でレヴリッツが歌唱しているように、観客たちは美麗な幻影を見る。

 今までに誰も経験したことのない、唯一のステージライブ。
 これこそがレヴリッツの個性スタイルだと彼は高らかに歌う。

 『──』

 歌詞の内容は小難しく、瞬時に理解できるものではない。しかし視聴者の心にはすんなりと歌詞に籠められた想いが入り込んできた。

 ──これは葬送の歌だ。
 表面上はパフォーマンスで闘った敗者への手向け、ということになるだろう。

 だが違う。レヴリッツにしかわからない歌詞の真意。
 それは……ここに至るまで、彼の人生で築き上げられた屍への鎮魂歌。殺しの依頼で命を奪った人々、同業者へ。
 殺めたことを悔いるつもりはない。必要な行為だったから。

 だが、魂の安寧を祈るくらいはさせてもらいたい。
 影の世界の屍を踏み越え、彼は陽のあたる世界──バトルパフォーマーの舞台へと飛び込んだのだから。

 『──!』

 全霊を籠めて歌いきる。
 独りよがりな歌唱、まさしく独唱を。

 会場の誰もがサイリウムを振ることを忘れ、配信視聴者の誰もがコメントを打ち込むことを忘れ。
 独壇場スターステージの中に響く声の虜となっていた。

 (ハド……君はどうして俺を……俺なんかに意味を求めたんだろう。
 今こうして歌うことで、君を慰めようとする愚かな人間なのに。たった一つの契約を果たすために、全てを棒に振って逃げ出した罪人だ。
 それでも君は……俺の幸福を望むのだろうな)

 今は亡き人への想い。
 この曲は懺悔を意味するものではなく、ただ彼らの死に意味を与えるものだった。


 『──! ……』


 歌い終えた瞬間、万雷の喝采が巻き起こる。
 独壇場スターステージが罅割れんばかりの歓声。燃え上がらんばかりの熱気。



 その日、レヴリッツは一つの伝説をバトルパフォーマンス史に刻んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】 それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。 剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず… 盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず… 攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず… 回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず… 弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず… そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという… これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。 剣で攻撃をすれば勇者より強く… 盾を持てばタンクより役に立ち… 攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが… それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。 Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに… 魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし… 補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に… 怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。 そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが… テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので… 追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。 そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが… 果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか? 9月21日 HOTランキング2位になりました。 皆様、応援有り難う御座います! 同日、夜21時49分… HOTランキングで1位になりました! 感無量です、皆様有り難う御座います♪

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...