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三章
3-50 信じられる人が誰もいなくなった
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「精術師自体も沢山いたんだが、何故か皆、レヴィンを精術師とは認めない、みたいな態度でな。特に、そこのヴァイスハイト」
「うぐっ」
テロペアのお父さんが呻く。
「何で?」
「それは、あいつがツークフォーゲルを使って、自分の地位を獲得しようとしていたからよ」
「あ、これ、グレンツェントのお母さんな」
オレの質問には、派手な女の人が答えた。キラキラ集団の先頭だった女の人だ。
一応言っとくな、とばかりにルースのお父さんがその人を指さす。どっちかというと「これー」って感じの指し方だ。
「グレンツェント。ケイリー・グレンツェントよ。でも、そんなに一気に覚えられないだろうし、そこの変態のママ、って感じで覚えていいから」
そう言って指差したのは、先ほど妹に可愛い可愛い言いまくったり、服を片手にシアにものすっごく寄っていっていた男だった。確か、ファイン、って言ったっけ。
オレ達も一通り名乗ると、その、ファインのお母さんが「消えかけのツークフォーゲルと一緒に現れた、無名の精術師だったからね」と話を続けた。
「ま、あたしの場合は、ただ単純に突っかかってたって感じだったんだけど、問題はそこの今や完全なるヘタレ野郎になってるヴァイスハイトさん家のバカ」
「お、お前なぁ!」
「および、その父。親子二人がかりで、右も左も分からず、家族に恵まれていないレヴィンを責める責める。結果、何も教えてもらっていなかったレヴィン少年は、精術師にすら不信感を抱いた。事実上、信じられる人が誰もいなくなった、ってところね」
ファインのお母さん、強い。有無を言わせずテロペアのお父さんを黙らせると、そのままべらべらと続けた。
それにしても、親父、環境が悪かったんだな。それで守銭奴になっちゃったのかな……。
あ、でも、それだとスティアの守銭奴の理由がつかないから、守銭奴は遺伝性なのかもしれない。
……オレも、守銭奴にならないと?
「レヴィンは生意気な性格とお得意の守銭奴っぷりで、色んな所にやっかまれてたよ」
精術師というだけで、何故か敵を作る。そこに守銭奴までプラスしたって事は、きっと学生時代に色んな人と金銭トラブルを起こしたんだろう。
「この情報、売ってやってもいいけどー?」って、ふっかけたとか。
「かくいう俺は、女装していたレヴィンに一目ぼれして声をかけて一緒にご飯を食べに行ったタイプの人間だけどな!」
「いやいやいや、おかしいだろ! 何で親父、女装してるんだ!」
急に話についていけなくなったぞ!
「で、まぁ、その辺は軽く流すとして」
流すのか! 気になるんだけど!
……いや、流してもらった方がいいか。親父が女装してたっていう衝撃的発言だったわけだし。なかった事にしよう。脳内ないない。ないないする情報。あんまり考えたくないし。
「まぁ、とにかく色んな人にツンツンしていたお前達のお父さんは、オレが可愛い可愛いと絡みまくったおかげで、少し態度も軟化して」
「え? ずっと女だと思ってたのか?」
「いや、男だってわかったけど、可愛い奴には可愛いって言うだろ?」
「言わねーよ?」
男は男! そもそも、可愛いって言われても嬉しくないし!
「そこの、ロワを見ても同じ事が言えるか?」
オレは視線を、猫耳フードをかぶったどこからどう見ても美少女の少年に向けた。これ、は……。
「言う」
「だろ?」
反論出来なくなっちゃった。ごめん、ロワ。
「ま、そんなわけで、それなりの時間をかけて、それなりの関係を築いてきた俺達は、全員でシュヴェルツェと戦う事になる」
とんでもなく飛ばした気もするが、確かに知りたいのはこの辺りだったのでいいか。
「皆で力を合わせて戦ったが、その戦いでほぼ全員負傷。申し訳なくなったらしく、お前らのお父さんは逃亡した」
「と、逃亡!?」
「逃亡する前に、俺も連れて行ってくれたらよかったのにな。そしたら、逃避行になったのに」
「え、っと」
割と重要な話をしているはずなのに、ルースのお父さん、ふざけすぎてて全然入ってこない。
「平たく言えば、誰のせいかと言えばシュヴェルツェのせいだった事件を、あいつは自分一人のせいだと思い込んで背負って、勝手に離れていったんだよ。俺達を怪我させてしまったのも自分だ、なんて思いこんでな。あいつ自身も、目と足をやってんのにさぁ」
……ああ、本当に親父の知り合いなんだ。
別に疑っていたわけではないが、この場にいない親父の怪我しているところを知っているんだから、全然知らない人である可能性は全くなくなった。友達かどうかは、まだちょっとわかんないけど。
「もしかして、足……」
「おう、その時にちょっとやっちまったから、今は引きずってるんだよ。足を引きずろうが引きずらなかろうが、俺が楽しく生きるのには何の関係もないんだけどな!」
オレは、ふと、この人が登場した時に足を引きずっていた事を思い出した。
「しかも、引きずってても強いから! ルースやらベルやらに、一通り戦い方を教えられる程度には、な」
えー! この人、ベルとかルースに戦い方教えたのか!?
あ、でもなぁ。親父もオレとスティアに教えてくれたもんな。不自由でも強い人は強いよな! うちの親父みたいに!
「でも、あいつはビビりだ。お前達二人を愛しているせいで、肝心な事を何も教えていない」
ビ、ビビり。違うし、うちの親父、ビビりじゃないし。
「肝心な事、とは?」
「シュヴェルツェの、倒し方だ」
スティアはやや苛立たし気に尋ねた。
返ってきた答えに、今度はオレ達二人が固まったが。
「あー……今ここにいる精術師の坊ちゃん嬢ちゃんの中で、倒し方を知らない人、挙手」
オレはそろそろと手を上げ、スティアも上げた。見ると、キラキラ集団の下の三人とベルンシュタイン姉弟も手を上げているようだ。
つまり、若い人はヴァイスハイトの家と、グレンツェントの上二人、エーアトベーベン兄弟以外の、全員だ。
エーアトベーベン兄弟は、状況から察するに、エーアトベーベンの大元が教えてくれていたのだろう。
「言うぞ。いいな?」
ルースのお父さんは周りに確認をする。
「うぐっ」
テロペアのお父さんが呻く。
「何で?」
「それは、あいつがツークフォーゲルを使って、自分の地位を獲得しようとしていたからよ」
「あ、これ、グレンツェントのお母さんな」
オレの質問には、派手な女の人が答えた。キラキラ集団の先頭だった女の人だ。
一応言っとくな、とばかりにルースのお父さんがその人を指さす。どっちかというと「これー」って感じの指し方だ。
「グレンツェント。ケイリー・グレンツェントよ。でも、そんなに一気に覚えられないだろうし、そこの変態のママ、って感じで覚えていいから」
そう言って指差したのは、先ほど妹に可愛い可愛い言いまくったり、服を片手にシアにものすっごく寄っていっていた男だった。確か、ファイン、って言ったっけ。
オレ達も一通り名乗ると、その、ファインのお母さんが「消えかけのツークフォーゲルと一緒に現れた、無名の精術師だったからね」と話を続けた。
「ま、あたしの場合は、ただ単純に突っかかってたって感じだったんだけど、問題はそこの今や完全なるヘタレ野郎になってるヴァイスハイトさん家のバカ」
「お、お前なぁ!」
「および、その父。親子二人がかりで、右も左も分からず、家族に恵まれていないレヴィンを責める責める。結果、何も教えてもらっていなかったレヴィン少年は、精術師にすら不信感を抱いた。事実上、信じられる人が誰もいなくなった、ってところね」
ファインのお母さん、強い。有無を言わせずテロペアのお父さんを黙らせると、そのままべらべらと続けた。
それにしても、親父、環境が悪かったんだな。それで守銭奴になっちゃったのかな……。
あ、でも、それだとスティアの守銭奴の理由がつかないから、守銭奴は遺伝性なのかもしれない。
……オレも、守銭奴にならないと?
「レヴィンは生意気な性格とお得意の守銭奴っぷりで、色んな所にやっかまれてたよ」
精術師というだけで、何故か敵を作る。そこに守銭奴までプラスしたって事は、きっと学生時代に色んな人と金銭トラブルを起こしたんだろう。
「この情報、売ってやってもいいけどー?」って、ふっかけたとか。
「かくいう俺は、女装していたレヴィンに一目ぼれして声をかけて一緒にご飯を食べに行ったタイプの人間だけどな!」
「いやいやいや、おかしいだろ! 何で親父、女装してるんだ!」
急に話についていけなくなったぞ!
「で、まぁ、その辺は軽く流すとして」
流すのか! 気になるんだけど!
……いや、流してもらった方がいいか。親父が女装してたっていう衝撃的発言だったわけだし。なかった事にしよう。脳内ないない。ないないする情報。あんまり考えたくないし。
「まぁ、とにかく色んな人にツンツンしていたお前達のお父さんは、オレが可愛い可愛いと絡みまくったおかげで、少し態度も軟化して」
「え? ずっと女だと思ってたのか?」
「いや、男だってわかったけど、可愛い奴には可愛いって言うだろ?」
「言わねーよ?」
男は男! そもそも、可愛いって言われても嬉しくないし!
「そこの、ロワを見ても同じ事が言えるか?」
オレは視線を、猫耳フードをかぶったどこからどう見ても美少女の少年に向けた。これ、は……。
「言う」
「だろ?」
反論出来なくなっちゃった。ごめん、ロワ。
「ま、そんなわけで、それなりの時間をかけて、それなりの関係を築いてきた俺達は、全員でシュヴェルツェと戦う事になる」
とんでもなく飛ばした気もするが、確かに知りたいのはこの辺りだったのでいいか。
「皆で力を合わせて戦ったが、その戦いでほぼ全員負傷。申し訳なくなったらしく、お前らのお父さんは逃亡した」
「と、逃亡!?」
「逃亡する前に、俺も連れて行ってくれたらよかったのにな。そしたら、逃避行になったのに」
「え、っと」
割と重要な話をしているはずなのに、ルースのお父さん、ふざけすぎてて全然入ってこない。
「平たく言えば、誰のせいかと言えばシュヴェルツェのせいだった事件を、あいつは自分一人のせいだと思い込んで背負って、勝手に離れていったんだよ。俺達を怪我させてしまったのも自分だ、なんて思いこんでな。あいつ自身も、目と足をやってんのにさぁ」
……ああ、本当に親父の知り合いなんだ。
別に疑っていたわけではないが、この場にいない親父の怪我しているところを知っているんだから、全然知らない人である可能性は全くなくなった。友達かどうかは、まだちょっとわかんないけど。
「もしかして、足……」
「おう、その時にちょっとやっちまったから、今は引きずってるんだよ。足を引きずろうが引きずらなかろうが、俺が楽しく生きるのには何の関係もないんだけどな!」
オレは、ふと、この人が登場した時に足を引きずっていた事を思い出した。
「しかも、引きずってても強いから! ルースやらベルやらに、一通り戦い方を教えられる程度には、な」
えー! この人、ベルとかルースに戦い方教えたのか!?
あ、でもなぁ。親父もオレとスティアに教えてくれたもんな。不自由でも強い人は強いよな! うちの親父みたいに!
「でも、あいつはビビりだ。お前達二人を愛しているせいで、肝心な事を何も教えていない」
ビ、ビビり。違うし、うちの親父、ビビりじゃないし。
「肝心な事、とは?」
「シュヴェルツェの、倒し方だ」
スティアはやや苛立たし気に尋ねた。
返ってきた答えに、今度はオレ達二人が固まったが。
「あー……今ここにいる精術師の坊ちゃん嬢ちゃんの中で、倒し方を知らない人、挙手」
オレはそろそろと手を上げ、スティアも上げた。見ると、キラキラ集団の下の三人とベルンシュタイン姉弟も手を上げているようだ。
つまり、若い人はヴァイスハイトの家と、グレンツェントの上二人、エーアトベーベン兄弟以外の、全員だ。
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「言うぞ。いいな?」
ルースのお父さんは周りに確認をする。
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