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三章
3-64 撮ってるよ!
しおりを挟む「おお! すげぇ!」
オレはカメラで写真を取りながらも歓声を上げた。放射状にぶわーっとした風で、それぞれが対応したシーンでのことだ。
あの風が跳ね返ってぶわーっとなるやつ、オレにも覚えがある。サフランやらシュヴェルツェやらが出てきた、そしてオレが実力不足を痛感した、あの日に。
風と風が正面からぶつかるのを客観的に見ると、こんな感じなんだなぁ、と思いつつも、当時のオレは尻もちをついてしまったのも思い出してちょっとがっかりしそう。あの髭のおっさんとお揃いかぁ。
いや、苦い思い出は胸にしまって、とりあえずは目の前の光景だ。
髭のおっさんが尻もちをついたのはもちろん、それぞれの風への対応がこの試合の大きな見どころになったらしい。あちらこちらから歓声が上がっている。
そして、オレがここまで連れてきてしまった、デンドロビウムは「お兄ちゃん、がんばれー」と声援を送っていた。この子の兄と言えば、あのさっきまでベルに執拗に狙われていたツルバギアとかいうヤツの事。
最初の内は、ここが敵陣というのがあったのか、はたまたただの緊張だったのか、身を小さくしていたが、この場の世話焼きメンバーによって今はのびのびと応援している。うんうん、いい事だ。
オレはデンドロビウムへと向けていた関心を、再び試合会場へと向け、そしてカメラを構えた。
とりあえず、テロペア。こいつ、双剣使いだったんだなぁ。一回オレと模擬戦してくれないかなぁ。
次にベル。微笑んでいるのが怖い。こいつ、何で怒ると笑うの?
更にスティア。しかめっ面だが、とても頑張っているのがよくわかる。お兄ちゃん、応援してるからな。
そうやって写真を撮った流れで、ついでにツルバギアさんの写真も撮った。
光景の写るすげー紙は、ちょっとしたらすぐに撮った場面が浮き上がる。オレはそれを、デンドロビウムへと渡す。
「あげる」
「いいの?」
「いーよ、いーよ。お兄さんの写真、一枚もないのは寂しいしね」
なぜか答えたのは所長だった。そうだった、このすげー紙、備品だった!
「あ、ありがとう!」
デンドロビウムは、嬉しそうに写真を軽くギュっとする。本当はぎゅーっとしたいのをこらえて、写真がシワシワにならないようにと気を付けているようだ。
「ねぇ、ちゃんとベルの写真も撮ってる? 良いのいっぱい取ってよね」
「撮ってるよ! ベルのもスティアのも、ついでにテロペアのも撮ってるよ!」
「うんうん、いいね。ありがとう」
所長、もう、ベルの事しか考えてないだろ……? いや、いいんだけど。
「あ、オレもベルとテロペアの写真欲しいッス! スティアちゃんのも!」
「妹のは絶対にやらん。誰がチャラついた眼鏡に渡すか!」
「えー」
ススっと入ってきたルースの事は一蹴。さすがにちゃらちゃらした奴にうちの可愛い妹の写真をやるほど、オレは寛容ではない。
ただ、このやり取りもコミュニケーションの内というか、そういう雰囲気がある。
みんなでワイワイしながら、試合の進行に注目をした。
***
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