無限迷宮のシーカー

無名

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 俺は魔避けの結界を地面に塗布し、トイレの中で寝た。男子便所が壊れていたので、女子便所の中で寝た。汚いとか言っていられない。とにかく睡眠が必要だった。水場が近いし、用を足せる。ここの水洗トイレはまだいくつか生きていたのでちょうど良かった。

「上階にある貯水槽がまだ生きているのか?」

 古い階層だと言うのに、破壊されていない物が多く目立つ。どうやら、ダンジョンマスターに攻め滅ぼされたのは本当らしい。マスターが使役する魔物は人間しか襲わないからな。建物などを壊すような命令は魔物どもには受けていない。だからこの階層にはまだ使えるようなものが残っていたのか。

 俺はトイレで横になり、外套にくるまって寝る。トイレの匂いはすでにカビしかしないので、俺には気にならなかった。

 ☆☆

 数時間後、俺は目を覚ました。魔物避けの結界がまだ光っていたので、四時間以上は寝たようだ。

 俺は排泄をすませると、水を流してトイレを出る。俺は上の階層に向かうため、重金属製の特殊ワイヤーを用意する。これでロッククライミングをする。天井付近には「上の階層へ続く排気口」があるはずだ。この階層には二酸化炭素を浄化するシステムが無かったので、上の階層に続く排気口があると思われる。

 俺はその排気口にもぐりこんで上を目指す。

「さて、行くか」


 ☆☆


 八時間後、俺は上階へと続く排気口に侵入した。思った通り、排気口があった。正確には通気口かもしれないが、とにかく上へ続く道を見つけた。

 俺は狭く、よどんだ排気口の中を這って進んだ。途中、疲れて眠ってしまったが、ここには魔物がいない。食料と水もたっぷりあったので、俺はそのまま中で寝た。

 排気口の中は真っ暗だが、一本道だ。光が無くとも特に問題はない。俺はそのまま這い続け、数十時間後、ようやく排気口から出た。

 出ると、水が流れていた。どうやら下水道かそれに準ずる施設のようだ。空気の流れも速いので、大型の送風機が回っている。俺は空気が押し出される方向とは逆に、送風機の方角へ目指して歩を進める。

 そこから数時間。しばらく歩くと、スライムの群れと遭遇した。どうやら生命がいるようだ。スライムがいると言うことは、人間、もしくは獣がいる可能性が非常に高い。

 俺はスライムに聖水スプレーを撒き、いつものように撃退する。大型のスライムであれば火炎放射器が必要だが、ここには大型がいない。俺は聖水を散布して直進する。

 直進すると、梯子が見えた。梯子の上にはマンホールがある。ようやく外に続く出口のようだ。俺の愛用武器、圧力バールの出番のようだ。

 圧力設定を4程度にして、蓋をされたマンホールをこじ開ける。外に出ると、ビル群が見えた。どの階層にもある、廃墟となったビル群だ。かつて栄華を誇った文明が、ダンジョンマスターによって焼き尽くされた世界だ。

 俺は外に出てビル群を見ると、光が明滅している。千里眼の魔法を発動させて数キロ先を見渡すと、人の影が見える。洗濯物なども干されている。どうやら、この階層には人がいる。

「シーカーキャンプがこの階層にもあればいいがな。ソサエティの連中が支部を作ってくれていれば言葉も通じるんだが……」

 もしも人食いの亜人種が住んでいたら、お手上げだ。魔物と同じように駆逐対象だ。殺される前に次の階層に行かなければならない。

「食料になりそうな物資はたくさん拾ってきた。何か良い物資と交換できればいいんだがな」

 俺は光が灯るビル群へ向けて、歩き出した。人間が住んでいる集落だと、希望を込めて歩いた。  
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