成長促進魔法は世界を救う

無名

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2 反撃の狼煙1

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 僕はザッパ将軍に案内されて、魔の森という場所に来ていた。

「ここが手つかずの、「魔の森」です。開墾しようにも、魔獣が沢山おりましてな。近くの村にも被害を出す始末。かなり遠いですが、森を抜けた先にはちょうど海があり、良い砂浜もあるので、なんとか手を入れたいのですが……。戦争が始まってからは手つかずの状態でして。王も頭を悩ませているのです」 

 僕はそうですかと簡単な相槌をうつ。ちなみにレインフォール王とは謁見済みだ。王自ら前線基地付近の砦にいたので、謁見は簡単なものだったが、とてもやつれていた。疲れているんだろう。俺は早く食料問題を解決しようと思った。

「ここは王城からそれほど遠くない森ですので、交通の便は困らないでしょう。近くの村に兵を3人常駐させますし、領主の館を使ってください。話は通してありますゆえ」

「ありがとうございます」

 僕は返事をしながら森の土を見る。

 腐葉土が堆積している。この森はとても栄養がある。巨木が多いせいか、木の根が多いが、問題ない。成長促進魔法で必要な数を間引き、朽木にしてくれる。

「魔獣が出ますゆえ、護衛をつけます。村の常駐兵ではなく、優秀な近衛騎士が二人います。どうぞお使い下さい」

 ザッパ将軍の声と共に、後ろから現れる騎士二人。

「手伝いは不要と申しましたが?」

 僕は不満そうに答える。護衛など僕にとっては足でまといだ。僕は若干18歳だが、すでにドラゴンスレイヤーの称号も持っている。レインフォールの森にはドラゴンはいないし、ドラゴン以上の魔獣がいたという話は聞いたことがない。すでに調査済みだ。

「例えエルクリッジ最強の魔法士であっても、万が一があります。どうか護衛をお付けください」 
 ザッパ将軍は頭を下げる。

 うむ……。18歳ということが仇になったか。成人して間もないしな。

 もしかしたら、戦闘能力うんぬんよりも、ただのお目付け役か? 本当に仕事ができるかどうか確認するための護衛か?

 ザッパ将軍は、護衛二人を残し、何か護衛に話をして去っていった。

 どうやらザッパ将軍はかなり忙しいらしく、申し訳なさそうに僕に頭を下げて、どこかへ行った。

 仕方ないので、僕は護衛としてついた二人に挨拶をすることにした。

「よろしくおねがいします。ライアンです。エルクリッジの魔法士です」

 僕は頭を下げる。握手を求めようとしたが、その前に騎士の一人が喋った。

「貴方がライアンですか。話は聞いております。若干18歳にして、最強の魔法士の名を欲しいままにするとか。一度そのお力、拝見したいと思っておりました」

 にっこりと笑う護衛の騎士様。どうやら女騎士のようだ。

 彼女は微笑むが、目が笑っていない。護衛というのに、僕に敵対心を抱いているのか?

 彼女はショートカットで男の子のような顔つきだ。僕をにらみつけるように見ると、こう言った。

「期待しておりますよ?」

「え、ええ。よろしくお願いします」

 僕は信頼の証として、握手を求めて手を出すが、その手が空を切る。

 握手を求めたのに彼女は僕の手を取らなかった。やはり警戒されているのか?

「こら! 何をしているクーネ! ちゃんと挨拶せんか!! 頭も下げず、握手も拒否するとは何事だ!!」

 もう一人後ろに控えていた老騎士が怒鳴った。

「すみません、ライアン殿。私はサヴァンです。彼女はクーネ。魔法騎士です。遠くから来ていただいたのに、この不始末。本当に申し訳ありません」 

 サヴァンという老騎士は、ぺこぺこと頭を下げてくる。逆に女騎士のクーネは毅然とした態度だ。 

 うーむ。

 なんだかわけありなのか? 

 まぁいい。前途多難ではあるが、護衛など最初から期待していないし、いらない。

 僕には優秀な魔法と、これから呼び出す「使い魔」たちがいる!!

 さぁ。帝国への狼煙をあげるぞ!

 僕はレインフォール王国、魔の森を前にし、自慢の魔法をさく裂させた。
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