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1 プロローグ
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僕は大農家である両親の元に生まれた。
一人息子として大事に育てられ、僕は父に与えられた力を磨きに磨いた。
そして極めた。
成長促進魔法を。
これは、父より受け継いだ遺伝魔法の話だ。
無敵の魔法、成長促進魔法の話だ。
★★★
僕の父はとても立派な人である。昔は冒険者として名を馳せた一人だが、父さんは世界でも珍しい成長促進魔法を使える。あらゆる生物の成長を促進させる事が出来、遺伝子改良などお手の物だ。
父さんはこの成長促進魔法を使い、農家として起業した。
もちろん農業は大成功で、父さんは世界最高の農家として歴史に名を刻むことになる。今もなお、伝説を作り続けている。
ここ、エルクリッジ王国は父さんのおかげで食には困らない。この国に、飢えで死ぬ人はいない。病死か、事故死と言った類しかない。他の国は飢え死にが多いが、エルクリッジは豊かな国だ。絶対に飢え死にはさせない。
エルクリッジ王国はとても豊かで強い国だが、他国が強いとは限らない。
年がら年中戦争をしていて、大地がやせ細った国はザラにある。貧富の差も特に激しい。その点、エルクリッジ王国は軍事も農業も強く、豊かな国なのだ。
魔法や科学が発展したこの世界では、戦争や貧富の差、宗教問題がなくならない。今もどこかで飢えた子供が野良犬のように死んでいる。
そんな飢えで苦しむ人々が不憫でしょうがない。
エルクリッジの大農家、エヴァン・レイノルズは立ち上がった。僕の父である。
なんとか他国にも自分の育てた野菜を食べさせたい。先進技術を教えたい。父さんは考えた。
そうだ。息子を送り出そう。18歳になった息子は、最高の魔法士だ。特に我が家秘伝の成長促進魔法は、誰にも負けない。
父さんは思ったら即行動に移った。親友であるエルクリッジの国王に頼み、同盟国であるレインフォール王国を助けようと願い出た。
レインフォールは隣国との戦争に巻き込まれた国だ。海に面している国で、船舶の技術が高い。その技術を手に入れようと、隣国が攻め込んできたのだ。
エルクリッジとレインフォールは昔からの同盟国で、お互いの食料を輸出入して成り立っていた。親しい同盟国なのだ。その国が戦争に巻き込まれた。助けないわけにはいかない。
我が国のエルクリッジも兵を送り出しているが、相手は帝国グランドスウェイル。世界でも最大規模の軍事国家だ。レインフォール王国の滅亡は時間の問題だった。
レインフォールは戦争と、食糧事情の悪化で飢えに苦しんでいるだろう。父さんはレインフォールに知り合いが多い。なんとしても助けたい。しかし大農家の主が、長い間家を開けることは出来ない。ならば最高の人材を送り込もう。それは息子、ライアン・レイノルズだ。
ライアンは僕だ。成長促進魔法を極めた若干18歳の青年だ。自分で青年というのも変な話だが、青年なのだから仕方ない。
父さんは僕に命じた。レインフォールにいる親戚や知人を助けて欲しい。お前の力なら簡単だと、そう言った。僕も同意した。
帝国など、我がレイノルズ家の魔法にかかればすぐに滅亡だ! そのくらいの力の自負があった。
エルクリッジの国王も、お前が立ち上がってくれることを待っていた! と言わんばかりに協力を願い出た。父さんは兵士でもない一般民なので、国からの徴兵が出来ない。もちろん国王の命令が直接下れば別だが、父さんは勇者で、英雄だ。国に勇者が不在なのはまずい。民が不安になる。
そこで僕に白羽の矢が立った。経験を積んでいない息子に、経験を積ませるいい機会だ。
父さんは僕をレインフォール王国に派遣することにした。
レインフォールを助けることに成功すれば、国王は僕に爵位と領地をくれるという。願ってもない報酬だ。
というわけで、同盟国を帝国の魔の手から助けるべく、僕が救援に向かうことになった。そこからのお話だ。
◇◇◇◇◇
「いやぁ、ライアン殿が援軍に来ていただけるとは! これで我が軍も安心です!」
僕は今、レインフォール王国に来ている。王城であるゲストルームにいて、現在はレインフォール将軍の一人、ザッパ将軍と話している。
「まずは食糧事情を改善しましょう。3日後に、大量の野菜をお届けします。エルクリッジの名物、大王芋を」
「ほう! 3日後と申されるか! さすが成長促進魔法を極めた天才だ! 期待しておりますぞ!」
ザッパ将軍は老将軍だ。ヒゲを蓄えた歴戦の将だが、とても気さくで話しやすい。彼は僕にものすごい期待を寄せていた。
「僕さえいれば、食糧事情は改善されるでしょう。しかし、作物を育てる場所がなければどうにもなりません。どんな荒れた場所でもかまいません。土が深くしかも大量にある、そのような土地はありませんか」
「ほう、土が深い場所ですか。今は戦争ゆえ、森ならあるが……。広さはどの程度をお考えで? 水は?」
「広さは広ければ広いほど良いです。森なら開墾します。水は不要。我がレイノルズの魔法は、全ての系統魔法を上級まで使えます。土魔法なら最上級まで使用可能です。手伝いは不要!」
「ふあはははは! なんと! いきなり森を開墾とは! さすがレイノルズ家の御曹司! 言うことが違う! ならば良い土地があります! さっそくご案内したいがよろしいか!」
「行きましょう!」
僕はすぐにソファから立ち上がる。それとともに、ザッパ将軍が握手を求めたので、がっしりと握手をしておく。
「我国の命運、託しましたぞ」
「命に変えても守ります」
僕はエルクリッジ王国の命運を背負っている。無様な真似は絶対にできん。やり遂げるぞ。
一人息子として大事に育てられ、僕は父に与えられた力を磨きに磨いた。
そして極めた。
成長促進魔法を。
これは、父より受け継いだ遺伝魔法の話だ。
無敵の魔法、成長促進魔法の話だ。
★★★
僕の父はとても立派な人である。昔は冒険者として名を馳せた一人だが、父さんは世界でも珍しい成長促進魔法を使える。あらゆる生物の成長を促進させる事が出来、遺伝子改良などお手の物だ。
父さんはこの成長促進魔法を使い、農家として起業した。
もちろん農業は大成功で、父さんは世界最高の農家として歴史に名を刻むことになる。今もなお、伝説を作り続けている。
ここ、エルクリッジ王国は父さんのおかげで食には困らない。この国に、飢えで死ぬ人はいない。病死か、事故死と言った類しかない。他の国は飢え死にが多いが、エルクリッジは豊かな国だ。絶対に飢え死にはさせない。
エルクリッジ王国はとても豊かで強い国だが、他国が強いとは限らない。
年がら年中戦争をしていて、大地がやせ細った国はザラにある。貧富の差も特に激しい。その点、エルクリッジ王国は軍事も農業も強く、豊かな国なのだ。
魔法や科学が発展したこの世界では、戦争や貧富の差、宗教問題がなくならない。今もどこかで飢えた子供が野良犬のように死んでいる。
そんな飢えで苦しむ人々が不憫でしょうがない。
エルクリッジの大農家、エヴァン・レイノルズは立ち上がった。僕の父である。
なんとか他国にも自分の育てた野菜を食べさせたい。先進技術を教えたい。父さんは考えた。
そうだ。息子を送り出そう。18歳になった息子は、最高の魔法士だ。特に我が家秘伝の成長促進魔法は、誰にも負けない。
父さんは思ったら即行動に移った。親友であるエルクリッジの国王に頼み、同盟国であるレインフォール王国を助けようと願い出た。
レインフォールは隣国との戦争に巻き込まれた国だ。海に面している国で、船舶の技術が高い。その技術を手に入れようと、隣国が攻め込んできたのだ。
エルクリッジとレインフォールは昔からの同盟国で、お互いの食料を輸出入して成り立っていた。親しい同盟国なのだ。その国が戦争に巻き込まれた。助けないわけにはいかない。
我が国のエルクリッジも兵を送り出しているが、相手は帝国グランドスウェイル。世界でも最大規模の軍事国家だ。レインフォール王国の滅亡は時間の問題だった。
レインフォールは戦争と、食糧事情の悪化で飢えに苦しんでいるだろう。父さんはレインフォールに知り合いが多い。なんとしても助けたい。しかし大農家の主が、長い間家を開けることは出来ない。ならば最高の人材を送り込もう。それは息子、ライアン・レイノルズだ。
ライアンは僕だ。成長促進魔法を極めた若干18歳の青年だ。自分で青年というのも変な話だが、青年なのだから仕方ない。
父さんは僕に命じた。レインフォールにいる親戚や知人を助けて欲しい。お前の力なら簡単だと、そう言った。僕も同意した。
帝国など、我がレイノルズ家の魔法にかかればすぐに滅亡だ! そのくらいの力の自負があった。
エルクリッジの国王も、お前が立ち上がってくれることを待っていた! と言わんばかりに協力を願い出た。父さんは兵士でもない一般民なので、国からの徴兵が出来ない。もちろん国王の命令が直接下れば別だが、父さんは勇者で、英雄だ。国に勇者が不在なのはまずい。民が不安になる。
そこで僕に白羽の矢が立った。経験を積んでいない息子に、経験を積ませるいい機会だ。
父さんは僕をレインフォール王国に派遣することにした。
レインフォールを助けることに成功すれば、国王は僕に爵位と領地をくれるという。願ってもない報酬だ。
というわけで、同盟国を帝国の魔の手から助けるべく、僕が救援に向かうことになった。そこからのお話だ。
◇◇◇◇◇
「いやぁ、ライアン殿が援軍に来ていただけるとは! これで我が軍も安心です!」
僕は今、レインフォール王国に来ている。王城であるゲストルームにいて、現在はレインフォール将軍の一人、ザッパ将軍と話している。
「まずは食糧事情を改善しましょう。3日後に、大量の野菜をお届けします。エルクリッジの名物、大王芋を」
「ほう! 3日後と申されるか! さすが成長促進魔法を極めた天才だ! 期待しておりますぞ!」
ザッパ将軍は老将軍だ。ヒゲを蓄えた歴戦の将だが、とても気さくで話しやすい。彼は僕にものすごい期待を寄せていた。
「僕さえいれば、食糧事情は改善されるでしょう。しかし、作物を育てる場所がなければどうにもなりません。どんな荒れた場所でもかまいません。土が深くしかも大量にある、そのような土地はありませんか」
「ほう、土が深い場所ですか。今は戦争ゆえ、森ならあるが……。広さはどの程度をお考えで? 水は?」
「広さは広ければ広いほど良いです。森なら開墾します。水は不要。我がレイノルズの魔法は、全ての系統魔法を上級まで使えます。土魔法なら最上級まで使用可能です。手伝いは不要!」
「ふあはははは! なんと! いきなり森を開墾とは! さすがレイノルズ家の御曹司! 言うことが違う! ならば良い土地があります! さっそくご案内したいがよろしいか!」
「行きましょう!」
僕はすぐにソファから立ち上がる。それとともに、ザッパ将軍が握手を求めたので、がっしりと握手をしておく。
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