76 / 85
第二章
74 危機感のない、戦闘開始の合図
しおりを挟む
床板を壊し、地中から出てきた生物が、俺にはすぐに分かった。
「アルマ君! 来てくれたのか!」
フンスと鼻息を鳴らすアルマ君。
「ありがとう! グッドタイミングだ!」
俺は土まみれのアルマ君に抱き着く。
穴を見るとかなり深く、大きい。人が二~三人通れるほどの穴があり、きちんと崩れ落ち無いように魔法で固められていた。それにアルマ君の仲間も来ていた。アルマ君だけで穴を掘ってきたわけではなく、十匹以上で穴を掘り進んできたようだ。
穴の中も歩きやすいように固められているのを見て感心したが、実はこの作業をしたのは、マンドラゴラたちだった。この時は気づかなかったが、どうやってか彼らは地中深くまで根を生やし、穴が崩れないように保護していたのだ。みんな協力して、俺たちが逃げる通り道を作ってくれていたのだ。
「すごいな。アルマ君。さすがだ。どうしてここまで来てくたのか分からないけど、感謝してるよ」
俺はアルマ君の甲羅をペシペシと叩き、水を与えた。穴から出てきた他のサンドドレイク達にも水を与えた。すぐに応接室がアルマジロだらけのすし詰め状態だ。
「ちょ、ちょっと待ってください! この巨大な生物は、サンドドレイクではありませんか?」
驚いたルセリアが俺に聞いてきた。
「そうだな。サンドドレイクらしいな。俺は彼らをアルマジロと呼んでいるけどな」
「ア、アルマジロ? それは種族名ですか?」
「種族名と言われると分からんが、まぁそんな感じだな」
ルセリアは口を開けて驚いている。村長も驚いているが、見慣れているアルテアは動じなかった。
「素晴らしい! なんという僥倖! よく来てくれました! さぁみなさん! この穴から逃げましょう!」
アルテアはこの場にいた村長や付き人の兵士数人に、逃げるように言った。今回の事態を引き起こしたのはルセリアかもしれないが、ルセリアにもこの穴を使って逃げるように言った。
「アルテア様。私もよろしいのですか?」
「構いません。緊急事態です! さぁ早く!」
みんなアルマ君の掘った穴に入っていくが、俺は断った。
「アルテア。俺は戦うぞ」
「は?」
アルテアが素っ頓狂な声を上げる。まさか戦うとは思わなかったのだろう。
「な、なにを言ってるんですか? 戦況は詳しく分かりませんが、神殿騎士が来ている以上、村は終わりです。逃げるのなら、空の上か地面の下しかありません。戦っても、死ぬだけです」
アルテアは死ぬと言うが、俺は戦えると思っている。これは、自信過剰や、驕りではない。
「アルマ君たちが来てくれたのなら、戦えるはずだ。武器も新調している。それに、アルテアは仲間や村人を見捨てて逃げるのか?」
遠く離れているのならまだしも、目の前にいる仲間を見捨てることは、俺には出来ん。ドンパチやっている音が、今もここまで響いてくるのだ。
「し、しかし……」
「王が先頭に立って戦うのは愚の骨頂かもしれん。だがそれでも俺は、戦うぞ」
先に逃げようとしていた村長も、俺の言葉にハッと我に返った。家族や村人を助ける前に逃げようとしたので、自分を恥じたようだった。ルセリアも、俺の言葉に目を輝かせて見ている。
「ここで戦って負けたら、全てが終わるかもしれません。それでも戦うのですか?」
「俺やリザが死んでも、すべては終わらんだろ。この戦争は、アルテアが生きていればいいんだからな」
「なっ、アオ様が死んだら、この世は終わりですよ」
「この世の終わりって、俺を過大評価しすぎだろ。それに、最悪負けそうになったら、この穴から逃げるよ」
俺だって死にたくないからな。それに一応、無策じゃない。アルマ君たちがいるのなら、砂魔法で戦える。
「村長。相手は何人くらいか分からないか? 大体でいい」
「そうですね。遠くから見たのでよく分かりませんが、100人以上いるでしょう。爆炎の魔法で村の入り口が吹き飛ばされましたので、相手は手練れの魔法使いがいます」
爆炎魔法? よくわからんが、人数は千人もいないのか? だったら尚更やれるんじゃねぇか? アルマ君たちは巨大な流砂を生み出せるんだろ? 俺の水魔法と組み合わせれば、大規模な魔法だって使えるはずだ。以前、水魔法使いのロイドに追い詰められた時よりも、状況は悪くないぞ。
「では、村人はどうなっているんだ?」
「皆、逃げようと必死に抵抗していますが、神殿騎士たちに捕まっているようです」
「ふぅん。すぐに殺されてないなら、助けられそうだな。じゃぁ、時間も無いから行ってくる。助けられそうな村人がいたら、この穴から逃げるように教えてくる」
危機感のない俺のセリフに、アルテアは怒っている。私よりもアオ様の方が大事だとか、逃げるのも戦術の内だとか、いろいろ言っているが、俺は耳を貸さない。逆に、村長やルセリアは俺の言葉に感心しているようで、ともに戦ってくれそうな雰囲気だ。
「アルマ君。いいか? 戦えるか?」
フンスと鼻息を一つ鳴らす、アルマ君とその仲間たち。実に頼もしい味方が加わったものだ。
「そんじゃぁ、行くぞー!」
間の抜けた俺の掛け声で、アルマ君たちは一列縦隊になり、応接室の扉を壊して出て行った。まるでギャグのように見えるが、生死がかかっているので、俺は真面目である。
俺は持ってきていたライフルを肩にかけて、外へ飛び出した。
「アルマ君! 来てくれたのか!」
フンスと鼻息を鳴らすアルマ君。
「ありがとう! グッドタイミングだ!」
俺は土まみれのアルマ君に抱き着く。
穴を見るとかなり深く、大きい。人が二~三人通れるほどの穴があり、きちんと崩れ落ち無いように魔法で固められていた。それにアルマ君の仲間も来ていた。アルマ君だけで穴を掘ってきたわけではなく、十匹以上で穴を掘り進んできたようだ。
穴の中も歩きやすいように固められているのを見て感心したが、実はこの作業をしたのは、マンドラゴラたちだった。この時は気づかなかったが、どうやってか彼らは地中深くまで根を生やし、穴が崩れないように保護していたのだ。みんな協力して、俺たちが逃げる通り道を作ってくれていたのだ。
「すごいな。アルマ君。さすがだ。どうしてここまで来てくたのか分からないけど、感謝してるよ」
俺はアルマ君の甲羅をペシペシと叩き、水を与えた。穴から出てきた他のサンドドレイク達にも水を与えた。すぐに応接室がアルマジロだらけのすし詰め状態だ。
「ちょ、ちょっと待ってください! この巨大な生物は、サンドドレイクではありませんか?」
驚いたルセリアが俺に聞いてきた。
「そうだな。サンドドレイクらしいな。俺は彼らをアルマジロと呼んでいるけどな」
「ア、アルマジロ? それは種族名ですか?」
「種族名と言われると分からんが、まぁそんな感じだな」
ルセリアは口を開けて驚いている。村長も驚いているが、見慣れているアルテアは動じなかった。
「素晴らしい! なんという僥倖! よく来てくれました! さぁみなさん! この穴から逃げましょう!」
アルテアはこの場にいた村長や付き人の兵士数人に、逃げるように言った。今回の事態を引き起こしたのはルセリアかもしれないが、ルセリアにもこの穴を使って逃げるように言った。
「アルテア様。私もよろしいのですか?」
「構いません。緊急事態です! さぁ早く!」
みんなアルマ君の掘った穴に入っていくが、俺は断った。
「アルテア。俺は戦うぞ」
「は?」
アルテアが素っ頓狂な声を上げる。まさか戦うとは思わなかったのだろう。
「な、なにを言ってるんですか? 戦況は詳しく分かりませんが、神殿騎士が来ている以上、村は終わりです。逃げるのなら、空の上か地面の下しかありません。戦っても、死ぬだけです」
アルテアは死ぬと言うが、俺は戦えると思っている。これは、自信過剰や、驕りではない。
「アルマ君たちが来てくれたのなら、戦えるはずだ。武器も新調している。それに、アルテアは仲間や村人を見捨てて逃げるのか?」
遠く離れているのならまだしも、目の前にいる仲間を見捨てることは、俺には出来ん。ドンパチやっている音が、今もここまで響いてくるのだ。
「し、しかし……」
「王が先頭に立って戦うのは愚の骨頂かもしれん。だがそれでも俺は、戦うぞ」
先に逃げようとしていた村長も、俺の言葉にハッと我に返った。家族や村人を助ける前に逃げようとしたので、自分を恥じたようだった。ルセリアも、俺の言葉に目を輝かせて見ている。
「ここで戦って負けたら、全てが終わるかもしれません。それでも戦うのですか?」
「俺やリザが死んでも、すべては終わらんだろ。この戦争は、アルテアが生きていればいいんだからな」
「なっ、アオ様が死んだら、この世は終わりですよ」
「この世の終わりって、俺を過大評価しすぎだろ。それに、最悪負けそうになったら、この穴から逃げるよ」
俺だって死にたくないからな。それに一応、無策じゃない。アルマ君たちがいるのなら、砂魔法で戦える。
「村長。相手は何人くらいか分からないか? 大体でいい」
「そうですね。遠くから見たのでよく分かりませんが、100人以上いるでしょう。爆炎の魔法で村の入り口が吹き飛ばされましたので、相手は手練れの魔法使いがいます」
爆炎魔法? よくわからんが、人数は千人もいないのか? だったら尚更やれるんじゃねぇか? アルマ君たちは巨大な流砂を生み出せるんだろ? 俺の水魔法と組み合わせれば、大規模な魔法だって使えるはずだ。以前、水魔法使いのロイドに追い詰められた時よりも、状況は悪くないぞ。
「では、村人はどうなっているんだ?」
「皆、逃げようと必死に抵抗していますが、神殿騎士たちに捕まっているようです」
「ふぅん。すぐに殺されてないなら、助けられそうだな。じゃぁ、時間も無いから行ってくる。助けられそうな村人がいたら、この穴から逃げるように教えてくる」
危機感のない俺のセリフに、アルテアは怒っている。私よりもアオ様の方が大事だとか、逃げるのも戦術の内だとか、いろいろ言っているが、俺は耳を貸さない。逆に、村長やルセリアは俺の言葉に感心しているようで、ともに戦ってくれそうな雰囲気だ。
「アルマ君。いいか? 戦えるか?」
フンスと鼻息を一つ鳴らす、アルマ君とその仲間たち。実に頼もしい味方が加わったものだ。
「そんじゃぁ、行くぞー!」
間の抜けた俺の掛け声で、アルマ君たちは一列縦隊になり、応接室の扉を壊して出て行った。まるでギャグのように見えるが、生死がかかっているので、俺は真面目である。
俺は持ってきていたライフルを肩にかけて、外へ飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる