この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

無名

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第二章

74 危機感のない、戦闘開始の合図

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 床板を壊し、地中から出てきた生物が、俺にはすぐに分かった。

「アルマ君! 来てくれたのか!」

 フンスと鼻息を鳴らすアルマ君。

「ありがとう! グッドタイミングだ!」

 俺は土まみれのアルマ君に抱き着く。

 穴を見るとかなり深く、大きい。人が二~三人通れるほどの穴があり、きちんと崩れ落ち無いように魔法で固められていた。それにアルマ君の仲間も来ていた。アルマ君だけで穴を掘ってきたわけではなく、十匹以上で穴を掘り進んできたようだ。

 穴の中も歩きやすいように固められているのを見て感心したが、実はこの作業をしたのは、マンドラゴラたちだった。この時は気づかなかったが、どうやってか彼らは地中深くまで根を生やし、穴が崩れないように保護していたのだ。みんな協力して、俺たちが逃げる通り道を作ってくれていたのだ。

「すごいな。アルマ君。さすがだ。どうしてここまで来てくたのか分からないけど、感謝してるよ」

 俺はアルマ君の甲羅をペシペシと叩き、水を与えた。穴から出てきた他のサンドドレイク達にも水を与えた。すぐに応接室がアルマジロだらけのすし詰め状態だ。

「ちょ、ちょっと待ってください! この巨大な生物は、サンドドレイクではありませんか?」

 驚いたルセリアが俺に聞いてきた。

「そうだな。サンドドレイクらしいな。俺は彼らをアルマジロと呼んでいるけどな」 

「ア、アルマジロ? それは種族名ですか?」

「種族名と言われると分からんが、まぁそんな感じだな」

 ルセリアは口を開けて驚いている。村長も驚いているが、見慣れているアルテアは動じなかった。

「素晴らしい! なんという僥倖ぎょうこう! よく来てくれました! さぁみなさん! この穴から逃げましょう!」

 アルテアはこの場にいた村長や付き人の兵士数人に、逃げるように言った。今回の事態を引き起こしたのはルセリアかもしれないが、ルセリアにもこの穴を使って逃げるように言った。

「アルテア様。私もよろしいのですか?」

「構いません。緊急事態です! さぁ早く!」

 みんなアルマ君の掘った穴に入っていくが、俺は断った。

「アルテア。俺は戦うぞ」

「は?」

 アルテアが素っ頓狂な声を上げる。まさか戦うとは思わなかったのだろう。

「な、なにを言ってるんですか? 戦況は詳しく分かりませんが、神殿騎士が来ている以上、村は終わりです。逃げるのなら、空の上か地面の下しかありません。戦っても、死ぬだけです」

 アルテアは死ぬと言うが、俺は戦えると思っている。これは、自信過剰や、驕りではない。

「アルマ君たちが来てくれたのなら、戦えるはずだ。武器も新調している。それに、アルテアは仲間や村人を見捨てて逃げるのか?」

 遠く離れているのならまだしも、目の前にいる仲間を見捨てることは、俺には出来ん。ドンパチやっている音が、今もここまで響いてくるのだ。

「し、しかし……」

「王が先頭に立って戦うのは愚の骨頂かもしれん。だがそれでも俺は、戦うぞ」

 先に逃げようとしていた村長も、俺の言葉にハッと我に返った。家族や村人を助ける前に逃げようとしたので、自分を恥じたようだった。ルセリアも、俺の言葉に目を輝かせて見ている。

「ここで戦って負けたら、全てが終わるかもしれません。それでも戦うのですか?」

「俺やリザが死んでも、すべては終わらんだろ。この戦争は、アルテアが生きていればいいんだからな」

「なっ、アオ様が死んだら、この世は終わりですよ」

「この世の終わりって、俺を過大評価しすぎだろ。それに、最悪負けそうになったら、この穴から逃げるよ」

 俺だって死にたくないからな。それに一応、無策じゃない。アルマ君たちがいるのなら、砂魔法で戦える。

「村長。相手は何人くらいか分からないか? 大体でいい」

「そうですね。遠くから見たのでよく分かりませんが、100人以上いるでしょう。爆炎の魔法で村の入り口が吹き飛ばされましたので、相手は手練れの魔法使いがいます」

 爆炎魔法? よくわからんが、人数は千人もいないのか? だったら尚更なおさらやれるんじゃねぇか? アルマ君たちは巨大な流砂を生み出せるんだろ? 俺の水魔法と組み合わせれば、大規模な魔法だって使えるはずだ。以前、水魔法使いのロイドに追い詰められた時よりも、状況は悪くないぞ。

「では、村人はどうなっているんだ?」

「皆、逃げようと必死に抵抗していますが、神殿騎士たちに捕まっているようです」

「ふぅん。すぐに殺されてないなら、助けられそうだな。じゃぁ、時間も無いから行ってくる。助けられそうな村人がいたら、この穴から逃げるように教えてくる」

 危機感のない俺のセリフに、アルテアは怒っている。私よりもアオ様の方が大事だとか、逃げるのも戦術の内だとか、いろいろ言っているが、俺は耳を貸さない。逆に、村長やルセリアは俺の言葉に感心しているようで、ともに戦ってくれそうな雰囲気だ。

「アルマ君。いいか? 戦えるか?」

 フンスと鼻息を一つ鳴らす、アルマ君とその仲間たち。実に頼もしい味方が加わったものだ。

「そんじゃぁ、行くぞー!」

 間の抜けた俺の掛け声で、アルマ君たちは一列縦隊になり、応接室の扉を壊して出て行った。まるでギャグのように見えるが、生死がかかっているので、俺は真面目である。

 俺は持ってきていたライフルを肩にかけて、外へ飛び出した。



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