この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

9 リザを護衛に雇う

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 リザが頭を下げてきたので、俺も少しびっくりした。子供に頭を下げる冒険者がいるとは思わなかった。それとも、俺が盗賊の手下か何かだと思っているのだろうか? だから今は下手に出ているのだろうか? リザの水を欲しがる態度が尋常じゃないので、少し勘ぐってしまう。

「食料の関係もあって、隣のレミル村に向かっているんだ。川に寄っている時間が無い」

「なに? 隣のレミル村? それなら、井戸が枯れていたぞ。村人はすでに退去していた。食料は無いと思うぞ」

 え? 隣村のレミル村は、まだ井戸が生きていると聞いたが、違ったのか? まずいそうなると、オルフェに食わせる牧草とかが無い。

「牧草も残ってなかったか?」

「牧草? あぁ家畜の餌か。分からない。でも、馬や牛はそのまま放置されていたから、まだあるかもしれない」

 家畜を放置して自分たちだけ逃げたのか。よほど水に飢えているな。

「アオ君。正直に言うが、私は隣の国から来たんだ。国境を越えて、危険な山を越えてきたんだ。水が欲しくて、頑張ってきたんだ。だけど、この国も水不足だった」

 へぇ。リザはこの国の人間じゃなかったのか。ということは、隣の国も水不足か。もしかして、世界的な水不足なのか?

「頼む。川に案内してくれ。君の護衛は私がする。この森に住む魔物程度なら、私の敵じゃない」

 ほう。リザは強いのか。ライフルを持っているしな。だけど、大勢に囲まれたらどうする気だ? 相手は狼たちだぞ。俺は出会ったばかりのリザを信用できない。

「ダメだ。オルフェに食べさせる食料が無いんだ」

「じゃ、じゃぁ、君の水を少し分けてくれないか? 金なら払う」

 リザは子供の俺に頭を下げてきた。よほど水が欲しいようだ。俺から奪おうとしないあたり、リザの人の良さがうかがえる。信用するかどうかは別として、誠実な人間には見える。

「ダメか? 水筒の半分でいいんだ」

「半分か……」

 俺は思った。リザを護衛として雇うのはどうだろうか? 

 俺は水魔法である程度の魔物は倒せるが、魔力が少ない。持久力が無いので、大勢で来られたらすぐにやられる。

 嘘か本当か分からないが、リザは強いらしい。冒険者だというし、この女を俺の護衛に雇えば、今後の旅が楽になる。裏切られるかもしれないので、そこは賭けになる。

「リザは、何が目的で旅をしてるんだ?」

「何が目的って、さっき言った通り、水だよ。この世の楽園、オアシスだよ。私は、水と食べ物に苦労せず暮らせる、オアシスを求めてる。東の砂漠にオアシスがあるみたいだけど、たどり着く前に死んでしまう。飛竜か飛行船がないと、行けっこない」

 そうか。水に困らない場所を探しているのか。冒険者がみんなそうなのか知らないが、リザはオアシスに行きたいのか。

「じゃぁリザ。俺もオアシスを目指しているから、一緒に来てくれないか? 水ならまだあるから」

 俺はリザに提案してみる。

 多分、俺の予想だと、断ると思う。俺はまだ子供だし、旅だと足手まといになる。もしも断られたら、その時は俺の水魔法を見せるか? 

「どのくらい水を持っているんだ?」

「小屋の外にドラム缶がある。そこに半分くらい入ってるよ」

「え!?」

 リザは俺の言葉を聞いて、小屋の外に向かう。ドラム缶の中を覗くと、毒水を浄化した純水が入っていた。

「こ、こんなに? 一体どうやって」

 リザは驚いていたが、俺は教えない。

「一緒に来てくれないか? お金はいらないし、水ならやる。そのかわり、俺とポニーのオルフェを守ってくれ」

「……分かったわ。行きましょう」

 リザは俺を見て訝しんでいたが、来てくれることになった。大量の水を持っていたのでかなり疑っていたが、俺の護衛をしてくれることになった。嬉しい誤算だったが、リザが良い奴で助かった。俺の村の奴らがクズだったので、リザをかなり疑ってしまったが、やはり良い奴はいるのだ。


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