この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

無名

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第一章 伝説の水魔法使い

33 襲われていたのは……

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 前方10時の方向、900メートル。

 馬車と思われる乗り物が倒れ、その付近に人が数名死んでいる。

 それが、俺とリザがスコープで見た感想だ。

「しかし、良く見つけたな、アオ君。お手柄だ」

「いや、たまたまだよ」

 本当に、偶然だ。俺がライフルで遊んでいなければ、見つけられなかった。

「でもアオ君。このスコープで見る限り、盗賊の姿が無い。それに、倒れている人間の死に方が不自然だ」

 リザはスコープの倍率を上げたり下げたりして、前方の状況を確認している。

 俺たちがこれから進もうとしている街道は、わずかに左カーブしている。 

 カーブしているので、木々が邪魔をしてすべてを見通すことができない。夜明け前で暗いし、暗視装置付きと言っても、完璧に見えるわけでもない。

 だが、それでも、おかしい。

「盗賊なら、あんなにむごい殺し方をしない。というか、殺すよりも連れ去って奴隷にするはずだ」

「奴隷にするのか?」

「普通ならそうする。無駄に殺しはしないだろう」 

 俺が見た限り、倒れていた死体は首から上が無かった。ぐちゃぐちゃに吹き飛んでいた。映画の見すぎか、特に何も思わなかったが、人が死んでいるのは気持ちが良いものではない。

「もしも死んでいるのが冒険者や一般人でなかったら、大変だぞ」

「それはどういうことだ?」

「あそこで死んでいるのは、盗賊の可能性もある」

「え?」

 盗賊が殺されている? 街道のど真ん中で? なぜ?

「ここからでは良く見えないが、馬車の壊れ方がおかしい。荷台が一部粉砕しているように見える」

 荷台が粉砕? 盗賊が襲って壊したんじゃないのか?

「なにかおかしい。このまま進むのは危険すぎる」

「じゃぁどうするんだ? このまま待っているのはまずいんじゃないか?」

「そうだな。このままでは進めんな」

 牛車を引っ張っているんだ。林の中を進めるわけがない。
 
 リザと話し合い、早急に引き返すことが決まった。牛車を引っ張っていなければ進んだかもしれないが、もしこのまま襲われたらひとたまりもない。そう考え、方向を反転させた時だった。オルフェが騒いだ。

「どうしたオルフェ?」

 状況を見るために牛車の外に出ようとしたが、リザに止められた。

「出るなアオ君!!」

 リザがライフルを持っていきなり連射した。オルフェを襲おうとした何かに向けて、リザはライフルをぶっ放した。その何かは、俺たちの頭上を越える大ジャンプをして、リザの弾丸を避けた。

「な!? オルフェ! 無事か!? こっちにこい!」

 俺はオルフェを牛車の近くに呼ぶ。怯えて体が震えていたが、トコトコと俺に近寄ってくる。

「アオ君。どうやら、前の馬車を襲った犯人が分かった」

 牛車の外には、魔物がいる。しかも一匹だけだ。

 しかもそいつの名は。

「オーガだ」

「オーガだと? おい。なんでそんな奴がこんなところにいる?」

「多分、前の馬車がオークション用の奴隷に運んでいたんだろう」

「オークション用の奴隷?」

「首と足に奴隷用の鎖が付いている。多分、盗賊が前の馬車を襲ったんだ。そこにオーガが乗り合わせていて、この被害になった。それだとつじつまが合う」

 リザが言うように、確かにオーガには鉄製の鎖が付いている。あちこちに怪我もしているように見える。オーガの顔は長い髪に隠れていてよく分からない。それにボロ布を纏っており、性別もよく分からない。

「このままでは距離が近すぎる。スナイパーライフルはだめだ。突っ込まれたら、牛やオルフェ君は瞬殺される」

「瞬殺だと?」

「アオ君。君はオルフェ君に乗って逃げなさい。ここは私が食い止める」

 は? 食い止める? リザは何を言っているんだ? 本気で言っているのか? 死ぬぞ。

「世界に必要とされる水魔法使いを、こんなところで失うわけにはいかない」

 リザはいつになく本気だ。ゴキブリを食っていた時のリザじゃない。

「いつ突っ込んでくるか分からない。早くしろ」

 目の前のオーガは、口から血を垂らし、唸っている。多分この血は、人の血だろう。

 リザが早くしろと言うが、俺は逃げるつもりはない。どうにかこの場を切り抜ける手段が無いか考えていると、そこに一人の男が現れた。計ったように現れた。

「こんなことになるんじゃないかと思ったんだ。君たちの後を付けてきた甲斐があったよ。助けが必要だろ? リザ」

 そこにはライドがいた。馬に乗ったライドが、ショットガンを構えていた。
 

  

 
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