俺は自販機使いの魔王

無名

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ニホンジン魔王爆誕

魔王様、蘇る

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 古城で目を覚ましたとき、俺の不運はマックスに到達していた。理由は以下の通りである。

 俺は、大きな玉座に座りながら寝ていたらしい。意味不明だが、そうとしか言いようがない。

 大聖堂にあるパイプオルガン。その前に設置された玉座。俺はその玉座に座っている。なぜか鎧のようなものを着込んでいる。触ってみると硬く、本物。コスプレ衣装ではない。

 さらに周りを見ると、壁が壊れて穴が空いていたり、柱が崩れて落ちていたりと、かなり崩壊が進んでいる。廃墟みたいになっているが、ここは崩れかけた城だな。

 例えるなら、古城、だな。

 俺の座っている玉座だけはきらびやかで、崩れかけてはいない。そういやよく見ると俺の手、日焼けしてんな? こんな肌の色してたか?

 目覚めたばかりでよく分からんが、これは新手のドッキリか? それともまだ夢の中か?

 俺は確か、現代日本にいて、ワンルームアパートのベッドで寝ていたはずだ。それがなぜこんな場所にいる?

 どういうことだ? 俺は死んだのか? 寝ながら死んだ?  

 夢だろうと思って頬をつねったが、痛い。夢じゃないし、リアルなゲームでもない。

 次に、俺の視界に入ったものがある。それは玉座への階段を下りた先にいた者たち。俺の十数メートル先にいた者たちだ。

「なにこれ……」 

 難民となった魔族や魔物達? みたいな人たちがひしめき合っている。寒そうに、身を寄せ合っている。そこでハッと気づいた。俺の足に柔らかい物を感じた。

 俺の脚に、しがみついている少女がいた。今はスースー眠っているが、少女の顔を見て複雑な気持ちになった。ススだらけの顔で、泣きはらしたような涙の跡がある。俺の脚に縋り付いて、ぐったりと眠っている。

「なんだこの子は……」

 小さな手に写真のようなものを握っている。家族の写真か?

 俺は次に少女から視線を変え、この部屋に集まっている者たちを見た。

 魔物? 魔族? コスプレ衣装とは思えない人たちがいっぱいいる。

 彼らは少ない食料を分け合っており、怪我や傷の手当をしている人で溢れかえっている。その中で、動ける騎士達が毛布やお湯を配り歩いていた。

 俺は思った。ここはまるで、避難所になった学校の体育館だ。コスプレ大会の場所とかとはとても思えない。ここは、日本ではない。

 俺はもう一度つぶやいた。

「ナニコレ……」

 俺の目の前には珍百景が存在している。俺は、ただの会社員だ。なぜそんな俺が、漆黒の鎧を着て、巨大な玉座に座っているのか。なぜ、難民キャンプみたいな、学校の避難所みたいな、城の中にいるのか? これは新手のドッキリか? 

 誰か俺に教えてください。

 そんな俺はオロオロしながら、キョロキョロ周りを見ていた。

 すると、足元に反応アリ。俺の足にしがみついて寝ていた少女が起きたようだ。

 年の頃は5歳くらいかな? まだ可愛い幼女だ。着ている服はみすぼらしいことから、貧しい民のようだ。その幼女は俺の顔を見て言った。

「魔王しゃま。起きたの?」

 幼女は俺をじっと見ていた。スカイブルーの瞳が、俺を捉えて離さない。

 魔王しゃまってのがよく分からん。まさか俺のことなのか? 玉座に座っているし?

「魔王しゃま。おはようごぜぇます」

 幼女はむくりと起き上がり、頭を下げて挨拶した。

「お、おはよう? おはようございます? で、よろしいですか?」

 俺は大混乱している。この場をなんとか切り抜けようと、てへぺろをしながら、頭の後ろを掻いた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 俺は巨大な叫び声にビクゥッと体を震わせた。

「魔王様が! 魔王様が! お目覚めになった!」

 白い鎧を着ていた、若い騎士が泣いて叫んでいた。

 そのあまりの叫びに、傷ついた難民の皆さんは呆けた顔になっている。

 毛布やお湯を配っていた騎士さんたちも、びっくりした顔をしていますよ? 静かにしてくれませんか?

「ま、まさか。魔王様が? 蘇ったのか!?」

 ……魔王って、ナンデスカ? まさか俺のことじゃないよね? 

「魔王様! ようやく呪いから解放されたのですね!? 長かった! 本当に!」

 えっとぉ。呪い? 解放? 誰か俺に教えろください。

「魔王様! あなたは百年の眠りについていたのです! この玉座で、石像のように眠ってから百年あまり……。私はあなたのお傍を離れませんでした! 覚えておいでですか! あなたの右腕、リシャールです!」

 白い騎士は俺の手を取り、跪いて泣いていた。若い、金髪の男性騎士である。ひと目もはばからず鼻水出して号泣している。そして俺の手に、その鼻水が付着した。

 これは夢ですよね? 多分夢っていってください。

 白い騎士と、俺のやり取りを皮切りに、難民たちが大歓声をあげた。

「うおおおおおおお!! 魔王様! 魔王様!」 

 今まで死にかかっていた、ガリガリの難民や、傷だらけの兵士や騎士達が、一斉に立ち上がった。

「魔王様! 魔王様!」

 大歓声を上げて魔王魔王と連呼している。

 皆の目線は俺に向けられている。やっぱり魔王って、俺くさい。

 なんなんですか? これは? うそでしょう? 日本は消えてなくなったんですか? 誰か、助けてください。

「魔王様。人間どもをどうか、どうかその手で倒してください。我ら、魔王様の命ならば全てを捧げましょうぞ!」

 白い騎士は俺の手を握ってブンブン振ってくる。

 人間どもを倒せだって? 寝言は寝て言え、コラ! 俺は人間だぞ!っと、思って自分の体をよく見ると、俺は人間じゃありませんでした。頭に、ツノ、ありました。

「ど、どういうことだってばよ……」

 俺の不運はマックスを超えていたのだった。
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