左半身でしか魔術を使えない異世界

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一章 始まった異世界での日常

No.09 第二の依頼 洞窟探索②

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「ここらで少し休もうか…」
アッシュがその場に腰を下ろす。
「水あるか?」
「はいよ…」
俺は鞄から水筒を取り出し、アッシュに差し出す。
「ありがとう」
少し飲み、俺に渡してくる。
「俺も少し…」
今度はミレーヌに差し出す。
彼女はこれでもかと言わんばかりに首を横に振っていた。
「…飲まないのか?」
今度は縦に首を振る
「分かった…」
鞄に水筒をしまう。
「行こうか」
少しの休憩を終え、更に奥に進んでいく。
道中様々な魔物に遭遇したが、どれも大した相手ではなかった。
そして、最奥部…
「…何も無いね」
「何も無いな…」
「何も無いですね…」
入った時と同様に三人が同じ反応をした。
「どうするよ?」
「…いや待て。あそこに人が倒れてる」
俺はその人の傍に駆け出す。
「…大丈夫か?アンタ」
頬をぺちぺちと叩くが反応がない。
今度は脈を測る…脈がない。
…死んでいる…
「とりあえず担いで帰ろうか…」
ここに死体を放置する訳にも行かないので、ギルドに連れて帰る事にした。
「まさか人が死んでたとはね…」
「まぁ楽で良かったじゃない…」
バゴン!
洞窟の岩が何かで粉々に砕かれた…
そこにいたのは白いゴリラの様な魔物。
両手には手斧を携えている。
また、周りにはあの緑色のバケモノ。
「…すまん。前言撤回する」
エースがそう言うと、突然ゴリラがバケモノを食い始めた。
ぐちょぐちょという粘り気のある音が耳に残る…
「なんだ?」
「あくまであいつは食糧としてしか見てないようだ」
「逃げるか…?」
「逃げきれたとしても、街に被害が及ぶ可能性がある。ここで撃破するしかない…」
「それもそうか…」
「やるしか無さそうですね…」
ゴリラが何体かバケモノを食べた後、こちらを睨みつけ、咆哮をあげる。
咄嗟に耳を抑えたが…鼓膜に多少ダメージ。
「耳が…!」
自分の声も大して聞こえない。
「大丈夫か!エース!」
アッシュの声も届かない。
動けないエースにゴリラの手斧が振り下ろされる。
「チィ…!」
アッシュは神速の踏み込みでエースの前に立ちふさがる。
そしてそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす。
エースはこれを見て違和感を覚えた。
…今の投げ技。どこかで…?
「離れてくださいエースさん!」
連鎖爆発チェインバースト
俺が直前までいた場所が、爆発する。
「危ねぇ…」
「…これなら少しはダメージ入ったかもね」
爆煙が晴れていく…
まだあのゴリラは立ち上がるようだ
「タフだなぁ…呆れる」
アッシュが正拳突きを叩き込む。
一瞬動きが止まったが、すぐに手斧を振り下ろす。
「はぁ…エース!」
合図と共にゴリラを連続で切りつける。
「そのまま…!腕ッ!」
両腕を切り裂いたことで、横に腕が落下する。
血が吹き出す。
…勝機。
そのまま心臓に曲刀を突き立てた…



「ようやく出れた…!」
ゴリラを倒し、洞窟から出たエース達。
「ご苦労さま」
アッシュがそう言うと、ミレーヌはほっとしたのか、その場に座り込む。
エースもその場に一旦死体を置き、座る。
「それにしても何だったんだろうなこの人」
「…多分鉱石とかの収集に来た人なんじゃない?この洞窟は鉱石がよく採れることで有名だし…依頼人は洞窟の探索だけとは言ってたけど、本当はこの人…旦那さんを見つけてほしかったんじゃない?」
「…長い間いなかったら心配するだろうしな…」
きっとこの人も守るべき家庭とか、そんなものがあったのだと思う。
…エースには多分この先絶対に知り得ない物だろう。
「戻りましょう!切り替えてホラ!」
ミレーヌが俺とアッシュを明るい声で励ました。
アッシュとの会話を重いと感じたのだろう。彼女も若干顔が曇っていた…
…誰だって人が死んだら辛いさ。




「戻った…」
「エースさんおかえりなさい!…その。人は?」
受付嬢が聞いてくるが、俺は答えない。
「あの…」
「放って置いてくれないかな…少しメンタル傷ついたみたいで」
アッシュは受付嬢を説得した後、俺の耳元で囁いた。
「…しばらく休もう。な?」



3人は建物を出た…
「エースさん?大丈夫です?」
ミレーヌが聞くがエースはやはり答えない。
「…か…つごだ」
「え?」
「2ヵ月後のダンジョンの攻略…そこが第一の目標だ」
「…どうしたの?急に」
「強くなりたい…ああいう人を守れる人間になりたい」
「…ねぇエース。言わせてもらうけど…君そう思った理由はなんだい?」
アッシュが声のトーンを落とす。
「ここに来る時に…声を聞いたんだよ…天命を与えるとかなんかで…」
「それが理由?」
「いや…それでは無くて、人の死をこれ以上見たくない…自分勝手かも知れない…それでも…もう死なせたくない。」
「なるほど?つまり君は…自分を救世主と自覚した訳だ。人の為じゃなく、ただ自分のためだけに戦う愚か者に成り下がると…」
「そうだ…それで構わない…」
…夢とか希望とか。きれいごとを吐くだけの人間にはなりたくないんだ。
「…難しい話はわかりませんけど…私に出来ることがあれば言ってくださいね?」
ミレーヌも協力してくれる…
「…やるぞ。2ヵ月後…」
「はい!」
「分かったよ」
俺達は2ヵ月後のダンジョン攻略に向けて様々な依頼をこなし、ランクを上げていった。
使う武器も変わった。
そして運命の日がやって来た…






エース
武器  曲刀→サーベル
魔術  未習得
ギルドランク  B
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