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〚第一章〛〜祈り村編〜

〚6話〛「心霊現象Ⅳ」

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 というわけで腕を一箇所にまとめる事にした。
 
 「本当にすまんのう…」
 
 思っていたよりも腕が多く時間が掛かってしまったが何とか集めることができた。
 
 「はぁ…終わった……」
 「助かったわい…礼をいうぞ」
 
 一箇所に集めた腕は粘土みたいにウネウネと纏まっていきやがて、人の形になっていった。女の子…女の人…?の形がしっかりと終わったタイミングを見計らって。
 
 「もう脅かさないでくださいね…」
 「…………断る!」
 「…………。」
 「暇なんじゃよ!毎日」
 「…………。」
 「ここに来てから何年経ったと思っているんじゃ!………確か………そう!4年じゃぞ!!」
 「暇つぶしに驚かすと……?」
 「そうじゃ、村の者達は儂が見えんようで驚かせん、お主しか相手に出来んのじゃ…」
 「……」
 
 確かに誰にも構ってもらえず何年も居るのはつまらないかも……って、この人何歳だよ。
 
 「じゃぁ…名前を教えて下さい、それで許します」
 
 名前がわからなくて呼びづらいし。
 
 「ありがたいのう、儂の名前は柚希じゃ」
 
 そう言って空中に文字を浮かべて見せてくる。
 
 「そうですか、柚希さんですか…………え?」
 「え?ってなぁ…お主…、まあいいわい、どうせ儂の喋り方と合わんと思っているじゃろう」
 「はい」
 「そこだけはっきり言うでない…!この喋り方はあれじゃ、ちょっと調子乗っちゃっただけじゃ…」
 「…え?どう調子乗ったら…」
 「この4年かんずっとこの喋り方だったんじゃ…、最初は誰にも聞こえてないから好きなように喋ってやる!っと、そのまま今に至るわけじゃ…直そうにも直せんわい」
 「…つまり今日までずっと聞こえない相手に、又は独り言を言っていたと…」
 「くっ…言い返せないのが辛いわい…」
 「そういえば、柚希さんは死んじゃってお化けになったり…?」
 「そう…といえばそうじゃな。信じるかわ分からんが儂はこことは違う世界に住んでたんじゃ、そこで事故にあってな、目が覚めたらこの世界で幽霊になっていたって訳じゃ」
 「へぇ~…日本だったりして…」
 「へぇ~ってお主……え?も、もしやお主も日本…というか地球に住んでたりしたのか!?」
 
 着物着ている女の人――柚希さんが僕の目の前に迫ってくる。
 
 「そ、そうですけど、って近いです」
 「そうか…お、お主…!ラノベを知っておるか…!?」
 「…よく、読んでましたけど」
 「そうか!じゃ!じゃあ…あれとか!そ……」
 
 こうして幽霊の柚希さんとのラノベ話を主に聞く形で、夜が更けていった。
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