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〚第一章〛〜祈り村編〜

〚7話〛「かくれんぼ」

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 6歳になった。
 母親との生活にはだいぶ慣れてきたと思う。相変わらず夜に心霊現象を起こされるけど、それを見るのも日課になっていた。たまにラノベの話を。
 
 ただ、…一つだけ慣れないことがある。
 お母さんは勿論、村の人達も優しく、前の人生で、通りがかったお店や家族しか優しい人を見たこと無いせいか、何か裏があるのでは無いのか、そう考えてしまって笑うことが出来なかった。そのせいで男の人を避け、女の人には適当に相槌を打つ事しか出来なくなり、村で浮いている存在になるのは早かった。
 
 だがそんな事になっても構って来る子が居た。その子は5歳で幼馴染と言うような関係の女の子だ。
 その子のお陰か僕は浮いていてもそこまで悪い事は無かった。
 ありがたい存在だがちょっと難点もあった。
 
 「しある!おきて!」
 
 朝、めっちゃ早い時間に起こしに来るのだ…布団の上に乗って。
 
 「しある!あそぶよ!」
 
 幼馴染の紅葉が、布団の上にまたがりながら揺すってくる。なぜかふわりと甘ったるい匂いが来たので目を開けると揺すっているうちに移動したのか僕の顔の目の前まできていた。一応僕はこの世界でも女の子に生まれたのでセーフだろうけどこのままでは寝つづけれないので仕方なく起きることにした。
 紅葉に手を繋がれ眠い目を擦りながら外に連れ出された。
 
 
 
 
 ちなみに朝4時頃である。
 
 
 
 
 「よし!かくれんぼするよ!」
 「…うん、」
 
 あまりにも眠いので布団の中に隠れて寝ようかと思っていたが、どうやら僕が鬼のようで後ろを向いて30数える事になった。
 15辺りで自分が今何数えているか分からなくなってきて、何度も数え直しているとどこからか「もーいいよー」と聞こえてきたので探しに向かった。
 取り敢えず近い家から見て回って行く事にして、家の裏などを見てみると何処にも居なかったので、木の裏や社の下や周りなども見ていった。
 
 が、何処にも見当たらず、何となくまだ見ていなかった井戸周りなどを探しに向かいながら考えてみる。
 
 まさかとは思うけど……家の中とか居ないよね…?流石にこんな時間に人の家を訪ねるわけにも行かないし…、寝ている人の家で「もーいいよー」何て大声出してたりしないと良いんだけど…。
 
 なんて事を考えている内に井戸に着いたが紅葉の姿は見えなかった。まさか本当に家の中に…、と思っていると井戸の中から
 
 ポチャンッ
 
 と聞こえてきたので、まさかと思って中を覗くと。
 
 「……え?紅葉…?」
 
 朝の冷たい井戸水の中に浮かぶ紅葉の姿があった。紅葉は動かず、気絶しているのか死んでいるのかわからない状態だった。急いで助ける方法を頭に巡らせる。
 大人を呼びに行くか自分で助けるか、…大人を二人呼んで一人は紅葉を桶の中に運ぶ一人、…これは自分でいい、もう一人は桶を引き上げる人…これは…男の人…の方がいいかな…くっ…紅葉の命が掛かってるんだ!自分の気持ちなんてどうでもいい!
 震える足を進め、急いで紅葉の父親のもとへ向かった。
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