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〚第二章〛〜名無し編〜

〚35話〛「奴隷紋の儀式」

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 更に2週間後、いつの間にか蕁麻疹は治り、ダルいのも多少治ってきた頃。
 
 いつも通り仕事をこなし、奴隷売買の時間が来た。
 
 何故かその日だけは奴隷商人がやけに僕を勧めてくる。
 
 …きっと、最近病気があった僕を死なない内、金の入るうちに売っときたい…って事だろう。
 
 そして病気が目に見えなくなった今のタイミングでみんなに勧めると。
 
 そういう事だ。
 
 「この娘は、なんと珍しい!なんと白髪に赤い瞳!今ならなんと20銀貨!!」
 
 「おお!そいつぁ安い!…今だけの大特価ってか?」
 
 「そうでございます!」
 
 「ちょうど手持ちが少なかったんだわ」
 
 「おお…それは」
 
 「ああ、そいつを売ってくれ」
 
 「毎度!!ありがとうございます!」
 
 懐から麻で出来たような小袋を出すと
 
 「ほら、銀貨20枚だ」
 
 「……確かに頂きました」
 
 男はこちら向かってくる。
 
 「おい、こっちを向け」
 
 特に反抗する意味は無いので普通に向く。
 
 「今日からお前は、俺の…いや、俺達の物だ」
 
 そうらしい
 
 「では、奴隷紋を付けるのでこちらへ」
 
 僕も男に付いていく。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 部屋の奥に来ると、奴隷商が、僕がいま首に付けている枷より少し大きめの首枷を持ってきた。
 
 今つけている銀色の首枷より少し黒く、枷から垂れる鎖が途中で切れていた。
 
 「ではこちらに手をかざしてもらえますでしょうか?」
 
 そう言って持ってきた首枷を僕に持たせる。
 
 思っていたより首枷は重く、ズッシリとしていた。
 
 僕を買う男は言われたままに僕が持っている首枷に手をかざす。
 
 すると奴隷商が何か…日本語ではない言葉で、呪文のような言葉を唱えだした。
 
 「死より重き”闇の契約に”破られることなき”『奴隷紋』」
 
 唱え終わると黒い文字の鎖のようなものが現れ、僕を縛る。
 そしていつの間にか苦しくなり、耐え難い苦痛が襲ってきた。
 
 「…アガッ……グッ……ァ……アァッ……ッ!!」
 
 目の前が貧血の時のように暗くなり涎が溢れる。
 
 苦しい
 
 苦しい
 
 苦しい
 
 
 苦しい
 
 
 
 苦しい
 
 
 
 
 
 苦しい
 
 
 
 
 
 
 
 
 苦しい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 いつまでか、苦痛に耐えていると奴隷紋の儀式はいつの間にか終わっていた。
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