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〚第三章〛〜家族編〜
〚73話〛「土砂降り」
しおりを挟む気付いたらポツポツ降っていた雨は土砂降りになっていた。
足場が悪い。武器の持ち手が滑る。そんな事は関係なかった。こいつを殺さなきゃ”僕の憧れていた日常”は消えてしまう。
だが殺意に飲まれてはいけない。集中が切れる。回避が疎かになる。
ただ冷静に…こいつを殺す事だけを考える。
””
洗濯物を籠に取り込んだ母親は、すぐ帰ってくるだろうと家で洗濯物を干して待っていた。
しかしなかなか帰ってこない…。
心配になりいつも剥ぎとった素材を売りに来ているギルドへ行ってみても娘は来ていないようだ。
…ふとギルドで不穏な話が聞こえた。
「なあ知ってるかー?いま街外れの森にフォレスト•ウルフが出るらしいぜー?」
「うっわ、まじかよ…昨日薬草取りに行ったわ…こえ」
嫌な胸騒ぎがする、まさか…ね。
急いで向かおうと外に出るがさっきまでポツポツ降っていた雨はいつの間にか土砂降りになっていた。が、構わず森へ向かった。
「あ、マーサさん、いま土砂降りなので森は危険ですよ…って丸腰じゃないですか」
「娘はっ、娘は見ませんでしたか!?」
森から帰るときはいつもここを通っていた、もし帰ってきているならここを通ったはず。
「娘さんですか?見ませんでしたけど…」
やっぱり戻ってない…。
…まだ森の中に!
「行っちゃだめですよ!いくらマーサさんでも今フォレスト•ウルフの目撃情報が出ているんです、森に行かせることはできません!」
ナナの母親――マーサを女門番が止める。
「娘がっ、娘がまだ森の中に居るんです!」
「ええ!?娘さんが!?」
少し考える素振りをすると、女門番は「少し待っていてください」と言い駆け足で近くの門番が交代するための宿へ向かっていった。
マーサは気が気じゃなかった。娘がフォレスト•ウルフのいる土砂降りの中、森に居るのだ。
少しすると男兵を連れてきた。
「門番は番宿に居る新人に任せました!私達も同行します!マーサさん一人でなんて行かせられないですから!」
「マーサさん…娘さんがまだ森の中だと聞きました、絶対に探し出しましょう!!」
「…えぇ、ありがとう、急ぎましょ」
こうしてマーサ達は森へ急いだ。
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