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〚第三章〛〜家族編〜
〚74話〛「静寂に」
しおりを挟む土砂降りのせいで音が殆ど聞こえず、もし助けを求めて叫んだとしても地面に打ち付ける激しい雨音にかき消されきっと消えてしまうだろう。
ただ…こんな中、雨にも負けないぐらいの血の臭いが漂っていた。
マーサ達は先を急いだ。
マーサ達が目的地――マーサとナナが狩りをしていた場所へたどり着いた。
だがそこには木が生い茂っていたとは思えないぐらい見通しが良くなっていた。
木々はへし折られ、ここから川まで見渡せるほどの荒れっぷりだった。
マーサは視界の端で動いていた”それ”を目に止めてしまった。
地面が血で真っ赤に染まっており。
踏み場が無いほどのウルフの死体の山。
そしてフォレスト•ウルフを思わす”それ”を。
「あの死体は………フォレスト•ウルフ……?」
「…だろうな……それに…このウルフの山は一体…………マーサさん?」
男兵がマーサに声をかけるが返事はない。二人ともマーサを見てみると、マーサはある一点を見つめて、その頬には確かに涙が流れていた。
二人はマーサが向いている方を向いた。
「…ッ!!」
「……ッ!?」
二人は絶句した。
‥
……
…………
…クチャッ…
グチャクチャッ……
そんな音が聞こえるはずは無いのに聞こえていた。
雨音は無く、ただ痛いほどの静寂に、そんな咀嚼音を思わす”それ”が聞こえていた。
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