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〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚86話〛「絶望」

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 異形の怪物は川の上流から下流の僕の方へゆっくりと近付いていた。
 
 川の横には人が3人ほど通れる道のようなスペースがあり、その横は壁になっている。僕は異形の怪物の反対側の下流、右側へと這いずって逃げようとする。しかし長時間冷水に晒されていた全身は思う様に動いてはくれなかった。
 
 僕は一心不乱に怪物の恐怖から逃げていた、ただひたすら前へ進み、少しでも視界から外れたいと途中あった洞窟に曲がり、そこから分かれ道があるごとに曲がっていった。
 
 気付いたら目の前には下へと続く階段が存在していた。後ろを振り向くと、怪物は思っていたよりも移動速度が遅かったようで、姿は見えなくなっていた。
 幸い足音などは一切聞こえず、一連の出来事からの不安が出て来てしまった。
 
 壁を背に、息を殺して泣き続けた。
 一緒に戦って一緒にご飯を食べた仲間からの裏切り。そこからの酷い拷問。そして底が見えない崖からの落下と強い衝撃。落下の瞬間はきっとトラウマになってしまったんだろう、目を瞑る度にいつ来るか分からない衝撃と一瞬の衝撃。
 そして起きるたびに襲う長い激痛、一体自分の身体はどうなってしまったのかと、怖くて仕方がなかった。
 そして意味の分からない異形。
 
 帰りたい……、幸せだったナナに戻りたいよ。
 お母さん…お父さん…リーネ…怖いよ…。
 誰か……誰でもいいから……助けてよ………。
 
 …助け…?
 
 「そうだ、これをやる、助けてと念じれば何時でも助けに行けるすぐれものだ」そういってプレートのようなものを…
 
 確か…スキルに。
 
 …ステータス。
 そう念じると、空中に文字が浮びあがってくる。
 
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 名前:ヴェレナ
 年齢:16
 性別:女
 種族:人間
 職種:冒険者(奴隷)(忌み子)
 
 《ステータス》
 レベル:---
 体力:---/---
 魔力:---/---
 筋力:---
 俊敏:---
 物理耐性:---
 魔法耐性:---(+100)
 
 《固有スキル》
  ■精神崩壊(---%)
  •精神汚染無効
   •精神支配無効
    •精神汚染反射
     •精神支配反射
      •レベル消失
       •ステータス消失
        •全スキルフル強化
 
 《スキル》
 □視覚強化
  •夜目強化
   •暗視
 □鑑定
  •解析
   •鑑破
 □魔法耐性強化(+100)
 □聴覚強化
 □限界突破
  •限界超越
   •臨界突破
    •臨界超越
     •絶対超越
 □細剣術Lv99
 □回避術Lv99
  •縮地Lv99
   •爆縮Lv99
    •転移Lv99
 □短剣術Lv99
 □奴隷紋
 □お助けプレート
 □祈り村の加護
 □性的耐性
  •精神崩壊:性感無効
 □痛覚耐性
  •精神崩壊:痛覚緩和
 □精神耐性
 
 《称号》
 精神崩壊.ダンジョン攻略者.親殺し.フォレストウルフスレイヤー.忌み子
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 「…ぇ‥」
 
 思わず口から声が零れ落ちる。
 何故かステータスの数値が消え、スキルが増えていたのだ。
 
 頭を振り、こんなものを見ている場合じゃないと切り替える。
 
 ステータスが消えている事がどうでも良くなるほど、僕は怖かったのだ、助けて欲しかった。助けがほしいのだ。
 
 スキルに目をやり、探し出す、あの日謎の男に助けてもらった時に貰ったスキルを。
 
 ――お助けプレート。
 
 あった、これで…助けてもらえる…。こんな場所から出られるんだ…。
 
 スキルを見つけて安心したからか、また涙が溢れ出て、目の前の文字が滲んで見えなくなってゆく。
 
 僕の頭にはここはあの男の世界とは別の世界で、もし来れてもあの男が元いた世界に戻れる保証は無いことも。
 そもそも別の世界で助けに来る事が出来るのかという事も頭から無くなるぐらいに、このスキルを頼みにしていた。
 
 なので…
 
 お助けプレートを発動した時に、目の前に浮かんだ文字を見た瞬間に。
 
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 «エラーメッセージ»
 
 
 現在このスキルを発動できません。
 世界、または空間に転移を拒絶するバリアが張られているか。あなたのいるエリアが転移無効空間の可能性があります。一定時間経った後、または別場所へ移動して再度、スキルをお試し下さい。
 
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 希望が消えてゆく瞬間を、絶望しか無いことを。
 思い知る事になった。
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