不幸な少女の”日常”探し

榊原

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〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚90話〛「絶えない飢餓感」

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 絶えることのない飢餓感が襲う中。
 僕は今日も洞窟内を彷徨い続ける。
 
 もうこんな日々に疲れ果てていた、抜け出せないダンジョン奥底で、助けなんて来ない。
 数えた日数だけでもう何ヶ月も経っている。
 
 誰とも会わず、魔物の巣窟の中を彷徨い続ける日々が続き、僕の心は次第に黒く沈んでいった。
 
 
 
 
  僕はなんでこんな目に?
 
 
 
 
 僕は家族を守れる…”日常”を守れる強さが欲しくて…頑張っていただけなんだ………。
 
 
 
 
 なのに何故こんな目に?
 
 
 
 
 あの三人に…出会ったから。
 
 
 
 
 ホントに出会ったから?
 
 
 
 いや……信じたせいだ。
 もう信じなければいい。誰も。
 
 
 
 
 なら”日常”をまだ望んでる?
 
 
 
 
 もう望まない。
 僕が力尽くで”日常”を作り出す。邪魔する奴は殺して。
 
 
 
 
 そうだ、ならまずは何から始めよう。この身体は死なないから?
 
 
 
 
 ――何年掛かってでもこいつらを殺し尽くす。
 
 
 
 
 目の前には僕を捕食しようとしているナメクジの異形。
 
 「…殺す」
 
 僕に向いている触覚を全力で掴み取り、引っこ抜こうと力を込める。
 が、中々抜けそうに無い、ブチブチは言っているが抜ける気配がない。
 それに両足がないせいか、うまく力を込めることが出来ず、引きずられてゆく。
 
 ブチブチ言うたびに異形が叫ぶのだが、抜ける気配はなく、異形が触覚を持ったままの僕を引っ張り上げ、宙に放り出す。そして。
 
 グチョッ
 
 そんな音と共に、何度目かわからない捕食をされた。
 
 そして何日もかけて肉片が僕を形作ってゆく。そして戻った身体は異形の胃袋で目が覚める。だが再生はしても必要最低限生きれるギリギリの状態までしか再生されないので、何度も治癒をかけ直していく。
 
 ダンジョンの魔物には消化機能が無いのか、異形だから無いのか、それだと今まで喰らった獲物はどうなるのか。それはおかしいので異形の消化機能を僕の再生機能が上回っているのかも知れない。
 
 まあそんな事よりせっかく体内に入れたのだ、体内なら防御力が低いかも知れない、それを試してゆく。
 
 引っ掻いたり噛み付いたり、引っ掻くと爪が剥げそうになる。噛み付くと、確かに傷はついた。だが小さなものだった。
 
 そんな小さな事でも傷が付いたのだ、なら何度でもやればいい。時間は永遠なのだから。
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