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〚第四章〛〜絶望の底編〜
〚91話〛「異質の化物」
しおりを挟むきっともう何十時間も経っているだろう。
そんな時間を、僕はただひたすら噛み付き、肉を噛み切っていた。
何ヶ月も飲み食いしていない為、何度も食べようとしたが、なんとかギリギリの所で踏み止まっていた。
異形は噛み付くたびに叫び、引き千切るたびに暴れまくっている。
そしてステータスを確認しつつ、残りの体力が1桁を切った事がわかった。
「……はぁ…はぁ…後少し……」
異形の胃液は、消化機能があったようで、常に浸かっていた脚は皮膚が溶け、転んだときについた胴体は酷い火傷状態になっていた。
――体力:0/18220
やっと体力を削り切った事を確認すると、レベルアップの確認の為ステータスを開こうとし、思い出す。
…僕に…もうレベルアップは無いんだ…。
……
……
だけど………たとえレベルが無くても倒せる事は分かったんだ。
ならこの調子でこの階層の異形を殺していこう。強くなる事を理由に殺し始めていたが、きっと長い日々のせいで、記憶が曖昧になっているのか、異形を倒す理由がただ殺すものとなっていた。
それから僕はただひたすらと出会う異形を殺すようになった。
あれから何日…経っただろうか。
もう異形に対する恐れも大分無くなり、地上の事を忘れ始めていた頃。
空腹による苦痛はより一層激しくなり、気が狂い始めていた。
そこら辺に転がっている石ころも、伸びて鼻にかかるようになった白髪混じりの髪の毛も、異形達の腐ったような死臭がする血肉を、喰らってしまいたくなる。美味しそうに感じるようになっていた。
それからさらに何日か経つと。
何を我慢していたのか分からなくなり、何故か食べてはいけないからという理由に疑問を感じるようになり。すっかり魔物の肉という可能性がある中、魔物の肉には毒になる魔素が含まれていることを忘れていた。
終いには自分の腕に噛み付くようになり、もう殆ど理性を失っていた。
もし、この場に他の誰かが居たのならヴェレナの姿をみて逃げ出すだろう。
なぜなら何ヶ月も飲み食いしていない身体は最低限生きれる程度にしか再生されず、極限まで痩せ細り。
目元が隠れるぐらいに髪は伸び、その髪は異形の血で固まり、幾度とない恐怖で白髪混じりになって。
健康な日焼けした肌は病気を思わすかのように真っ白になっているからだ。
その姿はまるで異質の化物だった。
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