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〚第四章〛〜絶望の底編〜
〚92話〛「魔素を含んだ腐肉」
しおりを挟む何か……喰いたい。
何でもいい…、何でもいいから腹に入れたい。
苦しい……肉。
異形…の肉…を。
喰らいたい。
僕はいつもより荒く殺した異形…ナメクジのような異形の肉片を噛み千切った。
口に含んだ異形の肉片を、激しい飢餓感に耐えられず。ゆっくりと咀嚼する。
「ッ…ぉえ…」
全身が拒絶する程の不味さに嗚咽する。
涙目に成りながらもゆっくりと飲み込んだ。
「ぁ………はは……」
空腹が少しだけ満たされる。その感覚に止まらない涙が溢れる。
不味いけど美味しかった。食べる事がこんなにも幸せな事だったなんて。涙を流しながら、嗚咽しながら異形の肉を貪った。
「ヒクッ………美味い…不味い…けど‥美味しいよ………」
美味い…幸せ。
涙が止まらない。
少女が見つけた、小さな幸せだった。
ッ…!!
「…ッ‥ガハッ…!!いっ………痛い痛い痛ッ!!!」
突然襲われた痛みに、パニック状態になり、その原因がわかるまで何時間も掛かった。激痛は何十時間も続き、僕は涙や鼻水を垂らしながら悶え苦しんだ。
原因はこの異形の肉が魔物の肉と同じ性質だったということだった。
魔物の体内で毒のような性質に変異した魔素が、僕の体内を破壊していくのがわかる。
過剰に摂取した魔素が血を巡り脳に入ると、脳は突然変異し、頭蓋骨を壊して膨らんでゆく。
肺や、他の臓器が魔素を取り込み異様に膨らんでいき、あっという間に僕のやせ細った体は、変異した臓器によってボコボコに膨らみ、呼吸は出来ず、内臓からの痛みで気が遠くなり、脳の変異で視界は消えていた。
見えない視界の中、痛みや未知の恐怖でパニック状態に陥っていた。
不自然で異様な音を立てながら膨らんでゆく身体と、それに伴う痛みが襲い続ける。
そして…
まるで崖からの落下した後の衝撃のような破裂音が響き、僕の意識はそこで途切れた。
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