不幸な少女の”日常”探し

〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚110話〛「一つ消える希望」

　僕は異形の死体を眺めていた。スキルのお陰か、身体が軽く思っていたより苦戦せずに、…いや、お母さんとの約束があったから異形の視線に耐えれたんだと思う。…それとレイピアを持っていたお陰か、そんなの事を思いながら異形に近付いてゆく、そして異形の気色の悪い肉を、切り取ると手に持った。
　
　ステータスやレベルが無い僕が強くなるには異形や魔物の肉を、食べるしか無い。いくら魔物を倒そうとレベルは上がらないしステータスも上がらない。
　でも…僕は…強くならなきゃいけない…の…？今のままでも十分お母さん達を守れるようになってるんじゃないか…？
　
　もし…ここがダンジョンならこのまま階層を降りていって最深階層を攻略すれば事情に戻れる…筈。
　でも、他にも…ここから出る方法があるかも知れない…。
　
　落ちてきた場所に行けばもしかしたら何か手が見つかるかもしれない。そう思い僕は上の階層に向かっていった。
　
　
　
　
　
　
　
　出来れば落ちてきたところから上がれればと思ったが、暗視のスキルが発動しているのに、視界が届く範囲まで全く上が見えない。つまり相当上にあるって言う事だ。
　
　取り敢えず現実的じゃないが、左右の壁を蹴って上に上がっていこうと思う。左右の幅は、左側に川を挟んでかなり広く、体力と筋力と俊敏がかなり必要になりそうだった。
　
　まずは絶対超越を発動し右の壁を蹴って左の壁に飛んだ。思っていたよりしっかりと届きそのまま左右の壁を交互に蹴り上がっていく。
　
　だが…、思っていたより一回一回体力を結構使い、何十本後には既に息が切れていた。
　
　ただ、こんな事で諦めるほど、お母さんとの約束は軽くないので更に上がってゆく。
　
　暫く上がってゆくと…ある境界を境にふと絶対超越が消えてしまい、しかもステータスのプラス分まで無くなった様に力が入らなくなり蹴ったあとは全く反対側に届かず自由落下で落ちてゆく。
　
　いつかの記憶、落ちるトラウマがフラッシュバックする。
　
　「ぅ…ッ‥！」
　
　が、ある境界を抜けるとステータスが戻ったような感覚があり、絶対超越を発動した。そして、長い落下の後着地する。
　…正直落下中は異形に喰われたとき以上に怖かった。
　
　未だ心臓のバクバクが鳴る中僕は考えていた、ある境界からステータスもスキルも使えなくなる理由を…しかしそんな効果のあるダンジョンも部屋も聞いたことがなく全くわからない。
　
　一応転移を使いある境界の中やある境界の抜けた先…つまりは僕が落とされた場所辺りに座標を決めたが全く使えず、ある境界が邪魔をしているのかも知れないと思っていた。
　
　…ああ、もしかしたらあれも関係あるのかも。
　
　僕はあの時の…お助けプレートを発動した時にでた表示を思い出した。
　
　―――――――――――――――――――――――――――――――――
　
　«エラーメッセージ»
　
　
　現在このスキルを発動できません。
　世界、または空間に転移を拒絶するバリアが張られているか。あなたのいるエリアが転移無効空間の可能性があります。一定時間経った後、または別場所へ移動して再度、スキルをお試し下さい。
　
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　きっとこれも、ある境界のせいで妨害されたのかも知れない。
　
　…そうか。
　
　ここを上がるのは無理らしい。
　…その後はひたすらこの階層を探索しつつたまに会うナメクジの異形を避けていった。