不幸な少女の”日常”探し

榊原

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〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚114話〛「漆黒のブレス」

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 ――一瞬僕の方へ手が振り下ろされるのが見えた。
 
 初めての体験に戸惑いながらも後ろへ下がると、さっきまで僕がいたところに観音の腕が振り下ろされていた。
 
 これが未来視らしい。
 
 そして更に後からウルフの唸り声が聞こえ、ウルフが飛び掛るのが見え、転移で更に後ろへ移動した。
 
 如意輪観音は巨大な身体をゆっくりと起こし、僕の方を紫色の瞳が覗いていた。
 そして、また黒い魔法陣が何重にも広がり魔物が召喚される。
 
 ――と、思っていた。
 
 漆黒の魔法陣は何重にも広がりさらにそこから幾重にも魔法陣が重なり合い、まるで闇が広がるように黒い光が広がり、そして途轍もなく低い低音が響き、真っ黒な翼が現れる。
 
 如意輪観音より少し低いがかなりの威圧感がある漆黒のドラゴンが、その黒い光が止むと同時にその姿が露わになった。
 
 そして、表すことの出来ない激痛が頭を襲った。
 ドラゴンの叫び声なのだと思うのだが、ドラゴンは叫んでいても声が聞こえなかった。静寂をドラゴンが叫んでいた。
 
 僕は、耳に魔導ミスリルを詰めると、レイピアを変形させ今にも飛びかかる勢いで走りこちらに向かっているウルフ全匹を貫き、ドラゴンへ走り出した。
 
 ドラゴンは僕が向かってきてることに気付いたのか、何やら口の中に何か溜めるようなモーションをし、ドラゴンの歯の隙間から黒い光が漏れる。 
 
 そして、口から吐く瞬間、ドラゴンの口化から僕の位置まで一直線で魔法陣が幾重にも重なるように現れた。
 
 ドラゴンの一番得意とするブレスは吐かれた瞬間に魔法陣に重なりまるで時空を転移したかの様な速度で、しかも一個一個の魔法陣を越えるごとにその威力は目に見えて増し、ほぼ吐かれたタイミングで、ブレスは僕の目の前に到達していた。
 
 そして…僕は何度目かわからない死を迎える事となった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 …なんてね。
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