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〚第四章〛〜絶望の底編〜
〚115話〛「漆黒の魔竜」
しおりを挟む相手からすればそう見えていただろう。
視界を包むほど大きな漆黒の爆炎に焼かれ死んでいると。
ただ僕は…、かなり瀕死の状態だったが、何とか転移で逃げれていた。
体中たった一秒すら当たっていなかったのに、ほんの一瞬でこんなに酷くなるとは思っていなかった。
あの瞬間、ドラゴンのブレスが吐かれる時に未来視が発動して、ブレスが僕に向かって魔法陣を通って一瞬で到達する映像を見た。
僕は油断していた、実際来てから転移で避ければいい…と。
実際来たときにはもう手遅れだった、本当に一瞬で到達する黒い炎を避ける為、転移を発動するが、転移する速度が遅く、発動する時間、転移を終えるまでのタイムラグがあり、次の転移地点に着くまでに、僕の前半身の皮膚が焼け爛れ、ついた頃には眼球が焼け潰れていた。
全てが黒に塗り潰された視界の中、眼球が無くても感じる事ができた、気配感知と魔力感知を頼りに、治癒を発動しつつ、【スキル:爆縮】を使い一瞬で黒いドラゴンへ肉薄するが、今の僕に見えるのは白くぼんやり光るような物と、ドラゴンの体内を巡る魔力の紫色の光だけ。
おおよその形と大体の距離しかわからず、まるで事前に分かり、命令されていたかの様に僕の縮地先に来た黒い閃光に気付くことしか出来ず、その黒い腕の当たらない距離まで避けるが、魔力の宿らない爪先が見えず僕は壁際まで飛ばされた。
そして僕の体中の骨は折れ、動かずそのまま地面に落ちてゆく、目の見えない状態での落下はかなりの恐怖で、感知のできない地面へ転移は難しく、そのまま地面落ちる。
折れた骨が傷口から飛び出し、更に苦痛が襲う。
「ぅあ…ッ!」
本当にステータスが役に立っているのか疑問に思うぐらい自分の身体が脆すぎる。
冒険者をやっていた時よりステータスがあるのに、比べ物にならないぐらい弱過ぎる…。
…スキルを上手く使うんだ。
未来視が発動し、僕を潰さんとする魔法陣が何重も頭上に発現する、そして僕に途轍もない重力が掛かる光景が広がる。
それを見た瞬間に絶対超越を発動しつつ横に向かって縮地を使い、更に魔導ミスリルのナイフを作り凝黒化をさせ、無風纏を纏わせ全力でドラゴンの腹辺りに向かって全力で投擲した。
そして一瞬前僕がいた所は紫色一色になり凄まじい密度の魔力が密集していることが分かった。
そして岩が崩れたり割れるような音が鳴り下の階層が見える穴が大きく開く。
投げたナイフは一瞬だけ風切音を鳴らし、魔法発動に集中していたドラゴンの腹にナイフが呑み込まれた。
僕が作ったナイフはヒルト部分の無いほぼ刀身のみの形で、持ち手が見えなくなるまで深く腹に刺さっている。
変に頭や目を狙っても位置が把握出来ない状態では外すのが目に見えて分かっている。今は確実な方を選ぶ、掛けるなんて余裕はない。
そして低い唸り声のような声が聞こえたのできっと当たったようだった。
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