上 下
194 / 227
〚アフターストーリー〛〜不幸な少女のその後〜

〚14〛「父親とお話」

しおりを挟む

 「日向は居るのか…?」

 父親はケーキをテーブルの上に置きながらそう言ってきた。

 「居るよ」

 父親は周りに日向の姿が無いことに、少し俯く。

 「日向は…部屋か」

 「そう、……これさっきまで一緒にやってた」

 そう言ってスマホでナーヴソフトウェアの公式サイトを見せる。ついでにコップにミルクティーを二人分注いでくる。

 「そうか…ゲームか、仲良くやってるようで良かった」

 そう言った父親の表情は軽くなる。そしてミルクティーを受け取った。

 「今は…ゲーム中なんだな…じゃあ後で一緒に食べてくれ、ケーキ買って来たから」

 「ありがと、あ…話したいことがあった」

 「どうした…?」

 僕は前から考えていた事を話すことにした。……学校を休んでゲームをしたい事を。

 「学校休むわ」

 「ごふっ……」

 むせた父親にティッシュを渡す。

 「いきなりだな…」

 「理由は今やってるゲームをやり込みたい」

 「そうか…」

 そう父親は言い、例えお小遣いが無くなってもか?そう聞いてきた。
 
 ……いつの間にか覚えていたスキルがある。

 【複製付与】これは任意の物に複製付与をつけると、好きな個数コピー出来る。簡単に言うと、好きなだけ増やせるのだ。

 これを使えばお金持ちになる事だって夢では無い。しないけど。

 「お小遣いが無くなっても大丈夫、光熱費だって払わなくても大丈夫だよ」

 「そう…か、分かった。でもやっぱりお小遣いは…」

 「大丈夫だって、父親だって生活苦しいだろ?」

 「そう…だけど、やっぱり…」

 「だったら、お願いが一つある」

 「な…なんだ?」

 「落ち着いてからでいい、………戻って来て欲しい」

 これ以上、こんな父親見てられない。一応家族なんだし、離婚したあの母親は違うけど。

 「…………」

 父親は18の時に母親、璃沙と結婚したらしい。その時に僕が産まれた。そして19の時に、日向を出産し、不倫されていたことが分かり離婚した。

 不倫されていたショックで、マンションを借りてそこで住んでいる。色々な理由で、僕に会うのが辛く、でも悪いとでも思ってるのか、毎月少なくない仕送りをし。

 でも、僕にはしっかりとした職につけるようにと、せめて高校を卒業させてあげたいと、仕送りの条件を学校に行くことにしていた。

 自分の貯金がもう殆ど底をついているのに。
しおりを挟む

処理中です...