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2.woman 寝ても覚めても
しおりを挟む守人を偶然見かけて、話しかけられて、気に入らなかったので冷たくした。なんてあの幼稚な日からもう3日が過ぎている。この3日間、悔しいほどあいつのことばかりが頭の中にあった。
他の就活中男子のスーツ姿を見たときは、守人のリクルートスーツ姿似合ってて良かったなぁと思った。制服や、大しておしゃれではなかった頃の私服しか知らない私にとっては、別人のように感じられる姿だった。身長結構あるから、スーツでカチッと決めるとかっこいいねとかそんなことを言えば良かったかもしれない。大人の男性に近づいてきた守人の姿を、自分の中で落ち着かせられない。
昨日なんて履歴書を書き直している時に高校の名前を書いただけで思い出してしまった。脳内で何度話しかけられていることやら。もうどうでも良くなったはずなのに。どうしてこんなに気になるのか。フラれた女側の意地というか執着というか。そんなくだらないものだと思いたい。実際そんなものだと思う気持ちはあるけれど、やっぱりどうでも良くなかったのかなと思う気持ちが決してゼロにはなってくれない。
それに加えて、卒業年月を書いている時に思い出したシーンが引っかかっている。私たちは高3の夏に別れた。別れた後、守人は私を名前で呼ばなくなっていって秋頃に話した時はもう名字だった。でも卒業式の日、私が泣きながら第二ボタンをせがんだ時だけは、名前で呼ばれた気がする。悲しそうな苦しそうな難しい顔で、ただボタンだけくれたような記憶がある。人間は本当に都合が良い生きものだから、成人するくらいまではあの顔は後悔だと決めつけて自分を慰めていた。それが今になって、「ひょっとすると何か隠されてたのかな」なんて思い始めて、昨日は履歴書を4回は書き損じた。寝るのも遅くなって踏んだり蹴ったりだった。
そのせいにはできないけど、今日の面接は全くうまくいかなかった。どことなくイライラして集中できなかったのだ。守人の雰囲気は、どうせ4年間モテてたんだろうなって思ってしまうクオリティだった。本当に憎たらしい。いっそのこと、もっとやさぐれて人生に苦しんでますみたいな風なら良かった。自分の弱さが情けない。それはそれ、これはこれというのが恋愛になるとできない。いや、守人のことになるとできないのかもしれない。大学に入りたての頃、入ったバイトが大変なバイトで胃が痛くなるような時期があった。そんな時期ですら、高校の友達からLINE越しに守人の話ごあっただけで、何も身が入らなかった。何の気持ちも変わってないのかもしれない、と思うと虚しい。変わったから大丈夫だと思うのも悲しい。言いようのないくだらない雑念が延々と根を張っている。
こんな時は、美味しいご飯でも食べに行くに限る。就活やら卒論やらでゼミ室や家に引き籠るのがダメなのだ。1日くらい遊んでスッキリしてしまえばいい。そう思って私は同じ学科の仲良しなグループLINEを動かした。カラオケ行って焼肉でも食べに行こうよ、と。
LINEを送った後、守人への雑念もこの自己嫌悪も面倒なもの全てスッキリしたくてシャワーを浴び始めた。いつも通り髪から順に顔、体と上から下に洗っていく。肩を洗い流している時、ふと守人に肩を叩かれた感覚を思い出してしまった。また、1つ1つの小さなきっかけから、多くの思い出がフラッシュバックする生活になるのかもしれない。きっと今週も来週も、肩を叩かれた感触や守人の微妙に気まずそうな顔を鮮明に思い出せてしまうだろうなぁと思う。
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