死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

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10-フォンルージュ家

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ーラルクsideー



おれはラルク。フォンルージュ公爵の弟である父と愛人の間に生まれたこども。

おれはあの家にとって忌み子だった。
唯一おれを愛してくれた母は、元々身体が強い方ではなく、俺を産んでからすぐ病気になってしまった。

病気になってからは、まるでバイ菌を扱うかのように父は母を端の部屋に閉じ込めた。医者を呼ぶことも無く、母の容態は悪くなる一方で、小さかったおれは衰弱していく母のそばに居ることしか出来なかった。


『ラルク、あなたには辛い想いをさせてしまうわね…ごめんね…ラルク…


あいしてるわ…』


母上はおれが3歳の頃おれを置いていってしまった。

おれには異母兄弟がいた。父の正妻の子どもたちだ。

『お前がぼくたちと血が繋がってると思うと虫唾が走る』

『ぼくたちと対等だなんて思うなよ』

母上が亡くなってから、おれの居場所はは無くなっていた。おれは使用人と共に屋敷で仕事をすることで、何とか居場所を作っていた。

時には兄弟たちから酷い暴力も受けた。それでもおれは今を生きるために我慢することしか出来なかった。今思えば母との思い出があった屋敷から離れたくなかったという感情もあったと思う。


そんな日常を過ごしていたが、他の兄弟から何か言われたのか、父もおれを疎むようになり、おれは屋敷にいられなくなった。おれは父に母と同じく捨てられた。


おれにはもう何も無くなってしまった。


おれは父の兄、フォンルージュ公爵家に行くことになった。

おれの父の家より大きな屋敷。そんなフォンルージュ家が何故忌み子のおれなんかを。

きっとろくでもない何か。フォンルージュの一族にまともな奴はいない。少なくともおれの周りはそうだった。



「君がラルク君?ようこそファンルージュ家へ。これからよろしく頼むよ。今日から私が君の父だ」


豪華絢爛な応接室。無駄に装飾の激しいソファに腰掛けるおれの新たな父と語る目の前の男。

胡散臭い男だった。おれの父とは違い漆黒の髪にフォンルージュ家の青い瞳の男。

この人がおれの父となるフォンルージュ。


「他の兄弟たちや私の妻は今家にいないが、次男のルークがいる。ラルク、お前の兄になる。そして、お前にはルークがおかしな事をしないよう見張る監視役になって欲しい」


「監視役…?」


自分の息子に監視役…?


「そうだ…ルークにはアーノルド王子の跡継ぎを産んでもらわねばならん。だがな、先日階段から落ちて頭を打ってからあいつは変わった」


「……」


「あいつは死のうとした。今まではただ従順に私の人形をしてきたあいつがだ。自分の意思もなくただ私の言う通りに生きてきたあいつがだ!

…ルークにはフォンルージュ家の責務を果たす義務がある。あいつには勝手なことが出来ないよう枷をつけた。だが、それでも、な。私は不安なのだ。ルークがフォンルージュ家の名に傷をつけないか」


自分の子どもよりも家。やはりフォンルージュ家にまともな人はいない。


「我が弟の家ではお前は厄介者だったな。ラルク。私に協力をしてルークの『弟』となってくれるのなら私はお前をこの家に貰い受けよう。

ルークを監視し、万が一わが一族に仇なすようなら『弟』として兄を調教しなさい。そのための知識と道具なら私がいくらでも用意する。


ラルク、協力してくれるかい?」
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