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学園入学編
64‐学園へようこそ
しおりを挟むついに迎えた入学式当日。
ラルクと共に馬車に揺られ魔法学園へと赴く。
ちなみに全寮制で長期休暇以外は基本的に寮生活である。
あの家に帰らなくていいと思うと少し嬉しい。
隣のラルクを見る。
髪も背もすっかり伸び、育ち盛りの2年の歳月は凄いと実感させられる。最近はアニメと同様、髪をハーフアップにして纏めてる。
僕にもその身長分けてくれないかな。
僕はずっと小柄で成長する気配がない。
いや、どうせ僕死ぬし、どうでもいいか。
馬車が王都に入る。
洋風ファンタジーをそのまま映し出したかのようなヨーロッパ風の街並みの都会。
その中心部に魔法学園はある。
大きな教会を模したような建物で、煌びやかなステンドグラスの窓が太陽に照らされて美しく輝いている。
おそらく学校のメインシンボルで、アニメでこの学校の偉そうな人が喋ってた集会場がこの中にあるのだろう。
そしてその建物の左右に同じ雰囲気で建てられた学舎と寮が点在していた。
学園の大きな門を僕たちの馬車が潜る。
生徒らしき人だかりが増えてくる。
あー…やだなぁ。学校はいい思い出がないんだよなぁ。
同い歳とか、歳が近い人とかは特に苦手なんだよな。僕は作り笑いは出来ても、本当の笑顔はできない。楽しいってことも無くなってしまったし。笑っても顔だけで目が笑っている気がしないから、笑うのが好きじゃない。
他人とどういう顔をして、どう話していいか分からない。
人も信用出来ない、常に嫌われてる事しか考えてない僕に、人なんて寄ってこない。
少なくとも前世の学生時代はそうだった。
断罪されるまでの我慢といっても、僕虐げて嫌われなきゃいけないし……はぁ……。
ルークも楽じゃないね。僕ちゃんとできるかな。
馬車の窓から楽しげに並んで年相応の反応を見せながら喋っている生徒が目に入る。
楽しそう。僕も、あんな風に笑えたら…
「兄上、どうしました?」
隣に座ってるラルクが心配そうに僕を見てる。
「…いいや、何でもない」
窓の光景から目を逸らす。
僕には過ぎた願いだ。幸せなんて何かも分からないくせに、普通なんて分からないくせに、望むな。烏滸がましい。
ギロチン、痛くないといいな。
ごちゃごちゃ色々考えているといつの間にか馬車は止まっていた。
従者が馬車のドアを開ける。外の光が入ってきて眩しい。
ラルクに手を引かれ、馬車の外へと一歩踏み出す。
ああ、地獄の始まりだ。
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