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学園入学編
65‐入学式
しおりを挟む外に立っている案内人に連れられ、学園のステージがあるメインホールを訪れる。
ステージを円になって取り囲むように段々になっていて、段には座り心地の良さそうな椅子と机が付いている。
大学の教室を大きくしてコンサートホールにしたような形だ。
多くの貴族であろう生徒たちがワラワラと各自座りザワザワと喋っていた。
「ねぇ、見てよ。フォンルージュ家のルーク様よ」
「本当だ。シュバルツ王子の婚約者の…」
「見目麗しい。目を奪われてしまう」
案内人について行って、ラルクと段をのぼっている通りすがりにそんな噂を立てられる。
いつの時代の貴族だ。コッテコテでくだらない。
冷めた顔をして歩いているととある髪色が目に入る。
ーーーいた。
白に近いベージュの色でくせ毛が特徴の髪。光魔法使用者特有の金色の瞳。白い肌に天使を思わせるような笑顔。
身につけているものは周りに劣るも、それでも輝いて見える。
この物語の主人公、アレンだ。
隣の同じ平民出らしき生徒と笑顔で喋っていた。
本当にいるんだ…。
何も無かったように横目で少し見て直ぐに前を向く。一瞬だけ視界の端にアレンがこちらを向いている気配がした。
…え?
少し振り返ってアレンの方を見るが先程と変わらず隣の生徒と喋っていた。
…気のせい…だよね。アレンがルークのことを知っているはずがない。まだ関わってすらいないのだから。
「フォンルージュ様、こちらに」
どうやらいつの間にか僕たちの席に着いたようだ。
ラルクと座り、入学式の始まりを待つ。
時間通り、入学式が始まったが退屈なので、ルークが断罪されるのはいつ頃だったかを思い出そうと考えながら聞き流していた。
途中で新入生代表の挨拶で第一王子のアーノルド・シュバルツって言う人が壇上にあがり喋っていた。きっと知らない人だし、視線の圧を感じた気もするけどきっと気のせいだ。
入学式も終わり、その日は簡単な学園での流れを説明され、各自寮へと案内された。
どうやら夜には入学パーティみたいなものがあるらしい。前世の学校で言う先生や同級生との自己紹介の場だ。
貴族は何でもかんでもパーティをして社交したがる。やめてほしい。
憂鬱になりつつルークの部屋には劣るにせよ十分なほどの空間の個室に案内され、久々の一人の時間と、アニメのルークがやっていた事をどう自分が沿って行うかを、パーティの時間までベッドに寝そべって物思いにふけようとしていた時だ。
コンコンコンッ!!
「兄上!開けてください!」
…そうそう1人にはさせてくれないらしい。
ピアスの探知で僕の部屋まで来たらしいラルクが扉をノックする。魔法学園なだけあって扉はここに通う生徒が扱えるくらいの魔法では壊れない仕様のようだ。
だがラルク本体を放って置くと扉ではなく僕が破壊されてしまいそうなのは目に見えているため、渋々扉を開けることにした。
僕の肩に顔を埋めてスンスン匂いを嗅ぐラルクを死んだ目をして好きにさせながら、僕はアニメがどうだったかを考えることにした。
「アレン、あの人のこと知ってるの?」
「え?誰のこと?」
「式の前に熱心に見てた綺麗な貴族の人。
あー…確か王子様の婚約者の…」
「うん、知ってるよ」
「え!?本当?貴族と知り合いだなんて凄い!いつ知り合ったの?」
「うーん……ずっーと昔かなぁ。生まれた時から」
「…え?嘘でしょ?」
「うん、冗談」
「もう、変な嘘つくなよ~びっくりした~」
「あはは~ごめん。あまりにも綺麗だったからさぁ、見とれちゃって」
「だよなぁ~。でもアレンも綺麗じゃん。
あの方は美人系だけど、アレンは可愛い系というか…」
「そうかなぁ?ありがとう」
「お、おれは、アレンの方が……好きだけど…」
「あはっ、うれしい~ありがとう~」
「い、いやぁ…」
「…気持ちわる」
「え?」
「ん?どうしたの?ほら、早く寮行ってみよ!どんな部屋か楽しみだね」
「そうだな!」
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